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「働くと支給減るから」 刑務所出ても職続かず 【貧困の闇 生活保護のいま】<上>

9/24(日) 10:20配信

千葉日報オンライン

 「国民の健康で文化的な最低限度の生活を保障する」生活保護制度。受給者は高齢化などで年々増加傾向にある。一方では不正受給が後を絶たず、対象者を食い物にする「貧困ビジネス」も問題に。先月には、NPOが運営する市川市の無料・定額宿泊所で女性が職員に暴行を受けたとされ死亡した。神奈川県小田原市の生活保護担当職員が受給者を見下す言葉をプリントしたジャンパーなどを作製し着用するなど、受給者への差別・偏見は根強い。受給者や行政担当者、学識経験者に取材し、生活保護をめぐる現状や問題点を探った。

 「生活保護を受けたくはないけど、お金が無いから仕方ない」
 千葉市の無職、Aさん(66)は頭をかく。人生の半分を刑務所で過ごし、出所後に職を転々とするが長続きしなかった。

 生活保護受給者が集まるという木造の古い長屋。室内は整理整頓されている。無駄な家具はないが、スマートフォン、テレビを所有。スポーツウェアに、切りそろえられた短髪で清潔な印象だ。

 千葉県西部の出身。中学を卒業後、木造大工の見習いとして工務店に就職。18歳の頃に店を飛び出し、車の窃盗などの犯罪に手を染めるように。出所と入所を繰り返し、計30年以上を刑務所で過ごした。

 最後の出所は58歳のとき。強盗と覚醒剤使用などで懲役7年半の刑を終えた。出所後は神奈川県秦野市に。刑務所で得たつてで解体工の職を得たが、体力の問題や人間関係もあって約半年で辞めた。2010年春ごろ、同市に生活保護を申請し、認められた。申請時、所持金約10万円は靴下の中に隠した。

 同時期に養豚場で清掃の仕事を得たが、2カ月で退職。同年秋に千葉市に移住し、生活保護者らが集まる集合住宅に入居し生活保護を申請。集合住宅の衛生環境の悪さから転居を繰り返し、現在は家賃約3万2千円のトイレ風呂付き、平屋建ての借家に1人暮らし。5人きょうだいの末っ子だが、両親は既に他界し、親戚とは連絡を絶った。

 現在の受給額は月10万8千円。家賃や光熱費、携帯電話代で半分が消え、「生活は苦しい」という。安いスーパーなどで食材を購入し、自炊する。酒は飲まない。移動は2万円の中古電動自転車。部屋にエアコンはない。午前2時に起床。部屋を掃除し、テレビを観て、図書館で映画のDVDを借りる。帰宅後、午後5時には夕食。就寝。「毎月受給だけじゃ足りない。貯金なんてとてもできない」とこぼす。

 「足りないので働きたい気持ちはあるが、刑務所生活が長く、事務仕事はできない。足腰にガタが来ていて、現場仕事も厳しい」とした上で、「申請して働いても、その分支給が減らされるからバカらしい」と本音も。年金受給者に「生活保護の方が良いね」と言われたこともある。

 多くの罪を重ねてきた。「これまでは悪いことをしても刑務所に入れば終わると思っていた。でももう悪いことはしない」。母親の死に目に服役中で立ち会えず、「かつて母に『人を困らせれば自分も困る』『良くしてもらったら返せ』と言われたのが今になって響く」。

<中>に続く

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