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職場コミュニケーション不足は「数千万円の損」? 米IT企業が取り組む“意識改革”

10/12(木) 12:02配信

ITmedia NEWS

 長時間労働に悩む日本企業と対比しながら、米国、特にシリコンバレーのIT企業の効率的な働き方について紹介する本連載。前回は、日本企業の長時間労働の現状や、米国でコラボレーションの必要性が注目されている背景をお伝えしました。

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 今回は、そうしたコラボレーションの経済効果や、米国のIT企業がどのような仕組みで従業員間コラボレーションを促しているか――といった中身の部分をご紹介していきます。

●コラボレーションの経済効果は年間140兆円以上

 いまや、どの企業もコラボレーションを無視して旧態依然のワークスタイルで仕事を続けることは不可能である――このことは前回の記事でもご紹介した通りです。

 米国ではシリコンバレーのIT企業をはじめ、さまざまなビジネス現場で「従業員感の連帯、つながり意識の醸成」が経営課題として認識されつつあります。米McKinsey & Companyの調べによると、従業員同士が連携し合うことで、組織の生産性は20~25%向上し、その効果は年間1.3兆ドル(日本円にして140兆円超)に相当する可能性があるとのことです。

 ジョブディスクリプション(職務記述書)に記される職務内容も、他部門・他チームとの協働ではじめて実現できるものになりつつあります。このように、コラボレーションをせざるを得ない事業環境、多様な個人の働き方を会社が受け入れる仕組みを持てるかどうかが必要な時代性、コラボレーションを網羅的に支えるクラウドツールの勃興が相まって、その価値がより高まってきたと考えられます。

 米SMB Communicationによると、社内コミュニケーションの弊害による生産性の損失は従業員1人当たり年間約2万6000ドル(約300万円相当)と算出されています。 つまり、従業員が数十人いる場合は数千万円、大企業の場合は数億円規模の生産性損失が生まれていることになります。

●異なる部署がつながるために――Evernoteが社内で試したこと

 さまざまなバックグラウンドを持つ従業員同士をいかにつなげるか――その取り組みは各社それぞれです。例えば、社内目標やチーム内目標を達成したメンバーや記念日を迎えたメンバーを祝ったり、オフィススペースの動線改善や会議室のリフォームといった物理的な社内改装を行ったり、チームビルディング目的のミーティングや社外活動の時間を設けたり……。

 私の前職であるEvernoteで行われていたことの1つに「Officer Training」と呼ばれるものがあります。これは、希望する従業員が部門間の壁を超え、自分と異なる部署のミーティングに参加できるといった施策です。

 製品やサービスを作るには、自分のチーム以外とも協力し合いながら全員が一丸となって価値創造に向かう必要があります。そこで、他チームとの接触点を意図的に増やすためのこの施策が行われていました。

 ただし、これを実施するには「どのミーティングに誰を入れるか」といった差配スキルの高い人が必要です。加えて全社で意思共有せねばならないなど、他社が取り入れようと思ってもなかなか難しいかもしれません。

 他にも、楽天の「朝会」を参考に始まった、毎週1回の全社員集会「All-Hands」 や、会社の費用負担で年1回、オフィスがある世界中の都市に旅行していい「フリートリップ制度」など、さまざまな試みがなされていました。

 個人的な感覚としては、広いダイニングエリアでテーブルを共有し、相席したメンバーと昼ご飯を食べながら仕事の雑談をするのが、 社内のつながりを築き仕事中の助け合いを円滑にするために、地味ながら最も効果的な手法だったと思います。

●Microsoftが「サービス企業」になれたワケ

 もちろん、つながり強化に取り組んでいるのはEvernoteだけではありません。個々人の働き方の質を高めた上で、組織レベルで柔軟なコラボレーションを促し、チームとしてより大きな価値を創造しようとしている企業の1社がMicrosoftでしょう。

 同社は2014年のサティア・ナデラCEO就任後、「One Microsoft」 (1つのMicrosoft) の旗印のもと、従業員同士のコラボレーションのインパクトをしっかりと人事評価に反映させています(参考:Business Insiderの記事)。 例えば、個人の成果の多寡だけでなく、他者の成功への貢献度や他者のスキルや知見の活用を評価軸にする――といった具合です。

 マネジャーは、部下のコラボレーションの度合いを評価するために、彼らと共に働いた別部門の同じプロジェクトメンバーに仕事ぶりをレビューしてもらうなど、フィードバックの迅速化・多角化を行います(参考:Fortuneの記事)。こうして、1人だけの成果にとどまらないコラボレーションの価値を人事評価に反映させているのです。

 コラボレーションを重視する企業風土だからこそ、同社はチームやプロジェクトの目的に応じ、他社のコラボレーション製品も積極的に試用しているそうです。それが結果的に、自社ツールの改善点や新機能アイデアの共有と実現につながっているのでしょう。

 Windows OSを作ればそれだけで売れていた時代が終わりつつある今、同社はOSやモバイル端末、アプリケーション、クラウドサービスなど多岐に渡る製品群を備えています。さらに機能だけでなくデザインや使用感にもこだわり、エンジニアリングから事業開発、マーケティングまで部門の壁を超えて連携させています。

 製品製造からサービスビジネスへ、売り切り型から定額課金のサブスクリプション型へと、ビジネスの屋台骨を全組織レベルで転換させていることからも、その取り組み成果が見て取れます。

 このことは業績にも現れているようです。同社の2016年度の製品部門収益額は落ち込んだものの、サービス部門収益額は2014年度と比較して80%以上伸長し、今後も拡大傾向としています。さらに株価も2014年初頭と比べて約2倍になっています(2017年9月時点)。

 ところで第1回記事の公開後、いただいた感想の中に「米国企業で働いている知人は、よく家に持ち帰って仕事をしている」といった声もありました。そこで次回は、米国IT企業のビジネスパーソンにとっての「仕事と家庭の切り分け」や、「副業とどのように向き合っているか」などを紹介したいと思います。

最終更新:10/12(木) 12:02
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