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<弁護士刺殺>県警対応との因果関係は? 国賠訴訟判決へ

10/12(木) 21:38配信

毎日新聞

 秋田市の弁護士、津谷裕貴(ひろたか)さん(当時55歳)が自宅に侵入した男に刺殺されたのは、駆け付けた警察官が誤って津谷さんを取り押さえたなどの過失によるとして、遺族が秋田県などを相手取り約2億2300万円を求めた国家賠償訴訟の判決が16日、秋田地裁(斉藤顕<あきら>裁判長)で言い渡される。秋田県警の対応と死亡との因果関係が最大の争点。遺族は「県警は落ち度を認め、信頼される組織に生まれ変わってほしい」と訴えている。

 事件の確定判決によると、2010年11月4日未明、離婚調停で元妻の代理人を務めた津谷さんに恨みを持った菅原勝男受刑者(73)=殺人罪などで無期懲役が確定=が、拳銃や枝切りばさみを持って津谷さん宅に侵入。津谷さんの妻、良子さん(60)の110番で駆け付けた警察官が、間違えて津谷さんを取り押さえるなどした隙(すき)に、津谷さんの胸などを刺し殺害した。

 訴訟で良子さんは、津谷さんが菅原受刑者ともみ合って拳銃を取り上げたにもかかわらず、臨場した警官2人が津谷さんの両手を押さえた間に刺されたと主張。また110番を受けた県警の通信指令室(当時)は、通報内容を何度も聞き直し、臨場した警官に「けんか口論」と伝えたため、緊急性の認識が共有されず、不適切な対応につながったと指摘している。

 一方県側は、警官には菅原受刑者と津谷さんを識別する時間がなく、銃の暴発を防ぐ危険回避を優先して津谷さんの右手のみを押さえたと主張し、誤認したことも否定。また通信指令室は通報した良子さんが興奮状態にあったため、正確に住所などを聞き取ろうと質問を繰り返したとし、対応と津谷さんの死亡は無関係としている。

【森口沙織】

 ◇真実が知りたい…妻の良子さん

 「警官が駆け付けながらなぜ夫は命を奪われなければならなかったのか。真実が知りたい」。原告の津谷良子さん(60)は、その一心で秋田県警の責任を追及してきた。

 事件があった秋田市内の自宅に今も住み続けている。夫が殺された場所だが「家族との大切な思い出が詰まっている」といい、引っ越しを考えたことは一度もない。11月には4人目の孫が生まれるが、「一緒に孫の顔を見て、趣味の写真をたくさん撮ってほしかった」とうなだれる。

 事件直後、県警幹部は誤認を認めたが、後に「取り違えたわけではない」と訂正。内部検証結果の内容も、良子さんの目撃と食い違っていた。「組織としては保身や隠蔽(いんぺい)体質を抱えているのではないか」と不信感が募り、2013年10月、提訴に踏み切った。

 警察という巨大組織を相手に訴訟を起こすことに不安を感じ、「私が110番しなければ夫は助かったのかもしれない」と自分を責めもした。だが「県警の過失が認められることが夫への供養になる」との思いは揺らがなかった。

 まもなく事件から7年になる。「県警の過失が認定され、組織の体質が改められることを願っています。私のような苦しい思いをする人がこれ以上出てほしくない」と語った。【森口沙織】

最終更新:10/12(木) 22:48
毎日新聞