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衆院選 広がる主権者教育 18歳、高校生の選択は

10/12(木) 14:55配信

産経新聞

 ■模擬投票・出前授業…中立性確保に腐心も

 選挙権年齢が18歳以上に引き下げられて衆院選としては初めてとなる今回の選挙。新たに選挙権を得る高校生らをターゲットに、自分たちで各党の政策を調べ、模擬投票を行うなどの主権者教育が広がりを見せつつある。ただ、現場の先生たちにはどうやって“政治的中立”を確保するのかという悩みもあるという。

 「分からないことがあれば政党に尋ねてもいい。あなたたちは主権者。知る権利があります」

 京都府宇治市の立命館宇治高校で6日に行われた3年生の授業。社会科の杉浦真理(しんり)教諭(54)は生徒たちにこう訴えた。

 この日は「憲法改正」「北朝鮮問題」-など5つのテーマをグループごとに設定。自分たちで政党の政策を調べ、グループで議論したうえで各政党の公式ホームページなどを通じ、疑問点や意見を直接、送付するという授業が行われた。

 憲法9条の改正の是非を討論した生徒たちは、政党に意見送付することに。ある生徒は「憲法ができた70年前と現在は状況が違う。現状に合わせて改正すべきではないか」と記述。別の生徒は「9条を変えると海外での武力行使ができてしまう。戦後70年以上の平和が無駄になる」と意見を記していた。

 生徒の井坪(いつぼ)葵さん(18)は「政治の流れや用語は難しいが、多様な意見、考えを知ることで自分自身の判断材料になることが分かった」と振り返った。

 同校では2~3年生を対象に主権者教育をテーマにした授業を実施。昼休みには、校内に投票所を設置し、模擬投票も行われた。

 長年指導している杉浦教諭は「政治がテーマだと教育現場は躊躇(ちゅうちょ)してしまいがち」としながらも「政治的中立を求めるあまり、教育現場が萎縮してしまっては主権者が育たないのではないか」と模索を続けてきた。

 中高生を対象に主権者教育の「出前授業」を行っているNPO法人「ユース・クリエイト」(東京)代表の原田謙介さん(31)も、現場の先生から「政治的中立について『線引きが難しい』という声をよく聞く」と打ち明ける。

 原田さんは、学校や選挙管理委員会などからの出前授業の依頼が増え、主権者教育は広がっていると感じているが、「行政や政治家と学校、生徒が接する機会がもっと増えれば、若者も政治に関与しやすくなるし、先生も一歩踏み出せるのでは」と話す。

 ■小学生から継続的に

 総務省によると、昨夏の参院選の投票率は、18歳が51・28%、19歳は42・30%だった。

 総務省の「主権者教育の推進に関する有識者会議」のメンバーで、埼玉大社会調査研究センター長の松本正生(まさお)教授(政治学)は、「小学生から継続的な主権者教育が必要だ」と強調する。

 前回参院選の際に投票に行った高校生からは「政治はよく分からない」という声も聞かれたといい、松本教授は「『記念投票』というイベント感覚が強いようだ。主権者教育とは大人になるための社会人教育の側面もある。親が子供を連れて投票所に行く姿を見せるなど、投票するという行為を習慣づける教育が求められている」と話している。

 ■偏りなく意見提示を

 京都大の上杉孝実(たかみち)名誉教授(教育社会学)の話「政治的中立を保とうとするあまり、教育現場では、政治の問題に触れないでおこうとする傾向もみられるが、さまざまな問題は大なり小なり政治に関係する。大事なのは、特定の政党の主張に偏るのではなく、いろいろな立場の見方や意見を提示して生徒らに考えさせること。現場の教育者が政治の問題に触れなかったりしていては、生徒の政治的な関心や能力は育たない」

最終更新:10/12(木) 15:14
産経新聞