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馬毛島の怨念か 行き場失う米空母艦載機 訓練移転が暗礁に 日米で政治問題化も

10/12(木) 15:22配信

産経新聞

 米軍横須賀基地(神奈川県)に配備されている原子力空母ロナルド・レーガンが今月中旬、北朝鮮を牽(けん)制(せい)するため朝鮮半島近海に入る。空母艦載機は北朝鮮への米軍の大規模攻撃ではグアムの爆撃機と並び中核をなすが、艦載機の運用に支障を来す恐れのある問題が深刻化している。艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転をめぐり、防衛省と土地所有者の用地買収交渉が暗礁に乗り上げ、このままでは艦載機は行き場を失いかねない。

 ■候補地浮上から10年

 FCLPは空母艦載機が陸地の滑走路を空母の甲板に見立てて離着陸をする訓練。ロナルド・レーガンが横須賀で整備や修理を受けている間、FA18戦闘攻撃機など艦載機のパイロットはFCLPにより技量を維持する。

 FCLPは昭和57年から厚木基地(同県)で行われていたが、騒音の深刻化で代替施設が確保されるまでの「暫定措置」として平成3年から硫黄島(東京都)で実施。暫定的ではなく、永続的な訓練候補地として浮上したのが馬(ま)毛(げ)島(鹿児島県西(にし)之(の)表(おもて)市)で、19年のことだった。

 それから10年たっても防衛省は土地を買収できていない。土地の価格をめぐり所有者側の要求と大きな隔たりがあるのが理由だ。

 ■桁違いの要求額

 馬毛島は無人島のため騒音問題が起きにくく、X字形に滑走路2本も造成されている。FCLPを移転させる上でこれ以上ない適地といえる。

 防衛省は土地の買収額として数十億円を提示した。政府高官は「同じ無人島の尖閣諸島(沖縄県石垣市)を国有化した際、地権者から約20億円で購入したことも参考にしている」と指摘する。

 一方、土地を所有する開発会社はそれをはるかに上回る額を提示しているとされる。交渉の内情を知る自民党国会議員は「0がひとつ多いようだ」と明かし、数百億円を要求しているとみられる。

 これでは交渉がまとまるはずもない。

 ■代替地は九州か

 そのため防衛省は代替策の検討に入った。代替策とは馬毛島に代わる候補地を選定することを指す。

 代替候補地を選定する際、前提となるのは岩国基地(山口県)からの距離の近さだ。ロナルド・レーガンの艦載機は今年8月以降、厚木から岩国に拠点を移し始めており、来年5月までに61機の岩国移駐が完了するためだ。

 馬毛島が候補地に浮上したのも艦載機の岩国移駐を念頭に置いていた。

 政府高官は「馬毛島と岩国の間で代替候補地を探すことになる」と九州に照準を合わせていることを示唆する。

 艦載機の岩国移駐が完了する来年5月が馬毛島移転完了のタイムリミットだったことを踏まえれば、土地を大規模に造成し、滑走路を建設している余裕はない。そうなると、滑走路をすでに備えている既存の民間空港が代替候補地になるだろう。

 ■米軍のフラストレーション

 タイミリミットを目前に控えてもなお訓練移転のメドが立たないことに米軍はフラストレーションを募らせているはずだ。

 それを暗示させるように9月1日、米軍は5年ぶりに厚木基地でFCLPを行った。米軍は台風の影響により硫黄島で訓練ができないことを理由に挙げたが、当然、地元の反発を招いた。

 厚木でのFCLPについて政府内では「米軍の無言の抗議なのか」との疑念がくすぶる。

 このままでは、岩国移駐が完了しても米軍は硫黄島でFCLPを続けざるを得ない。硫黄島まで厚木から約1200キロだが、岩国からは約1400キロと遠ざかり、往復する際の天候悪化や機体トラブルの危険性が高まる。艦載機パイロットの訓練が減れば、北朝鮮への抑止力と対処力の低下にもつながる。

 代替候補地の選定で迷走を重ねれば、かつての米軍普天間飛行場の移設問題と同じように日米の政治問題に発展することも避けられない。

最終更新:10/12(木) 15:22
産経新聞