ここから本文です

桜井ユキ「毎日必死だった」想像だにしなかった初主演映画/インタビュー

10/12(木) 12:10配信

MusicVoice

本当に日々必死でした。

――桜井さんが演じるアキという女性は、桜井さんとその外見の雰囲気がピッタリだなと思いましたが、年齢的に近い設定なのでしょうか?

 アキは29歳の設定で、私も撮影当時29歳、同い年です。

――わりと桜井さんも女優さんとしてはデビューが遅かったところもあり、アキという女性に関しても、境遇が一致するわけではないですが、29歳のタイミングで、映画で描かれているエピソードを迎えて新たな道へ進む機会を得るという方向としては、何となく桜井さんとの共通点を感じ、人間的に何か共感する部分があるのでは? とも思いました。

 そうですね。この作品のオリアアキの世界観や歩み方からは、その世界観はすごく不思議で特異なものに見えます。でも、例えば一つひとつを切り取って見ると、まず10代のころに女優を目指していて、そこからいろんな葛藤とか失うものもあって、グズグズと10年間同じ場所にとどまっているようなところは、私にもわからない話ではないんです。私も女優を目指したのが遅かったということもあって「あの時動かなかったら、アキみたいになっていたかもしれない」という認識もありました。本当に共通部分はたくさんあると思います。だからこそ、そこから役を広げていく作業ができました。

――ちなみに役作りという部分では、あまり苦労はなかったのでしょうか?

 というか、私は役作りという作業がどういうもののことを言われているのががわからなくて…(笑)。普段は役を構築していく、というよりも想像、妄想してその人物と自分の距離を縮めていくやり方のほうが、自分にはしっくり来ているので。今回もいつもの感じでやりました。アキと距離を縮めていく、アキを理解していくという作業ですかね。

――では撮影の中で、役に入り込む上で何か自分と大きくギャップを感じたりというのは、特にはなかったのでしょうか? 単純に「撮影を始めます」と合図が出た時点で、すぐに入り込めたのか…

 多分、役者さん人それぞれだと思うんですけど、私には衣装だったりメイクだったり、その役の持ち物によって、役が自分の中で落とし込まれているという感覚が大きくあって、今回もそういったものがありました。

 今回の役もしかり、今までもそうなんですけど、違和感を持ったまま現場に臨むということは無いようにしたいし、あってはいけないことだと思うので、とことん自分と役の距離を密にしておいて、その状態で現場に入るようにしています。だから、現場に入る時にピッ! というスイッチが入るようなイメージよりも、衣装を着て、メイクをして、現場に入る、という段階で徐々に準備が整っていく感じです。役によっての動きや佇まいというのもそこで、変わってくると思います。

――ストーリーの中で、アキという存在ともう一つ際立っているのが、高橋一生さんが演じるカイトという一人の男性の存在ですが、このアキという立場から見て、カイトというのはどのような存在であると、感じましたか?

 今までに触れたことのない、暖かい存在、唯一のものだったと思います。アキは親との関係もあまり良くないまま育っていて、カイトという人物に会ったことで、自分の夢というものを初めて他人に話して、それを受け入れてもらう。カイトは口数はあまり多くないけど、それは高橋さんが醸し出す雰囲気もですけど、すごく受け入れてくれる雰囲気を持っているんです。いろんなものがカイトにはあって、だからそこに甘え切っていた部分とか、アキ自身にも見えなくなっている部分もあったと思います。

――見えなくなっている部分があるということは、必ずしも良いというものではないと?

 もちろん、そう思います。

――実際にはそういった二人の関係に関するお話を、高橋さんとはお話もされたのでしょうか?

 それが…高橋さんとはお芝居についてのお話を、一切していないんですよ(笑)。でも現場で高橋さんとお芝居をさせていただく中で、生まれるものがあったんです。だから不安もなかったです。顔合わせしてから、もちろんお話もしましたけど、役やシーンについて何か話したかというと、何も…でも、それが逆に良かったような気もします。

 そしてそのことを、後で気が付いたんです。この前、高橋さんと一緒にインタビューを受けていた時に「そういえば、そういう話はしていないね、何も」って(笑)。

――わりと桜井さんは高橋さんに対して「この人、似ているな」と思うところもあるのでしょうか?

 結構あるかもしれません。共通している部分とか。性格的にどこというよりも、ものの捉え方とか、解釈になんか癖があるというか(笑)。

――癖ですか?

 癖というと、高橋さんに失礼かもしれませんが。物事の捉え方の感覚とか、そういう部分に近いものは感じました。ただ、それが全くそういう話をせずお芝居が成立したというところにつながったかどうかはわかりませんが、お芝居に生かされていたなら嬉しいな、と思います。

――撮影時の大変だったみたいなエピソードはありましたか?

 もう本当に毎日必死だったので、「ああきつい、大変」ということを感じる余裕もない日々でした。感情の振り幅がすごくあったので、感情をそれぞれのシーンに合わせる作業というか、そこに自分を持っていくのに、かなりきつかったことが一度だけありました。アキの気持ちがどん底のシーンから、一番幸せな時のシーンを撮影した日はもうボロボロでした(笑)。そこだけかな。あとは必死でした、ただひたすらに。

――このストーリーのエンディングは、アキという女性が最後にどういう方向に収まっていくというところを、観衆の感性に委ねるような終わり方に構成されていますが、桜井さん自身は、アキがここからどうなったかと想像しますか?

 やっとスタートラインに立ったんだ、というだけだと思います。目が覚めたことでやり直すのではなく、やっとアキの人生というものに、スタートしたんだと。「何かにすがって、何かのせいにしていた人生」が、一度幕を閉じて本当にやっとスタートしたんだなと。

――それは、例えばカイトと過ごした日々など、何も無くなったという認識ですか?

 何も無くはないんですけど、それまであったと思っていたものは、実は無かったに等しいと思うんです、アキにとって。現実を見ずにこの歳まで来てしまった中で、本当に一人でちゃんと立って生きていくということに対して、やっとスタートラインに立てたというか。

――ではそれは、ハッピーエンドでもバッドエンドでもないと?

 そうかもしれませんね。

【取材=桂 伸也/撮影=片山 拓】

2/2ページ

最終更新:10/12(木) 12:10
MusicVoice