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岐阜・美濃焼の窯元を訪ねて 有名ブランドも絶賛の和モダンな磁器

10/12(木) 19:11配信

朝日新聞デジタル

■有名ブランドも絶賛! ガラスの輝きを帯びた和モダンな磁器

 「美濃焼」と聞いて、どんな陶磁器を思い浮かべますか?茶道をされる方や陶芸好きの方は「織部焼」「志野焼」を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、岐阜県内の多治見市、土岐市、瑞浪市といった東濃地方で生産された焼き物はすべて美濃焼なのだそうです。

【写真】これも陶器! タイルで作られたコースター、写真立て、植木鉢

 「第11回 国際陶磁器展美濃」で陶磁器の表現方法の幅の広さに衝撃を受けたものの、自分が実際に使う器は「どんな料理にもあって、収納しやすくて、丈夫で使いやすいもの」が基準。ちょっと器にこだわりたいなというときには、デパートで気に入ったものを買い求めるくらいで、正直、いままで自分が持っている焼き物が「なに焼」なのか、全く気にしていませんでした。同イベントでせっかく東濃に来たので、窯元におじゃましてみました。

 「窯元によって作り方もデザインもまちまちなので、これが美濃焼というものがないんです。でも和洋食器、タイルをあわせて国内生産量日本一なので、どの家庭でも食器の半分くらいは美濃焼かもしれませんよ」と教えてくださったのは、カネコ小兵(こひょう)製陶所の伊藤久子さん。3代目おかみです。
 
 1921(大正10)年創業のこちらの窯元では、毎月第一土曜日に工場に併設された築70年の古民家ギャラリーショップ「窯や小兵」がオープンします。

 磁器なのにガラスのような輝きを見せる釉薬(ゆうやく)が特徴的な「ぎやまん陶」や、土の温かみがある陶器の雰囲気をもった強度のある磁器「リンカ」をはじめ、3代目で広がったそれぞれ趣の全く違う陶磁器シリーズが並べられているので、ついつい、ひとつひとつ手に取って手触りを確かめてしまいます。

 深い青色をした「ぎやまん陶 茄子紺(なすこん)ブルー」は世界的に有名なフランスのファッションブランドのバイヤーにも見初められ、パリ本店で販売されるや、有名シェフからも指名買いされているのだそう。
 
 残念ながらまだ見ることがかなわなかったのが、近々発売予定の最新作。世界的なデザイナー、セバスチャン・コンラン氏とのコラボレーション作品です。コンラン氏が岐阜県内の物づくりメーカー10社を選び、デザインした商品をメーカーと相談しながら作り上げていく「SEBASTIAN CONRAN GIFU COLLECTION」の1社に選ばれ、ピッチャー、カラフェなどのサーブウェアが生み出されたとのこと。同コレクションは今年の1月にインテリア業界のパリコレとも称される「メゾン・エ・オブジェ」に出展されたそうです。写真で拝見するに、ぎやまん陶のようなシャープなラインを不均等に施した白い食器類はユニセックスで愛されそうな欧米的なデザインです。

 同ギャラリーは毎月第1土曜日のみの営業ではあるものの、スイーツと器を楽しむといった月替わりイベントも行われるそうなので、タイミングがあえば足を延ばしてみてください(工場見学はできません)。
 
■花びら舞うみやびやかな器にうっとり

 同じく、窯元で「SEBASTIAN CONRAN GIFU COLLECTION」に選ばれた壽泉窯(じゅせんがま)。多治見市内の工房に併設するショップ「蓮(れん)」で迎えてくださったのは、2代目の安藤寛泰さんです。
 
 作品を見せていただくと、表面に花びらのような模様が広がった器は、とっても上品で繊細! このお湯飲みでお茶を出していただいたら、背筋が伸びつつも、優雅な時間が過ごせそうです。

 安藤さんによると、この模様は、結晶釉(けっしょうゆう)という技法で作り出された亜鉛の結晶。釉薬をかけて焼く際に、燃焼した釉薬のなかの亜鉛が変化し、花が咲いたような模様が生み出されるのだそうです。

 「きれいな結晶を出すために、土も釉薬も自分たちで調合をするのですが、天然のものですから、材料に含まれる成分が全く同じではありません。また、気候などによって窯のなかの温度も毎回一定ではありませんから、うちの作品で同じものは作りにくいんですよ」

 納得のいく作品ができないときには商品にしないため、年間3~4割が日の目を見ないそう。陶器はリサイクルできないため、「もったいない……」と思ってしまいますが、妥協を許さない姿勢がうかがえます。
 
 コンラン氏とのコラボ商品は、瑠璃(るり)色の結晶がちりばめられたシンプルなマグカップ。同じく岐阜県を代表する枡(ます)の技術を使って作られたコースター(ふたとしても利用可)とセットになっています。

 感想をお聞きすると、「有名なデザイナーではあるものの、焼き物の専門家ではないコンラン氏にデザインしてもらったら、おもしろい化学変化が起こるのではないかと思ったんです。結果として、シンプルなデザインが提示されました。私自身、結晶を美しく見せるならシンプルなデザインがいいと感じていたので、自分の考えが間違っていないことも分かりました」

 また、壽泉窯のカラーは現在8色で、安藤さん自身はカラーバリエーションを増やしてきたものの、コンラン氏が当初からある瑠璃色を選んだことで、この色がブランドのシンボルカラーになりうる大切な色になるかもしれない、と感じたと言います。来年初めの発売を目指し、制作に入るそうなので、こちらも完成が楽しみです。
 
■フォトジェニックなタイルアートのオシャレカフェ

 この日はランチも陶器に囲まれようと「スワンタイルカフェ」へ向かいました。セラミックタイルを製造販売する日東製陶所が運営するカフェです。
 
 店内は色とりどりのきれいなタイルが壁一面に埋め込まれていて、オーダーを忘れて写真を撮り続けたくなるほどフォトジェニック!

 企画室の片岡真由さんによると、かつて陶器商の倉庫と事務スペースだった場所を同社が買い取り、人が集まるショールーム兼カフェにしたのだそう。
 
 インテリアデザイナーと社内のタイルデザイナーによって生み出されたオシャレカフェ空間は、北欧調やブルックリン調と、壁面のタイルデザインによって、雰囲気もがらりと変わります。釉薬を入れていた桶で作った照明もオシャレで、平日の昼間でもたくさんのお客様でにぎわっていました。月替わりのランチプレートは、ヘルシーかつ、インスタ映えするカラフルさ。箸置きになっているタイルは持って帰っていいのだそうですよ!集めたくなってしまいますね。

 隣接するSWAN工房では好みの色・形のタイルを選び、オリジナルコースターやフォトフレームをデコレーションするワークショップを開催していたり、タイルの販売をしたりしているそう。次回は時間に余裕を持って来て体験してみたいと思いました。
 
 普段使いの器やタイル製品は、無機質な工場で大量生産されたもの、割れたら割れたで仕方がない、と正直割り切っていました。二つの窯元とタイルの製造元を訪ねて「使う人たちの現代の生活にあった質のいいものを作りたい」そう願う職人たちの思いと妥協をしない姿勢を知り、それは必ずしも価格に比例しないことも知りました。作り手に会って器を選べば、日常使う器により愛着を持てそうです。

(文・写真 干川美奈子 / 朝日新聞デジタル「&TRAVEL」)

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最終更新:10/12(木) 19:11
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