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IC性能向上への貢献を期待される、X線タイコグラフィーによる3Dビジュアル化とは

10/13(金) 12:10配信

ZUU online

性能の向上に伴い、デジタル機器の要の部品ともいえる半導体を使ったICの物理的な構造はますます複雑化している。そうしたなか、ICチップの構造を3D映像として高精細にビジュアル化する方法がスイスの研究チームによって発表された。

IC(Integrated Circuit)はスマートフォンやパソコンなどIT・デジタル機器だけではなく、さまざまな電気製品で用いられている。「ムーアの法則」として広く知られていた、集積回路内のトランジスタの数は毎年2倍で増えていくという傾向を裏付けるように、一つのICの中に多数のトランジスタの構築を可能にする微細化も急速に進み、製造技術面でも目覚ましい進展をみせてきた。

最近では、ナノスケールで製品を設計したり、メモリの構造を3次元で制御したりすることで、今まで以上の高性能化が図られている。

クラウドコンピューティングの基盤にも、インターネットの一層の活用にも高性能な半導体を用いたICが欠かせないことから、高性能化の研究開発の競争もますます激しくなりそうだ。今回はICのさらなる高性能化に役立ちそうな技術を紹介しよう。

■半導体を使った複雑多層なICの性能向上の課題

コンピュータの頭脳や心臓ともいえるCPUやメモリ、デジタルカメラのモジュールなどの発展に伴って、半導体を使ったICも大きく進化してきた。多様な役割を担うためにさらなる性能の向上が求められるが、その背景には半導体製品ならではの製造過程の複雑さに根ざした課題が横たわっている。まずはその背景を説明しよう。

半導体を使ったICを作るためのシリコンはもともと円柱状の結晶体として作られる。円柱状のシリコンを薄くスライスしたものが、半導体の材料として広く知られている円盤状の「シリコンウェハー」だ。

そのウェハー面に、銅などのさまざまな金属の薄膜を形成したり、設計に応じて膜を部分的に除去したり、表面を滑らかに研磨するといった加工を施す。そのような加工プロセスを繰り返し、ウェハーにコンピューティング処理を行う回路としての役割を果たすナノスケールな構造を作り出すことで、半導体製品の高性能化が実現されてきた。

しかし一方で、半導体ICの微細な回路が設計通りに製造されているかどうか直接的に検証することが難しいという問題点がある。主にナノスケールで製造される半導体ICの構造を検証できないため、製造途上の適切な品質管理が妨げられてきた面が存在した。

■ナノスケールで半導体ICを映像化、さらなる性能向上へ

そうしたなか、スイスの研究機関であるポール・シェラー研究所のMirko Holler氏の研究チームが、X線を用いてICの構造を3Dビジュアル化(3次元の画像で解析)する技術を開発。対象を壊さずに検査する非破壊検査の適用の可能性を2017年3月に公表した。

Mirko Holler氏の研究成果が公表される以前から、半導体ICの構造を検証する技術としては、イオンミリングなど電子顕微鏡を用いた従来型のものもあった。ただ、検査対象の損傷も避けられず、課題として指摘されてきた。

Holler氏による半導体ICの構造の検証で用いられたのは、X線タイコグラフィーと呼ばれる手法。具体的には、X線で半導体ICをスキャンして、高速検出器で生成された回折パターンを観察することにより、従来技術よりも大きく向上させた、14.6ナノメートルの大きさまで判別できる半導体IC構造の画像を作成。半導体ICの検査における問題の解決が期待されているという。

将来的には、10ナノメートルの精細さで半導体ICの構造を解析する技術を、X線の活用技術の進展と併せて、ラミノグラフィーといった他のX線による構造解析技術を用いて実現できる可能性もある。

この技術は、設計と製造工程の直接的なフィードバックを可能にし、生産・出荷・使用時の品質管理の向上につながるだろう。今後、航空宇宙や医療といったより高い性能を求められる領域向けの製品の製造プロセスを最適化させる可能性も有しているのかもしれない。(提供:MUFG Innovation Hub)

最終更新:10/13(金) 12:10
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