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ドナー家族に寄り添い、使命貫く 臓器移植法施行20年 静岡

10/13(金) 8:59配信

@S[アットエス] by 静岡新聞SBS

 臓器移植法が施行され16日で20年がたつ。臓器提供の場に立ち会い、提供された臓器が希望する人に適切に届くようさまざまな調整を行う臓器移植コーディネーター。静岡県では日本臓器移植ネットワーク(東京都)と県から委嘱された石川牧子さん(54)=浜松市浜北区=が一人で担っている。「大きな決断をしてくださる方々に責任を持って接したい」。ドナーとその家族に寄り添い、命をつなぐ使命を持つ。

 「どのご家族も承諾書にサインする時に手が震えます。死の受容は簡単ではありません」。石川さんはこれまでのドナーやその家族との関わりを振り返り、こう語る。

 病院からの情報を受けて患者家族と面談し、臓器提供という選択肢があることを説明する。「家族それぞれのむき出しの感情が出る」(石川さん)というその時に、さまざまな話をしながら、残り少ない最期の時間を認識できているか、ドナーの死後も家族が心理的に助け合えるか-などを見極める。承諾を受けると、病院に泊まり込んで、家族のケアと同時に病院スタッフらと連携して提供に向けた手続きを進める。

 京都府内の医療関係の会社に勤めながら同法成立までの過程を見守っていた約20年前、自宅近くで違法な臓器売買のチラシを目にした。「移植は適正に行われなければならない」。移植の現場に飛び込むきっかけになった。

 同ネットワークによると全国で同法施行から今年9月末までに行われた臓器提供は477件。石川さんは県内で年間5件ほど行われる全ての臓器提供に携わる。「長寿化や核家族化により、身内の死に接したことがない人が増え、その先の臓器提供を想像することは難しい。(提供の)数だけでなく質をどう保つかが重要な時代に入った」と見据えた。



 ■75%意思表示なし 働き掛けの役割大きく

 日本臓器移植ネットワークによると、家族の承諾による臓器提供を可能とした2010年の改正臓器移植法施行以降、脳死による臓器提供者のうち約75%が、意思表示カード(ドナーカード)を所持するなどの意思表示がなかった。臓器移植コーディネーターをはじめとする第三者の働きかけが提供に結びついている現状で、県臓器移植コーディネーターの石川さんや、病院内での環境整備に努める院内移植コーディネーターの存在は大きい。

 静岡県は献腎推進の一環で全国に先駆けて、院内移植コーディネーター制度を導入し、各病院での臓器提供の態勢整備、事例の共有などを進めてきた。4月1日現在37病院で61人が活躍している。

 実際に臓器提供に接する機会が少ないため、石川さんが各病院に出向いて意見交換したり、月1回の勉強会で移植の流れやドナー家族への接し方といった経験や知識を共有している。関係者からは「体力的、精神的に厳しい仕事で、後継者育成が課題」との声が上がっている。



 <メモ>臓器移植法 1997年10月16日施行。本人の書面による意思表示と家族の承諾がある場合、脳死後の心臓や肺、肝臓などの提供が可能になった。ただ、意思表示は民法上の遺言可能年齢に準じて15歳以上を有効としていたため、15歳未満の脳死臓器提供ができなかった。その後、2010年7月17日施行の改正臓器移植法により、本人の意思表示がなくても家族の承諾があれば脳死臓器提供ができるようになり、15歳未満でも提供が可能になった。

静岡新聞社