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「働き方改革」でもまっすぐ帰らない「フラリーマン」に妻らから非難ごうごう 改革の趣旨を考えた

10/13(金) 10:30配信

産経新聞

 「働き方改革」が叫ばれるなか、仕事が終わっても真っすぐ家に帰らない人たちが増えているという。NHKが“フラリーマン”として特集すると、インターネットでは「妻に育児を押しつけている」など非難の声があがった。男性側からは「1人の時間がほしい」とのぼやきも聞こえて…。

■「これはナチュラルに腹立ちますわ」

 NHKは9月19日放送のニュース番組「おはよう日本」で特集した。「フラリーマン」は「家庭を顧みなかった男性が定年を迎え、家庭での居場所を失い、夜の街をふらふらとさまよう姿」について社会心理学者が著書で使った言葉だが、番組では働き方改革で仕事が早く終わったにもかかわらず帰宅したがらない人に適用した。いわば“新フラリーマン”だ。

 放送は複数の既婚の男性会社員を紹介。子供中心に回っているので帰宅しても居場所がない男性や、家事を共働きの妻に任せている子供のいない男性が登場。

 後者の男性会社員は、1年前までは午後10時の帰宅が当たり前だったが、働き方改革で仕事終わりが午後6時に。ところが、まっすぐ帰宅しない。公園で本を読んだり、バッティングセンターに立ち寄ったり…。その間、共働きの妻は急いで帰宅し、食事を作って待っている。やがて寄り道を打ち明けると、妻も「自分も1人の時間がほしいので…」と理解。フラリーマンを許してもらえる。

 この放送内容に、インターネット上では非難が集まった。

 「フラリーマンとか意味不明。(中略)自分だったら離婚だな」

 「仕事している母親が気分転換に寄り道して遊んでご飯作らないと『母親失格』とみられるのに、男の人だとフラリーマンと名前がついて『いろいろ背負ってるから仕方ないよね』とみられるのってどうよ」

 「テレビでフラリーマンというのを取り上げてる。共働きの妻に家事を押し付けて寄り道、妻に育児押し付けて寄り道だってさ」

 「仕事終わっても帰らずふらっと遊んで、その時間共働きの妻が食事や家事をした家に、帰る。これはナチュラルに腹立ちますわ」…。

■戸惑い

 取材したのはNHK映像取材部の男性カメラマン。放送3日後の9月22日、自身も共働きで3歳と1歳の子供のいることなどを公式サイト「NHK NEWES WEB」で明かした。

 男性カメラマンは、率直な思いを吐露した。

 「これまで当たり前のように仕事中心の毎日を送ってきたサラリーマンが、突然、急激な変化を求められ、『働き方改革』っていったいなんなんだと、戸惑っている」

 折しもNHKは10月4日、2013年7月に首都圏放送センターに勤務していた当時31歳の女性記者が心不全で死亡。長時間労働による過労死だとして14年5月に、渋谷労働基準監督署が労災認定していたことを発表したが、女性記者に限らず、長時間労働が常態化していたことがうかがえる。

 「少し前までは、『24時間働けますか!?』と言われ続けてきたのが、急に給与も労働時間も減り、仕事と家庭のバランス、そして子育てへの向き合い方に思い悩んでいる」

■空飲み会

 働き方改革の目的の1つを確認しておきたい。男性も女性も短い時間で効率良く働き、夫婦が適正に家事・育児を分担しながら、子育てしやすい社会を作る-ことだ。つまり、定時に仕事に終わったら、これまで仕事中心だった男性も、家庭と仕事を両立する女性と同様、家事・育児を分担する。これが改革の方向性だ。

 しかし、放送は、そのような意識が浸透せず、実践できない男性がまだ多いことを図らずも浮き彫りにした。

 子供のいる男性のほうが、フラリーマンになりやすい、というデータがある。

 朝日大学マーケティング研究所(岐阜県瑞穂市)が、14年に首都圏在住の30~60代の既婚男性約400人を対象に、「既婚男性の独り行動」を調査。

 ・スーパーマーケット

 ・ドラッグストア

 ・ファミリーレストラン

 ・ファストフード

 ・コーヒーチェーン

 これら5カ所への仕事帰りの独り立ち寄り率を調べたら、いずれも「子供と同居している層」が、「子供と同居していない層」を上回ったのだ。

 「子供中心の家は、居心地が悪い」「育児ストレスを抱える妻に、向き合いたくない」。男性のそんな心理がうかがえる。実際「妻には言えないけど、気持ちは分かる」と共感を示すのは東京都江東区の会社員男性(33)。1歳3カ月の男児がいて、平日日は育児休業中の妻(32)が1人で家事、育児を担う。

 「妻は日中、ずっと子供と2人きり。『子供との差し向かいがつらい』と言っている。家に帰れば、そのグチを聞かされることになるのは分かっている。嫁のつらさも理解しているが、毎日聞かされるのはこちらもつらい」

 このため男性会社員は、2週間に1回は“空出張”ならぬ“空飲み会”と称して、漫画カフェやマッサージに立ち寄っているという。

■働き方改革の趣旨は

 しかし、夫による家事・育児の分担が進まないと、妻の仕事復帰や職場での活躍が難しくなる弊害が生じるだけではなく、育児ストレスが強かったり産後うつの場合は、夫の留守中に妻が子供と無理心中を図る痛ましい事件も過去に起きている。

 NHKのサイトは、「まっすぐ家に帰りたくない気持ち、すごくよく分かる」「専業主婦でも買い物からまっすぐ家に帰りたくないので寄り道します」など“共感の声”も紹介。両論併記になっているが、やはり子供のいる家庭なら夫も妻も一刻も早く家に帰るのが「働き方改革」の趣旨だ。こうした意識が浸透しない限り、「働き方改革」は進展しないことを図らずも認識させられた。(文化部 村島有紀)

最終更新:10/13(金) 10:30
産経新聞

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