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国営テレビはほとんど報道しない ロシア全土の100都市以上で爆破予告の謎

10/13(金) 10:08配信

産経新聞

 ロシア各地で連日、謎の爆破予告電話が相次ぎ、社会に困惑が広がっている。9月上旬以降、商業施設や駅、学校、政府機関、空港などを標的としており、同月末までに約120カ所の施設が巻き込まれた。一時避難などを余儀なくされた人は54万人以上に上る。爆弾は一度も見つからず、犯人は分からないまま。イスラム過激派やテロ組織によるもの、果てはロシア当局が極秘裏に進める「対テロ訓練」などとも噂されるが、真相は闇のなかだ。(モスクワ 黒川信雄)

 ■爆破物は見つからず

 謎の電話が始まったとみられるのは今月10日。西シベリア・オムスクの商業施設で爆破予告があり、その後ロシア全土で頻発した。首都モスクワで本格化したのは13日。クレムリン近くの著名な「グム百貨店」や市内の中心駅、シェレメチェボ空港、日本の与党政治家が偶然講演をしていた大学などでも予告があり、日本のメディアで報じられた。

 しかしこれはほんの始まりに過ぎなかった。その後も、在留邦人らも利用する大型ショッピングセンターなどが連日のように爆破予告を受けている。脅迫電話は極東ウラジオストクから西部サンクトペテルブルクまで、ロシア全土の100都市以上で確認されているという。

 にも関わらず、いずれの事件でも当局は「爆発物は見つからなかった」との発表を繰り返している。事実、爆発が起きたケースは一度もないもようだ。

 犯人をめぐっても、明らかないたずら電話をかけた若者が拘束された例はあったが、ほぼすべてのケースで誰が、何の目的で電話をかけてきたのか分からないままだ。

 ■犯人像は?

 犯人像をめぐり露メディアでは諸説が浮上している。

 (1)イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)のテロリストによるものとの説→ 従来、ISが手がけてきたテロ事件と、今回の爆破予告事件は明らかに様子も手口も異なる。

 (2)露治安当局が全土で進める対テロ訓練との説→ 同時期に行われたロシアとベラルーシによる合同軍事演習や、極東での中国との演習に関連し、対テロ訓練も行っているのではとの推測が浮上している。ただし、動機が不透明で確証はない。

 (3)ロシア社会の不安定化を狙った隣国ウクライナからのサイバー攻撃との説→ 事件発生当初は、電話の発信源がウクライナからで、インターネット電話を使っているためには発信源が捕捉できないと指摘されていた。ただ、そのような報道は9月中旬以降はほとんど見受けられない。

 ■市民には“慣れ”も

 数千人規模の避難騒ぎが連日のように起きているにもかかわらず、国営テレビは同問題をほとんど報じず、治安当局も捜査などに関する詳しい発表を行わないなど、不可解な点も少なくない。

 市民の間では爆発物が見つかっていないとされていることから、「たいしたことはない」などと、事態を軽く見る傾向も出ている。

 しかし専門家は「人々の関心が薄まったタイミングで、テロリストが実際にテロを起こす危険性がある」とも警告する。商業施設の営業中止などで10億ルーブル(約19億円)もの損害が出ているとの試算もあり、経済への影響も軽視できないものになりつつある。

最終更新:10/13(金) 10:08
産経新聞