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トランプ大統領の圧力強化は是か非か…横田めぐみさんの弟が明かした悲痛な“本心”

10/13(金) 15:35配信

産経新聞

 北朝鮮が核・ミサイル開発を加速し、朝鮮半島情勢が一段と緊迫する中で拉致被害者家族は焦燥感を募らせている。軍事力行使も示唆して圧力を強める米国の動きは膠着(こうちゃく)した拉致問題の局面を打開する可能性があるが、軍事衝突が現実となれば被害者の身に危険が及ぶ恐れもある。家族は救出への強い思いをつなぎながら日々、襲ってくる底なしの不安とも闘っている。(社会部 中村昌史)

 ■心かき乱す情勢の連続に早紀江さんの心情は…

 「毎日のように不安が襲ってくる。『絶対に負けない』という思いの一方で、どうしても深刻な事態を考えてしまうんです」

 5日に53歳の誕生日を迎えた横田めぐみさん=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(81)は険しい表情でこう語った。

 今年、北朝鮮は相次いで核実験や、日本上空を通過する弾道ミサイルの発射を強行。米国による「戦争準備」の加速も指摘されるなど、軍事衝突への懸念は高まり続けている。

 「衝突が起これば被害者に火の粉が降りかかるのは避けられない」

 「北朝鮮への強力な圧力が、被害者帰国を実現する具体的交渉につながる」

 さまざまな思いが交錯する中で、事態はめまぐるしく動いた。しかし、いまだ被害者救出への具体的な動きは見えてこない。「心身ともに本当にしんどかった」。早紀江さんは本音を漏らす。

 体調がすぐれない夫の滋さん(84)も支えながら、めぐみさんとの再会に思いをつなぐ日々。「40年もの間、拉致被害者を取り返せず、姿さえ見えないのは尋常ではない」と、怒りは募る一方だ。

 「老いぼれの狂人」「リトル・ロケットマン」。米国のトランプ大統領と金(キム)正恩(ジョンウン)朝鮮労働党委員長の罵倒の応酬を、早紀江さんは悲しげに受け止めていた。

 一方、解決へ希望を抱かせる動きもあった。トランプ大統領が9月、国連演説でめぐみさんを念頭に「13歳の日本人の少女を拉致した」と北朝鮮を厳しく批判。安倍晋三首相も、各国代表の前で拉致の深刻な現状を訴えた。

 「トランプ大統領の演説は驚くような出来事。北朝鮮の現実を知らなかった多くの国の人に、重要なメッセージになったはず」。早紀江さんは前向きな思いを語りながら、こう続けた。「それでも、情勢を恐ろしく感じるジレンマがある。本当に疲れ切っています」

 ■姉への痛切な思いこらえ…

 めぐみさんの弟、拓也さん(49)はめぐみさんの誕生日となる10月5日、東京都内で開かれた集会で痛切な心情を吐露した。

 「圧力が高まれば高まるほど、私の姉をはじめとする拉致被害者がリスクを負う確率が高くなる。個人の立場だけでいうと『圧力を高めてもらうことが好ましくない』という感情があることも嘘ではありません」

 集会は、拓也さんと救う会、超党派拉致議連による9月の訪米の経緯や成果を報告する場だった。訪米団はワシントン、ニューヨークをめぐり、トランプ政権幹部や上下両院議員、国務省や国防総省の高官のほか国連の各国代表部のもとを訪れ、拉致解決を訴えた。

 ワシントンで記者団に囲まれた拓也さんは、圧力を強めるトランプ大統領について「圧力を優先するアプローチに賛成し、支持します」とき然と語った。だが10月5日の集会で、拓也さんは記者団に答えた際の心中を「ものすごく辛いコメントだった」と明かした。

 拓也さんらが米要人らに懸命に訴えた非道な拉致の現実は、トランプ大統領に伝わり、国連演説にもつながったとされる。金融制裁は強化され、各国駐在の北朝鮮大使の国外追放など締め付けは広がっている。

 「弱みを見せれば(北朝鮮の)思うつぼだ。その点で、前を向いてがんばるしかないと思っている」

 拓也さんは力を込めて被害者救出への決意を語り、訪米について「今までにない成功を見た」と総括する一方、こう訴えた。

 「母(の早紀江さん)と一緒に平成18年、当時のブッシュ大統領にお会いすることができたが、拉致は解決していません。国連の場で姉への言及もありましたが、日本政府はこれに安心せず、圧力をテコに最速、最大限の解決に向けた歩みを進めていただきたい」

最終更新:10/13(金) 15:35
産経新聞

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