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日本の鉄道はどうできた? 『エンジニール』作者に聞く教科書にない「黎明期」とは

10/13(金) 16:47配信

乗りものニュース

「未熟で素朴」だった明治時代の鉄道

 明治から昭和時代にかけて、技師として日本の鉄道黎明期を支えた島 安次郎(しま やすじろう)という人物がいました。蒸気機関車の開発や旅客サービスの拡充、鉄道の国有化などに携わったほか、新幹線計画の源ともいえる「広軌改築計画」や「弾丸列車計画」も手掛けた人物です。鉄道ファンの間では名の知れた人物ですが、しかし一般的な知名度はあまり高くないかもしれません。そもそも、鉄道黎明期の様子が歴史の教科書などで触れられることも、ほとんどありません。

 その島 安次郎を主人公に据えたマンガ『エンジニール―鉄道に挑んだ男たち』では、安次郎と“凄腕機関手”の雨宮哲人が、互いの情熱と信念をぶつけ合いながら鉄道の未来を切り開いていく様子を描いています。

 島の視線を通した日本の鉄道黎明期とは、どのような時代なのでしょうか。また、史実とフィクションとのはざまで、どのような物語が紡がれるのでしょうか。『エンジニール』の作者である池田邦彦さんに話を聞きました。

※ ※ ※

――『エンジニール』は明治の鉄道黎明期が舞台ですが、この時代を選んだ理由は。

 鉄道黎明期は、マンガでは割と空白期で扱われていないんです。鉄道ファンにはこの時代が好きな方もいらっしゃいますが、歴史の教科書では文明開化を象徴するもののひとつとして鉄道開業に触れているくらいで、あとは、たとえば昭和の新幹線開業まで一気に飛びますよね。そのあいだの出来事については、あまり取り上げられていないように思います。

 明治時代、鉄道はすごく未熟で素朴でした。そのなかで、鉄道ファンのあいだで有名な島 安次郎を主人公に据えるとおもしろいかなと思ったんです。一般的な世界だと夏目漱石みたいな人物ですね。私としては、空白期を埋めようという意欲作です。

「鉄道は人を助ける、喜ばせるものである」という点は外したくない

――作品では人間ドラマと鉄道描写が絶妙なバランスで描かれているように感じましたが、物語を練るうえで気を付けていることや秘訣などはあるのでしょうか?

 発想の順番としては、まず鉄道ネタです。「餅は餅屋」ではありませんが、「この時代、鉄道ではこのようなエポックメイキングなことがあった」「こういう技術革新があった」という出来事にあわせて、人物を当てはめていってます。

 第1巻収録の「慟哭の碓氷峠」(前後編)では、蒸気機関車を体現している親父さんと、電化によって登場する電気機関車を体現している息子を登場させています。蒸気から電気へ変わる時代があるとすれば、そこにどういうキャラクターがはまるのか。それを体現する人物を作れれば、話したりけんかしたりといった話ができあがってきます。

 根本的には「この物語はフィクション」という断り書きのとおりですが、たとえば「慟哭の碓氷峠」に出てくる、タカが夜飛んでくるエピソードは実際にあったそうです。このように、時代は違っていたりしますが、いろいろな書籍から仕入れた知識を話に散りばめています。

――作品を描くうえで、軸としていることや「ここは譲れない」というポイントはありますでしょうか?

 漠然とはしていますが、「鉄道は人を助けるものである」「鉄道は人を喜ばせるものである」ということは外したくないですね。『エンジニール』に出てくる主要人物は、考え方ややり方は違っていても、「鉄道は人を助けるものである」「鉄道は人を喜ばせるものである」ということに進んでいくんだ、という話にしたいと思っています。

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最終更新:10/13(金) 16:48
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