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【問う】暮らしの現場から<消費税増税> “好景気”実感なく「不安、企業より消費者」

10/13(金) 20:44配信

カナロコ by 神奈川新聞

 「景気が良くなっている? 考えられない。少なくとも商店街には関係ない」。横浜市西区内の50店舗が加盟する商店街組合の会長(73)は憤慨する。「公約していたとはいえ、消費税10%への引き上げはきつい。どの店でもそれなりに負担があるので大変だよ。議員は庶民の生活が分かっていない」

 最近、知り合いの居酒屋経営者が一日50食も出ていたランチをやめた。消費税が10%になると、利益が出なくなるという。価格へ転嫁することも簡単にはできない。会長の批判は止まらない。「消費税増税は商売へのやる気がそがれ、消費者の財布の口もさらに固くなる」

 昨年4月、会長に就任した。商店街に親子連れを呼び込もうと、四季折々のイベントを初めて開催。空き店舗にコミュニティースペースを新設するなど、地元住民を巻き込んだ商店街活性化に取り組んできた。

 「できるのは、まだ余力のある今のうち。廃れてしまったらアウト」との危機感が改革を後押しする。大きな店舗がシャッターを閉め、後継者不在の問題にも直面する。歩道のデザインを一新する商店街のハード整備を組合員に提案もしたが、数人の賛同者を得たものの通らなかった。

 「もうかっていれば同調者も多いのだろうが…。子育て世代への施策は必要だが、現時点での消費税アップありきの提言は、こうした過渡期にある商店街の現状を踏まえていない」

 2012年12月に発足した第2次安倍政権は法人税減税などで企業活動を後押しし、その恩恵を賃金や設備投資に回すよう産業界に求めてきた。

 だが、企業が先行き不安から利益を手元にため込み、内部留保がこの4年間で100兆円余り増えている。財務省の法人企業統計によると、金融・保険業を除く全産業の16年度の経常利益は過去最高の約75兆円を記録した。内部留保に当たる利益剰余金は約406兆円に達し、第2次安倍政権が発足した当時の12年度から3割以上膨らんだ。一方、家計の分け前となる賃金は伸び悩んでいるのが実情だ。

 化粧品店の経営者でもある会長は「企業の内部留保が増えるのは当たり前。国内は人口も減少し、市場拡大の可能性も感じられないから、(企業も)使うのはこわいよ」と顔をしかめる。

 「でも、将来不安を感じるのは企業以上に消費者。(比較的、高所得者が購入する)高額な化粧品でも、ポイント還元が高いキャンペーン時にまとめて買う傾向が強くなっている」と話す。

 節約志向は嗜好(しこう)品ともいえる化粧品にとどまらない。食料品も同様だ。総菜店に勤める女性(70)は「10円でも20円でも安くなるように買う人が増えている。世知辛い世の中だ」とため息をつく。

 ライフスタイルが大きく変わり、共働き世帯は週末大型ショッピングセンターで買い物をする人がほとんど。商店街の利用客は高齢者の割合が高く、受給年齢が引き上げられる年金にも不信や不満を募らせる。

 「困窮状態で年金支給日に銀行へ急ぐ生活者をおもんばかってほしい。優しい政治を目指すなら、まず議員報酬削減や公共事業の縮小に着手すべきだ」