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広島は、なぜ清宮争奪戦から撤退したのか? 再び脚光浴びるドラフト戦略3カ条

10/24(火) 12:22配信

VICTORY

「(セで二度目の連覇は巨人についで)2球団目になるのかな。巨人の数と随分差はあるけど、勲章になる」

リーグ連覇を決めたその日、広島カープの松田元オーナーが語った言葉だ。確かに数的な差はある。しかし広島の場合、外国人以外はほぼ自前の選手で達成した連覇であるという部分に、巨人とはまた違う価値を見いだすことができる。そしてそれを成し遂げた大きな要因として挙げられるのが、伝統の「スカウティング力」であり、「ドラフト戦略」だ。13年続いた逆指名(自由獲得枠・希望枠含む)制度が廃止されて10年。今再び脚光を浴びる、“広島オリジナル”のスカウティング力とドラフト戦略に迫る。(文=小林雄二)

ドラフト上位の基本線は「1位=即戦力」、「2位=素材重視」

広島がここ10年でドラフト1位指名した選手を見てみると、篠田純平(※07年大学・社会人1巡目=長谷部康平のハズレ1位。高校1巡目は唐川侑己のハズレ1位で安部友裕)、岩本貴裕(08年)、今村猛(09年)、福井優也(10年、大石達也のハズレ1位)、野村祐輔(11年)、高橋大樹(12年=森雄大、増田達至のハズレハズレ1位)、大瀬良大地(13年)、野間峻祥(14年=有原航平のハズレ1位)、岡田明丈(15年)、そして加藤拓也(16年=田中正義、佐々木千隼のハズレハズレ1位)。

その顔ぶれからわかるように、ドラ1は08年の岩本を除くと基本、即戦力投手を指名、外した場合は素材重視と明確だ。

2位は同じく07年から順に小窪哲也、中田廉、堂林翔太、中村恭平、菊池涼介、鈴木誠也、九里亜蓮、薮田和樹、横山弘樹、高橋昂也。小窪と横山は即戦力を見込んでの指名だが、ほかの8名は素材重視。つまりは「1位=即戦力」で「2位=素材重視」が広島のドラフトの基本ラインだ。ちなみに10年の間に7回も“ハズレクジ”を引きながら、多くの選手が主力として活躍しているのだから、二の矢、三の矢の放ち方もお手のもの、的を射た指名といえそうだ。

広島オリジナルその1 野手で重視するのは脚力と体の強さ

もともと独自のドラフト戦略をとっていた広島がつい最近、“らしさ”を感じさせたのが、今ドラフトの目玉、清宮の争奪戦からの撤退だ。理由は「ウチの野球に合わない」というものだった。では“合う選手”とはどんな選手か。代表的な基準の一つが脚力だ。

象徴的な事例を、鈴木誠也の指名にまつわる話に見ることができる。

鈴木は前述のとおり12年のドラフト2位だが、広島スカウト内では当初、同年の野手では北條史也(光星学院、現阪神)のほうが“上位評価”で、鈴木は“4位あたりの評価”とされていた。ただ、1年秋から鈴木に目をつけていた尾形佳紀スカウトが鈴木獲得を猛プッシュ。それでも“どちらにするか”はなかなか決まらない。そんな会議の流れを変えたのは、当時の野村謙二郎監督のひと言だった。

「どっちが足が速いの?」

これが決め手となって、鈴木の上位指名が決定した。

その尾形スカウトが鈴木に惚れ込んだポイントも面白い。

「(鈴木は)身体全体がバネでできているみたい。ベンチに引き上げていく時の走る姿が印象に残りました」   

かつてスカウトの神様といわれた木庭教氏が、高橋慶彦(当時、城西高)を獲得する決め手となったのもやはり、走る姿。ベースランニングとスライディングだった。足も速いが、それよりもゴムが弾けるような躍動感に「ゾクッとするもの」が走ったという。

木庭の跡目を継いだ苑田聡彦スカウト統括部長も「身体に強い力があるかどうかと瞬発力」をスカウティングの重点ポイントに挙げている。木庭が目を光らせた黄金時代であれば衣笠、高橋慶彦、山崎、長嶋。90年代以降は野村や緒方(現監督)、金本に前田。そして現在であればタナキクマルに鈴木、安部、西川、野間など“その手”のタイプの好選手が広島に多いのはそのためだ。今年のドラフトを前に清宮撤退を決め、広陵の中村奨成を1位指名することに決めたのも、打力よりも肩と足を買っての選択だ。広島独特の着眼点と伝統はブレることなく、受け継がれているのである。

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最終更新:10/25(水) 7:52
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