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鏡花「化鳥」を初翻訳 英語版絵本、世界発信へ

2017/10/26(木) 2:08配信

北國新聞社

 泉鏡花文学賞制定45周年記念金沢泉鏡花フェスティバル2017(北國新聞社特別協力)の記念事業として制作が進められていた鏡花原作の英語版絵本「化(け)鳥(ちょう)」が完成した。同作品が翻訳されるのは初めて。今週末から国内外の書店で販売するほか、欧米などの大学や研究機関にも寄贈し、鏡花の独創的な幻想文学を広く世界に発信する。

 「化鳥」は1897(明治30)年に発表された口語体の短編小説。浅野川に架けた橋の通行料をとって暮らす母と少年が描かれており、「母恋い」という鏡花文学の本質を突き詰めた作品と評価が高い。子どもにも親しみやすい内容のため、2012年に絵本が制作され、さらに英語版の企画が練られていた。

 翻訳は、米国ハーバード大大学院博士課程に在籍し、1年前から慶応大で日本文学を研究するピーター・バナードさん(28)が担当した。怪奇・幻想文学が好きなバナードさんは2008年、プリンストン大の日本語講座に参加するため金沢でホームステイした際、泉鏡花記念館を見学し、鏡花の世界にのめり込んだという。

 「既存の鏡花作品の翻訳にとらわれない若手」として同記念館などから依頼を受け、「金沢の恩返しになるなら」と引き受けた。

 今年3月から翻訳に取り組み、「直訳しても英語にならない独特の文体を解釈し、意訳することが難しかった」という。

 タイトルの「化鳥」の英訳は「A Bird of a Different Feather(異なった羽の鳥)」とした。「化鳥」が何を示すかについては研究者の間でも定説がなく、鏡花独特のあいまいさを残しながらも、読者を引き付ける表現に苦心した。

 バナードさんは、ハーバード大の図書館で日本語版絵本を読んだ経験があり、思わぬ鏡花、金沢との縁に驚く。「鏡花は世界に通用する普遍的な面白さがある。芸術性の高い絵本なので、アニメなどのサブカルチャーに関心を持つ読者にも届けたい」と笑顔を見せた。

 翻訳を依頼した泉鏡花記念館学芸員の穴倉玉日さんは「読解が素直で、細かいニュアンスまでよく理解してもらった」と喜んだ。

 バナードさんは11月19日、鏡花フェスティバルが開かれる金沢市民芸術村で、絵を担当したイラストレーター中川学さん、文芸評論家の東雅夫さんとのトークショーに臨む。英語版絵本「化鳥」は国書刊行会(東京)の発行で、税別2千円となっている。

北國新聞社

最終更新:2017/10/26(木) 2:08
北國新聞社