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日銀「マイナス金利政策」からもうすぐ2年 歴史に学ぶ「利子」の原点と意義

10/30(月) 17:10配信

ZUU online

今年も残すところ2カ月余り。2016年1月に日銀が「マイナス金利政策」を発表して2年になろうとしています。発表当初はテレビのワイドショーでも大きく取り上げられましたね。「お金を預けたら利子が付く」のは当たり前だと思っていた私たち消費者にとって前代未聞の出来事でした。

もっとも、人類の長い歴史からすると「利子」(金利)という概念が定着したのはそんなに昔の話ではありません。それどころか、当初は「利子」をとるのは人の道に反すると考えられていたようです。では「利子」という考えが広く浸透したのは、いつ頃からなのでしょうか?

■旧約聖書では「利子をとる」ことは禁止されていた

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の共通の経典である旧約聖書に次のような一節があります。

「異邦人には利子を付けて貸し付けてもよいが、あなたの兄弟に貸すときには利子をとってはならない」(「申命記23章20」)
「その人に金や食糧を貸す場合、利子や利息をとってはならない」(「レビ記25章37」)

古代宗教世界において、上記の教えは厳格に守られていました。また、カトリック教会では信者同士で利子をとる行為を禁止していました。古代ギリシアでも、哲学者アリストテレスは、お金を貸して利子をとる行為は「自然に反している」と批判していたのです。

■シェイクスピアの作品にも登場する「利子のエピソード」

しかし、経済が発展し貿易が盛んになると金利の必要性が高まってきます。たとえば、貿易のために船などの設備投資をしたくても、利子が付かなければ誰もお金を貸してくれません。これでは経済の健全な発展は難しくなります。

ですから、中世の時代は金利・利息に対してさまざまな「抜け道」を考え、経済を回していたのです。たとえば、ユダヤ教では、同胞にお金を貸す行為は禁止されていましたが、異教徒であればお金を貸して利子をとることができました。シェイクスピアの『ベニスの商人』に登場する高利貸しのシャイロックが、異教徒である商人(アントーニオ)にお金を貸して、利子として肉1ポンドを要求した話は良く知られていますね。

■利子が浸透するきっかけとなった「宗教改革」

「利子」という考えが人々に広く受け入れられるようになったのは16世紀、宗教改革がきっかけとなりました。

中世のカトリック教会は「贖宥状(しょくゆうじょう ※免罪符とも呼ばれる)」を発行し莫大な富を集めていました。贖宥状とは、罪が軽減される証明書です。つまり、当時は「神の許し」をお金で買うことができたのです。

そんなカトリック教会に対し、マルティン・ルターやジャン・カルヴァンなどが反旗を翻しました。いわゆる「宗教改革」と呼ばれる活動です。ルターは「正しいのは教会ではない。聖書こそが正しい」として、聖書原理主義を唱えました。

他方、カルヴァンは「予定説」を説きました。予定説とは「救われる人間は、初めから罪を犯さない」との考え方です。すなわち、勤勉で禁欲的な生活をすれば罪を犯すことはないと主張しました。たとえ、それにより富が生まれたとしても「勤労の結果の蓄財」は罪ではないと考えたのです。

予定説においては「人々の役に立つ行動」は良いことであり、たとえその過程で利子を得て、富が生まれたとしても罪にはならないと考えました。それが結果として今日につながる「資本主義の土壌」をもたらしたとも考えられています。

■大きく変わる「金融の未来」を見つめて

ところで、イスラム教ではコーランの教えにより利子は禁じられていますが、利子に近い概念として「スクーク」があります。

スクークは「イスラム債券」とも呼ばれる、イスラム金融のひとつです。運用益の原資に事業活動の収益を充当することで、イスラムの教義・思想に適った商品(※シャリア適格)となります。

一方、日本では歴史的に「利子をタブー視する」ことはありませんでした。高利貸しを規制する制度ができたり、借金を棒引きにする「徳政令」によって貸し手に大きなダメージを与えることはありましたが、利子そのものを禁じる宗教も教義もありませんでした。

今回は「利子の歴史」を読み解いてみました。AIなどテクノロジーとの融合で「金融の未来」が大きく変わることが予想されるこれからの時代、歴史をさかのぼることでその原点・意義についていま一度見つめ直してみるのも面白いものです。

長尾義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『怖い保険と年金の話』(青春出版社)『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』『お金に困らなくなる黄金の法則』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)、『保険はこの5つから選びなさい』(河出書房新社発行)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

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最終更新:10/30(月) 17:10
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