ここから本文です

最近の平井 堅のミュージックビデオがヘン? なぜ?

10/30(月) 15:58配信

M-ON!Press(エムオンプレス)

■平井 堅の最新シングルのMV、今回もヘンだ……

シングル「僕の心をつくってよ」を3月1日にリリースした、平井 堅。映画「ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険」の主題歌として書き下ろした今作は、心の奥底にじんわりと染みるバラードソングだ。

【詳細】ミュージックビデオはこちら

「瞳をとじて」「思いがかさなるその前に…」「僕は君に恋をする」「いとしき日々よ」など、平井 堅の真骨頂とも言えるバラード曲で何作ものヒットを放ってきた彼だけに、“バラードの平井 堅”といったパブリックイメージがあるその一方で、近年で言えば2014年にリリースした37thシングル「ソレデモシタイ」のミュージックビデオで、平井 堅はインド人に扮し、インド人ダンサーと一緒に歌い踊る姿を見せ、大きなインパクトを残している。

「ソレデモシタイ」は、平井 堅が不倫体質の女友達から聞いた話(浮気している男はにおいが体に残るから不倫相手の家でシャワーを浴びてもボディソープを使わない)を元にして歌詞を書いた楽曲だが、なぜこの不倫ソングで平井 堅はインド人になったのかというと、彼には「他の人にはできない、平井 堅にしかできないことをやりたい」という明確な理由があったからだった。

「ソレデモシタイ」以前のシングル曲にも、平井 堅のその思いが注がれたミュージックビデオが何作もある。まず、切ないバラードソング「瞳をとじて」「思いがかさなるその前に…」を立て続けに大ヒットさせた翌年(2005年)に発表した23thシングル「POP STAR」。

この曲のミュージックビデオに出てくる架空の音楽番組という設定は、元々彼が子供の頃から歌謡曲が好きで、当時は毎週欠かさず歌番組を観ていたというところから派生しているのだが、カラフルなジャンプスーツを着た“ポップスター(アイドル)”や音楽番組の司会者など様々なコスプレをした平井 堅は、着ぐるみと一緒にフリ付きで歌ったり、ブランコに乗ったり、ウインクをしたりと、突き抜けまくった姿を見せたこのミュージックビデオには全力で“平井 堅”を遊んでいる平井 堅がいる。

そして、2013年に配信限定シングルとして発表した「桔梗が丘」のミュージックビデオは、“素”の平井 堅が見ることができる映像だ。

この曲は“故郷の歌”ということで、自分の故郷である三重県名張市にある“桔梗が丘”でミュージックビデオ撮影をしているのだが、ドキュメンタリーのように撮影された映像には、平井 堅の実家と実母が登場し、実家のキッチンに立つ母の姿を照れくさそうに見ている表情や母親の手料理(すき焼き)を食べている彼は、アーティスト・平井 堅ではない“息子”の顔を見せている。

それにしてもアーティストが実家や実母を見せるミュージックビデオなんて、これまで誰もやったことがないんじゃないだろうか。いくら「桔梗が丘」が故郷の歌だからとはいえ、平井 堅はかなりチャレンジャーだと言える。

■CDが売れない時代だからこその平井 堅のやり方

21thシングル「キミはともだち」のミュージックビデオは全編アニメーションだったり、29thシングル「いつか離れる日が来ても」のミュージックビデオには宮沢りえが出演していたり(平井 堅は宮沢りえに手紙を送り、出演のオファーをした)、30thシングル「CANDY」ではラブホテルを借り切って撮影をし、クレイジーな世界を描いたミュージックビデオを作ったり。

観る者の記憶に残るミュージックビデオを何作も世に出している彼だが、CDが売れない時代に曲(シングル)を認知してもらうために、彼は35thシングル「告白」の頃からジャケットやミュージックビデオはもちろんのこと、音楽番組出演時の衣装などもコンセプチュアルに見せ、より積極的に仕掛けることを意識するようになった。

「告白」以降に発表した36thシングル「グロテスク」は、平井 堅が直接オファーをした安室奈美恵とコラボし、「ソレデモシタイ」ミュージックビデオではインド人になったり、40tシングル「魔法って言っていいかな?」のミュージックビデオではなぜかバンコクのストリートで歌っていたり、最新シングル「僕の心をつくってよ」のミュージックビデオは介護士として働いているガングロギャルの日常を追ったドキュメンタリーだったりと、曲ごとにアプローチが異なる映像になっている。

まず曲を認識してもらうきっかけとなる話題性と意外性を持ったアプローチを積極的に世の中に放り込んでいるのは、彼のなかに「CDが売れない時代でも音楽が世の中からはなくなることはないのだから、こんなマイナスな状況からプラスに変えられる何かがきっとあるはずだ」と思いがあるからだし、どんなことをしようとも、その主軸には“シンガー・平井 堅”がいるからこそ、彼はいかようにも“平井 堅”を使って遊ぶことができるんだと思う。

そして、様々なアプローチをした楽曲やミュージックビデオを送り出すことで、バラードシンガーというくくりすらなくなってきた段階へと進み始めている平井 堅がいる。

■特典DVD「KEN HIRAI TV」ではより攻めた内容を展開

ミュージックビデオではないが、平井 堅の映像作品で忘れてはいけないのが、これまで何作かのシングルの初回限定盤に付いていた特典映像「KEN HIRAI TV」。

この映像のなかで彼は架空の番組でギネス記録にチャレンジしたりヅラをかぶったりとハジケまくった姿を見せてきたが、ニューシングル「僕の心をつくってよ」の初回限定盤に付いているDVD「KEN HIRAI TV vol.6」では、国籍不明の司会者“チャーリー・ヒライ”に扮し、デビュー20周年イヤーだった2016年の様々な活動を振り返りつつ、生放送で都内某所に出没したLINE LIVEでの映像や、東京・湯島のスナックを探訪したAbemaTVの映像を収録。テレビやラジオなどにも積極的に出演している彼だが、今の時代ならではの発信も積極的に行っている。

シンガー・平井 堅にとっていちばん大事なのは「いい曲を発表すること」で、自分は何があっても「歌を歌い続けていくんだ」という彼の決意は決して揺らぐことがない。だからこそ、どんな入り口から入ってこようが、なんか面白そうだぞというような興味本位でしかない入口でもいいから、まず“平井 堅”に興味をもってもらうことを自らが率先してやっている彼に決して迷いはないのだ。

TEXT BY 松浦靖恵