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ポイントは「シミュレーションとAIの融合」 NECが示す「スパコン」の進化の方向性

10/30(月) 13:27配信

ITmedia エンタープライズ

 「デジタル産業革命の進展を加速させる次世代イノベーションプラットフォームを提供したい」――。NECの福田公彦執行役員常務は、NECが10月25日に開いたスーパーコンピュータの新製品発表会見でこう切り出した。

図3 NECが目指す「シミュレーションとAIの融合」

 新製品の名称は「SX-Aurora TSUBASA」。NECが従来展開してきたベクトル型スパコンの処理性能や拡張性を大幅に強化し、HPC領域の科学技術計算に加え、AIやビッグデータ解析などの新しい領域にも活用できる新プラットフォームという触れ込みだ。

 ハードウェアの特徴としては、同社独自の高密度実装技術や高効率冷却技術などで開発されたカード型の「ベクトルエンジン(VE)」を搭載。そのVEを86サーバへ搭載できるようにした新アーキテクチャの採用により、ベクトル演算に加えx86で行うスカラ演算の両ニーズに対応した。さらに、VEの搭載数により、エッジ用からデータセンター用まで幅広いラインアップをそろえ、計算能力ニーズに応じた選択を可能としている。(図1参照)

 新製品の詳しい内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは福田氏が会見で説明した新製品の狙いに注目したい。

 同氏はまず新製品を投入した背景について、IoTの進展などによって世界規模で扱われるデータ量が2年ごとに倍増していると指摘。また、それら大量のデータはより高度なAI処理を要求するケースも増えていくことが見込まれるなど、大量データを高速かつ高度に処理することが求められているという。

 これらのニーズに対し、従来ではスパコンに代表されるHPCでの処理が一般的だったが、システム規模も大きく利用価格も高額になるため、ユーザーは一部の省庁や研究機関、大手企業に限定されていた。

 そこで同社は、高性能と導入のしやすさの両立を目指して今回の新プラットフォームを開発。コア当たりのアプリケーション性能を世界最速レベルにすることと、ベクトル型プロセッサをカード型化することで、幅広いユーザーが利用できるシステムに仕立てたとしている。

 そして、同氏はベクトル型プロセッサの位置付けとして図2を示した。この図でポイントとなるのは、メモリ性能および演算性能それぞれに必要な領域がある中での青(汎用型プロセッサ)と赤(ベクトル型プロセッサ)と緑(超並列型プロセッサ=GPGPU)の位置関係である。

 今回の新製品は青と赤の領域をカバーしていることから、従来、得意としていたシミュレーション領域に加えて、AI・ビッグデータ活用領域でもメモリ性能が求められる需要予測やレコメンド、深層学習を除く機械学習などに適しているという。

●デジタル産業革命を進展させるプラットフォームになるか

 「これから最もコンピューティングパワーが求められるようになるのは、シミュレーションとAIが融合した利用領域。幅広い分野で融合に向けた取り組みが活発化していくだろう」――。福田氏は図3を示しながら、こう語った。図2の捉え方をベースにしたものだが、これは取りも直さず、NECによるスパコンの進化の方向性を表しているといえそうだ。

 今回の新プラットフォームがターゲットとする領域は図4の通りである。とはいえ、図にある「ものづくり」「セキュリティ」など6分野だけにフォーカスしているわけではなく、あらゆる業種・業態に広げていきたい考えのようだ。

 福田氏は説明の最後に改めて、「NECが長年培ってきたベクトル技術を、これまでのシミュレーション領域に加え、新たにAI・ビッグデータ解析領域にも展開し、ビジネスを拡大していきたい」と強調した。

 筆者が今回、この話題を取り上げたいと思ったのは、スパコンが進化した新プラットフォームの仕組みもさることながら、「シミュレーションとAIの融合」という考え方が興味深かったからだ。これまでIoTが生み出すビッグデータを、AIを活用して分析することに注目が集まっていたが、このプロセスにシミュレーションが加われば、どんなことが起きるのか。

 また、福田氏は「シミュレーションとAIが融合すれば、やりとりを重ねることによって最適解を見いだす確率が高まる」とも語った。イメージとしては、シミュレーションとAIの間でPDCAを回す感じか。この点については、また図3を見ながら考えてみたい。

 改めて、NECは今回の新製品を冒頭で紹介した福田氏の言葉にあるように、「デジタル産業革命の進展を加速させる次世代イノベーションプラットフォーム」と銘打っている。同社の心意気が伝わってくる表現だが、果たしてどれくらいの需要があるものなのか。新生スパコンとして打てる手を打ったようにも感じるだけに、今後の動向に注目しておきたい。