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北朝鮮代表の攻撃陣をけん引する海外組…最注目は19歳の新星FWハン・グァンソン

10/31(火) 13:08配信

SOCCER KING

 EAFF E-1サッカー選手権に出場する朝鮮民主主義人民共和国代表(以下、北朝鮮代表)。かの国の代表チームのことを詳しく知る人はほとんどいないのではないだろうか。

 近年で北朝鮮代表が日本で大きく知られたのは、7年前の2010年南アフリカ・ワールドカップ(W杯)だろう。当時は鄭大世(清水)や安英学(現役引退)らJリーガーがメンバー入りしたことで、日本にもある程度の情報は入ってきていたし、日本でプレーする彼らがいたからこそ、風通しが良かった部分もあった。だが、本国でプレーする選手の細かい情報を知るまでには至らなかったし、2014年ブラジルW杯と2018年ロシアW杯アジア予選でも最終予選にも進むことができず、注目されることはなかった。

 次の目標は2022年カタールW杯出場だ。そこに向けて近年は、北朝鮮代表を取り巻く状況は大きく様変わりした。2016年5月に元ノルウェー代表のヨルン・アンデルセンが監督に就任。同国協会が25年ぶりに外国人監督を招へいするという英断を下しているが、変化が見られるのは指揮官だけではない。才能豊かな選手が、欧州のクラブから注目され始めている。

 今もっとも期待されているのが、イタリア・セリエBのペルージャBでプレーする19歳FWハン・グァンソンだ。ハンは今年3月にカリアリに入団し、デビュー2試合目で初得点を記録。セリエAで初ゴールを決めた北朝鮮選手として歴史の1ページに名を刻んだ。

 これを機にハンは2022年までカリアリと契約を結び、ペルージャにレンタル移籍となったのだが、これが当たった。今季セリエBの開幕戦でいきなりハットトリックを決めると、第2節のペスカーラ戦で1ゴール、第4節のパルマ戦で1ゴール、第7節のブレシア戦で1ゴールを決めている。7試合で6得点と爆発中だ。

 この活躍を他クラブが見過ごすわけもなく、イギリス紙『サン』が「アーセナルなど複数のプレミアリーグのクラブがスカウトを送り込んだ」と伝え、名門クラブのユヴェントスも興味を示しているというニュースも世界を駆け巡った。

 ハンはユース時代から、その実力を高く買われていた。2014年のU-16アジア選手権では主将として全6試合に出場し、4ゴールを決めて優勝に貢献。2015年のU-17W杯にも出場してベスト16入りを果たしている。彼は今年6月のカタールとの親善試合でA代表デビューを果たし、現在行われているアジアカップの予選のメンバーにも選出されている。

 ハンの試合の映像を数試合見たが、身長178センチ、体重70キロと周囲の選手に比べると小柄なほうだが、スピードとフィジカルはイタリアでも十分に通用していたし、ボールを受ける前の動き出しとポジショニングの良さが、ゴールを量産しているように感じた。ゴールを決めたあとに喜びを爆発させるパフォーマンスやチームメイトに迎えられている姿を見ると、コミュニケーションがうまくいっていることも感じさせてくれる。

 ハンはスマートフォンを使ってSNSのインスタグラムで日ごろの生活ぶりを発信し、ファンとの交流も楽しんでいる。チームメイトと食事を楽しむ姿や観光地に出かける様子もアップしている。友人の中には、美人のイタリア人女性もいるようで、数人で誕生日を祝ってもらう写真も載せている。イタリアでの充実した生活が、試合結果にも表れているようだった。

 それこそ彼は早い時期に欧州に渡り、環境に適応した。そのきっかけを作ったのが、2012年に平壌に設立された国際サッカー学校(アカデミー)だ。同アカデミーはバルセロナにある「フンダシオン・マルセット」とペルージャの「インターナショナル・サッカー・マネジメント(ISM)」と提携を結び、北朝鮮のアカデミーで学ぶ優秀な選手を送り込んだ。その中の一人にハン・グァンソンがいたというわけだ。

 早くから欧州で生活を続けることで、言葉や環境に慣れることができたし、試合で結果を残せば海外クラブからのオファーもかかりやすい場所にいたことが、現在セリエBでの結果につながっていると言える。

 彼のプレーを直接見ている在日本朝鮮蹴球協会理事長の李康弘(リ・ガンホン)氏も太鼓判を押す。

「ハンの実力はすでに知られている通り、代表に欠かせない選手です。一番脂の乗っている選手はやはり海外組でしょう。ハンのほかにMFチョン・イルグァン(スイス・FCルツェルン)とFWパク・クァンリョン(オーストリア・SKNザンクトペルテン)がいます。この3人が前線にいると迫力のある攻撃が見られると思います」

 スイスでプレーする24歳のチョンは、北朝鮮代表として過去に日本代表と対戦したことがある。2011年9月、埼玉スタジアムで行われたブラジルW杯アジア3次予選の日本代表戦(0-1)に先発で出場。さらに同11月に平壌の金日成スタジアムで行われた日本代表戦にも出場している。当時の日本代表には香川真司、岡崎慎司、長谷部誠、吉田麻也などがメンバーにいたが、EAFF E-1サッカー選手権2017では久しぶりのマッチアップになりそうだ。

 25歳のパクは身長188センチで、長身を生かした空中戦を得意とする大型FW。かつては代表で鄭大世と2トップを組んでいたこともある。パクが北朝鮮国内でプレーしたのはわずか2年。2011年から昨年までスイスリーグのクラブを転々とし、今季はオーストリアでプレーしている。彼はFCバーゼル在籍時代、Jリーグと韓国代表経験のあるパク・チュホと同僚だった時期があり、2011年9月には北朝鮮選手として初めてチャンピオンズリーグ(CL)にも出場。パク・チソンがいたマンチェスター・ユナイテッドを相手に3-3で引き分けている。

 すでにW杯出場を決めている日本や韓国、近年力をつけている中国に対抗するためには、必要不可欠な選手たちだ。彼らが得た欧州での経験は、今の北朝鮮代表には大きなアクセントになるに違いない。

 ただ、李氏が心配しているのは、各クラブが大会に合わせて北朝鮮代表チームに合流させてくれるのかどうか。「今は交渉中で、それがうまくいけばチームに合流できる」と話す。

 では、日本でプレーする在日Jリーガーはどうか。

「Jリーグからも数人がメンバー入りするでしょう。現在、候補となるのは梁勇基(ベガルタ仙台)、李栄直(カマターレ讃岐)、安柄俊(ロアッソ熊本)、金聖基(FC町田ゼルビア)の4人。この中から2人は入ると思います。今行われているアジアカップの予選のメンバーとして試合に出ている選手もいるので、とにかく結果を残すしかありません」(李氏)

 日本で開催される大会だけに、在日選手たちにとってはホームのようなもの。ちなみに讃岐でプレーする李は今年9月、ホームの平壌で開催されたアジアカップ予選のレバノン戦でゴールを決め、監督やチームメイトから信頼を勝ち取った。北朝鮮国内のみならず、日本でプレーする在日Jリーガーもまた代表の座を争っている。

 いずれにしても、欧州と日本を含めた海外組が、“アジアの古豪”復活のカギを握っているのは間違いないようだ。

文=金明昱(キム・ミョンウ)
協力=アジアサッカー研究所

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最終更新:10/31(火) 15:34
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