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「肺がん手術」最前線 切除数国内最多の第一人者に聞いた

11/1(水) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 男性の死因第1位の肺がんには、外科領域で注目のトピックスが2つあるという。肺がん切除数、国内最多の国立がん研究センター呼吸器外科・渡辺俊一科長に話を聞いた。

 肺がん「完治」のためには、がんを確実に取り除く手術が必須だ。しかし肺がんの多くは、手術が不可能(手術不適応)の段階で発見される。

 それは具体的には、ステージ3期、4期だ。3期では、縦隔リンパ節や肺門リンパ節、肺の周囲の臓器などへの転移が見られ、4期では遠隔転移などが見られる。これらは、抗がん剤や放射線治療でいかに延命させるかが目標になる。つまり、「完治」は望めない。

「ところが3期の一部(がんの原発巣と同じ側の縦隔リンパ節転移がある3A期)は、抗がん剤と放射線の後の手術で完治の可能性も出てくることが国立がん研究センターの研究で分かったのです」

 院内の倫理審査委員会を経て「抗がん剤+放射線+手術」を試みた肺がん3A期患者30人は、治療中に亡くなる人が1人もなく、重篤な合併症がなく、生存率が良かった。この結果を踏まえ、10月からJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)による他施設共同臨床試験が開始された。

 実は20年ほど前に一度、同様の臨床試験がJCOGで試みられたが、治療中に亡くなる人がいたために中止。しかし抗がん剤と放射線が当時よりはるかに進化し、外科医の腕も上がったことから、国立がん研究センターの研究を経て、今回の臨床試験開始に至った。

■手術不適応の一部に手術適応

「肺がんで亡くなる人は年間約7万2000人。1%でも生存率が上がる意味はとても大きい」

■最低限の切除で肺の機能を温存

 肺がんは、たばことの関連が非常に大きいがんだ。肺がんにはいくつかのタイプがあるが、そのうちたばこで特にリスクが上がるのが扁平上皮がんで、「肺がん=喫煙男性に多い」といわれてきた。

 ところが近年国内では、従来のなりやすい群(喫煙男性)とは違う肺がんが増えている。非喫煙者で若い女性の肺がんだ。

「がんのタイプでいうと『腺がん』です。早期肺がんはCTで発見されるのですが、早期の腺がんの発見率が高いため、手術で完治する肺がんが増えているのです」

 完治が可能ながんでは、「いかに機能を温存するか」が次の課題だ。

「手術適応の肺がんでは、肺葉切除が標準治療です。これを肺葉よりもさらに小さい単位である区域レベルでの切除(一部の切除)にすれば、肺の機能を残せます。肺の機能を最大限に残すには、どれくらいの区域切除が可能か。現在臨床試験中で、2020年には論文発表になる見込み。世界初の発表になります」

 機能温存はできても、腫瘍の取り残しがあれば本末転倒だ。区域切除ができる患者の見分けが重要になる。渡辺科長らは「CTですりガラス状陰影が確認された2センチ以下の腺がん」を対象とし、さらに、手術中に病理医が顕微鏡でがんの「顔つき」を調べ、区域切除でいくかどうかの最終判断を下している。

「目に見えない小さな転移も見落とさないようにするためです。CTの診断、腫瘍の取り残しのない外科医の手術、肺の病理医による顕微鏡検査の3つがしっかり成り立っていないと、『再発リスクのない区域切除』は不可能です」

 区域切除はほかの医療機関でも試みられているが、現段階では、どの患者にどのように行うかは、医師の判断に任されている。2020年以降、上述した臨床試験の結果をもとに、早くガイドラインができることが待ち望まれる。