ここから本文です

『アウトレイジ』最新作を音楽に例えると……。アーティスト4人が映画館でガチ観賞してきた

11/1(水) 22:11配信

M-ON!Press(エムオンプレス)

Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は北野武監督の人気シリーズ最新作『アウトレイジ 最終章』を観てきました。もちろん小出部長も北野武作品が大好き。ミュージシャンらしく、本作を音楽で例え始めるのでした……。

映画部メンバーをもっと見る

活動第38回[前編] 『アウトレイジ 最終章』
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー)、世武裕子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

----------

■2回目の観賞なんです

──「みんなの映画部」38回。今日は北野武監督、ビートたけし主演の大人気極道シリーズ完結編『アウトレイジ 最終章』です。まずは恒例の小出部長のひと言からお願いします。

小出 最高でしたね! 僕は2回目の観賞なんですけど、2回目のほうが味わい深く鑑賞できました。映画部の皆さん、過去の『アウトレイジ』シリーズは観てますか?

福岡 はい、二作とも(2010年の第一作『アウトレイジ』と、2012年の第二作『アウトレイジ ビヨンド』)観ました。結構記憶はおぼろげなんですけど。

小出 シリーズ新作は5年ぶりだもんね。

レイジ 俺も両方観てますが、細かいところは忘れてしまっていて。今回の新作を観ながらいろいろ思い出した感じです。全体の印象としては1と2より渋かったなという感じでした。

前はもっとギャグっぽいヤクザ映画というか、ぶっちぎり演出の連発で笑っちゃうカッコ良さみたいなものもたくさんあったけど、今回は結構シリアス。もっと大友(ビートたけし)がめちゃくちゃやりまくって、ユニークな殺し方を連発していくみたいなイメージだったんだけど。

小出 それって実は1のイメージで、2作目の『アウトレイジ ビヨンド』の時点で、その感じはおさまってるんだよね。

レイジ 『ビヨンド』は口論メインでしたよね。ひたすら「バカヤロー、なんだバカヤロー」って(笑)。

小出 そう、ヤクザ同士の怒鳴り合いの会話劇になったのが2。

福岡 そうやね。1ってあんま会話なかったよな。

レイジ 歯医者に行って相手の口の中、ドリルでぐちゃぐちゃにしたり。あとラーメン屋で「指入ってるよ」とか。

福岡 聞くだけでえげつない(笑)。

レイジ そう考えると今回の暴力描写は、例えばピエール瀧さん(関西ヤクザ・花田役)の爆弾のくだりだったり……。

小出 結末を見せてないよね。どうなったか、最後までは映さない。あれ1だったら映してるよね。

レイジ そうですね。でも、じゃあ『最終章』は淡白か? って言ったら、そんなことはなくて。やっぱり前の作品と同じテンションで面白かったからすごい。物足りない感じは全然ないです。

期待していたものと違ったり、そういうポイントじゃない次元でモノ作りしてるというか。「質感で勝負」みたいな。

世武 私は北野武監督がすごく好きで、ほぼほぼ観てるんですけど、実は『アウトレイジ』シリーズだけずっと観てなくて。

一同 へえ~。

世武 最初のキャッチコピーが「全員悪人」だったじゃん。それで「暴力シーンがすごい」みたいに聞いてたから、どうも興味が湧かなくて。北野武監督の映画ってバイオレンスみたいなことがよく言われるけど、私が好きなのは全然そこじゃないところだから。

小出 ちなみにどの作品が好きなの?

世武 『ソナチネ』(1993年)と『菊次郎の夏』(1999年)。意外とみんなには酷評されてたけど『Dolls』(2002年)も好きだったし。世代的には『キッズ・リターン』(1996年)が最初の北野映画体験で、ウワーって思ったなあ。

今回は予習も兼ねて1と2も観ようと思ったんだけど、あえて観ないで『最終章』だけ観たらどうかっていうパターンでいこうと。そしたら、やっぱり面白かった!

ジャンルとしてはいわゆるヤクザ映画なのかもしれないけど、映画への取り組み方が北野監督独特のものだなって。私がさっき挙げた好きって言ってたやつに近いものを感じる。

小出 今回『ソナチネ』に近いってことはよく言われていて、監督本人もそう言ってる。あと世武さんは『Dolls』とか好きなんだったら、色彩とか画作りにグッときたんじゃない?

世武 そうそう、画作りが本当にいい。だから1、2はわからないけど、この『アウトレイジ 最終章』だったら、例えばヨーロッパの人が観ても間違いなく楽しめるっていうか。

ヤクザ映画っていってもドメスティックなものじゃなくて、映画として普通に観られる。ちなみにパンフレットを観たら、張会長役の役者さん(金田時男)が滋賀県出身って。私と同郷!(笑)。

レイジ プロフィールに役者じゃないって書いてありますね。「本職は実業家」。

福岡 役としてもヤクザっていうか、韓国の巨大グループを仕切っている会長さんみたいな。「役者」じゃなくて「本職」なんや(笑)。

小出 ある意味、張会長がいちばん怖い。2から出てくるんだけど。

世武 この人すごいね。めっちゃ味があって良かったなあって。

小出 お芝居云々以前の存在感ね。元々は金田さんの息子さんがたけしさんの知り合いらしくて、そこからの縁で監督に口説かれて『アウトレイジ ビヨンド』にまず出たみたい。

素人というか、プロの演者じゃない人を役者として巧く活かすっていうのも、北野監督の得意技なんだよね。

■『最終章』は、ミニマルテクノのすごい長いプレイのラストという感じ

世武 あと良かったのは、出ている役者さんがみんな楽しそうっていうか。

レイジ たしかに芝居のやりがいありそう。

福岡 あるやろなあ。

小出 『アウトレイジ ビヨンド』から続いて登場の西田敏行さん(関西ヤクザの幹部・西野役)とか、自分から出してくれって監督に言ったって。

世武 ノリノリだもんね。「でしょうね」って感じだった(笑)。

福岡 白竜さん(張会長の側近・李役)もカッコ良すぎだよ!

世武 あと音楽(鈴木慶一)に関して言うと、ワンシーンがバシって切れるまでの長丁場に流れている音楽がめちゃめちゃ長いんだよね。それは別に無駄に長すぎるって意味じゃなくて、ある一定のトーンと緊張を長~く持続させていく。これ、作るのめちゃめちゃ大変やんって思って。

小出 そうね。それに絡めて僕が思ったのは、まず『アウトレイジ』シリーズっていう括りでも、北野武監督のフィルモグラフィー全体としても、今回の『最終章』ってミニマルテクノのすごい長いプレイのラストって感じだなって。

『アウトレイジ』の1本目って、とにかく派手な作風なんですよ。『最終章』から入った世武さんからしたら、たぶんビックリするんじゃないかなってくらい派手。

世武 過去作も観ようと思った、今日。

小出 それこそ『仁義なき戦い』(1973年)や『ゴッドファーザー』(1972年)などにも通じるところはあると思うんだけど、さらにデフォルメされた殺し方大喜利というか。

で、『アウトレイジ』の直前ってさ、たけしさんの内省的な3本が続いていたんだよ。『TAKESHIS’』(2005年)『監督・ばんざい!』(2007年)『アキレスと亀』(2008年)っていうアーティスティックな傾向のものが並んで。

──北野監督が自己の内面を鬱々と見つめる大殺界的なダウナー三部作ですね(笑)。

小出 その暗めの時期を脱け出て、『アウトレイジ』のスタートは「思いっきりエンタメやろうぜ」みたいな。当初はシリーズ化するつもりもなくて、もう打ち上げ花火みたいなイケイケのノリだったわけ。それが結果的にヒットした。

そのヒットを受けて作られた続編の『アウトレイジ ビヨンド』は、さっきも言ったように会話劇。お話として描かれるのは、関東の山王会と関西の花菱会っていう巨大暴力団同士の抗争なんですよ。そのなかでヤクザ同士の知略をめぐらしたマウントの取り合いとか、熾烈なパワーゲームが展開される。

その抗争の果てに、1から引き続き出ていた登場人物も2で結構死んじゃう。勢力図も大きく変わって、今回の3では山王会が弱小化していたでしょう。2の段階では花菱会と五分五分な力を持ってたんですけど、今では花菱の勢力下に置かれていて、どっかのマンションの一室みたいなちっちゃい事務所になっちゃった。

つまり、2で『アウトレイジ』での要素はかなり使い切ってるわけですよ。さっきのミニマルテクノの例えに戻ると、最初に打ち出したテーマリフやテーマとなるループの、その最初の盛り上がりの波、サビ的な感触は2の頃ですでに遠ざかり始めてる。テーマの輪郭は残ってるけど、むしろリズムや空間で展開させたりしてね。

で、その先にあるのが、今回の『アウトレイジ 最終章』。最初のテーマは時折聞こえる断片になり、これまでの余韻が空間成分として漂い、そして包んでいくという。

世武 作風が毎回1と2と3で違うってこと?

小出 そうとも言えるけど、グラデーションになってるっていうニュアンスかな。今回の『最終章』の最後に感じるのは、午前4時半のフロアみたいなむなしさですよね。『アウトレイジ』シリーズが人生哲学を感じさせない世界だからより、むなしい。

例えば、大友の行動原理の中心にあるのは仁義ですけど、昔かたぎのヤクザとしての美学とも言えるし、職業柄とも言える部分がありますよね。これは他の多くの登場人物にも言えますけど、で、それを貫いていってどうなったか。一歩引いて見ると、循環しただけなんですよね。

終わってみたらたくさんの人が死んで、代替わりが行われて、新しい顔が幹部会に並び、今日も仁義を貫き面子を張り合う世界は続く。でも、このなかで起きてることって、外の世界に何の影響も与えてないんですよね。一般社会の人間は何も知らない。ここがすごく面白いところだと思う。だから、むなしいのに、自分の人生について深く考えはしないというか。無関係なむなしさって、ただただむなしい。

レイジ なるほど、単にひとつの生物のなかで細胞が生まれ変わっているという感じですね。

小出 そうそう、自己完結した世界のなかでの勢力争いなんだよ。これってすごい皮肉な視点だと思う。

TEXTBY 森 直人(映画評論家/ライター)