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それは、手のひらに収まる“未来” 先進性と合理的な操作性が融合した「iPhone X」

11/1(水) 9:05配信

ITmedia Mobile

 「スマートフォンの未来」と呼ばれる「iPhone X」が、11月3日に発売される。未来と銘打つだけに、目いっぱい広がった縦長のディスプレイや、機械学習を採用した「Face ID」など、これまでのiPhoneにはなかった要素が数多く採用されており、発表時には大きな話題を呼んだ。予約開始日の10月27日には当日受け取り分の予約が瞬時になくなるほどで、あらためてiPhone人気の高さを見せつけた格好だ。筆者は、この“未来”を一足先に体験することができた。ここでは、その印象や使い勝手、性能などのファーストインプレッションをお届けしたい。

ホームボタンに代わる操作

●まるで映像が浮かび上がっているような没入感

 iPhone Xを起動してまず目がいったのは、その高い没入感だ。上下左右いっぱいまでほぼディスプレイになったことで、ハードウェアの中に映像が映っているというより、映像そのものが浮かび上がっているように見える。さすがにフレームレスではないが、前面のカラーはブラックで統一されているため、暗い場所だと目立ちにくく、映像への没入感はさらに高まる。

 iPhone Xには、iPhoneとして初の有機ELが採用されている。もちろん、単に有機ELを搭載しただけでなく、ディスプレイのチューニングはApple基準を満たすものだ。実際に見た印象は、有機ELにありがちなギラついた色の濃さはなく、液晶モデルのiPhoneに近い。

 ただし、100万対1といわれるコントラスト比の高さは健在。映像を再生してみると分かるが、色の濃淡がくっきり出ており、黒が締まって見える。もちろん、iPhone 8/8 Plusに搭載されたTrue Toneにも対応する。これによって、環境光に応じて最適な色味にディスプレイが変わり、自然な色合いを楽しめる。

 側面には光沢感のあるステンレス素材が採用されている。アルミを採用したiPhone 8/8 Plusとは異なり、より光沢が強調されている格好だ。より先進感を打ち出したいiPhone Xにはふさわしい素材で、高級感もある。質感としては、Apple Watchのステンレス版に近い。グレードごとに端末の素材をアルミとステンレスで使い分ける手法は、Apple Watchを踏襲しているといえるだろう。

 持ったときの感覚は4.7型のiPhone 8と、5.5型のiPhone 8 Plusの中間ぐらいといった感覚で、どちらかというとiPhone 8に近い。それもそのはずで、iPhone Xの横幅は70.9mm。iPhone 8が67.3mm、iPhone 8 Plusが78.1mmのため、数値の上でもiPhone 8よりやや大きいことになる。ただし、縦にディスプレイが長い分、映像を見たときの迫力はiPhone 8 Plus寄りだ。縦長のディスプレイを搭載することで、2つのサイズに分かれたiPhoneのいいところ取りをしたようにも感じる。

 普段からPlusがつく5.5型のiPhoneは大きすぎると感じていた筆者も、iPhone Xは、手にしっかりなじむように感じた。片手での操作も普通にでき、画面の端までしっかり指が届く。ホームボタンがなくなった分、より広い領域を表示に使えるようになったからだ。筆者は比較的手が大きい男性だが、女性でも、手の大きな人であれば操作しやすいだろう。

●合理性が考え抜かれた、ホームボタンレスのUI

 ホームボタンがなくなったことで、これまでのiPhoneとは操作の“作法”も変わった。ただし、それは使いづらさとイコールではない。むしろ、少し使っただけで、Phone Xのユーザーインタフェース(UI)の方が、操作しやすいと感じるようになったほどだ。

 例えば、ホーム画面に戻るには、これまでだと指をいったん画面から離し、ホームボタンに置き換えてから押すという動作が必要だった。これがiPhone Xでは、画面下から上にスワイプするだけでよくなる。指の動きが少なく、サッと操作できるうえに、スルッと画面が小さくなっていくエフェクトも小気味よい。指の動きを途中で止めると、Appスイッチャーが表示される。これも、ホームボタンのダブルクリックよりスムーズだ。

 ホーム画面へ戻る操作が下からのスワイプになったことで、もともとこの動作に割り当てられていたコントロールセンターが右上から下へのスワイプに変わった。これは、“切り欠き”となっているTrue Depthカメラ部分をうまく生かしたUIだ。この部分には通常、バッテリー残量やアンテナピクト、Wi-Fiマークが表示されているため、コントロールセンターが出てくるのも合理的といえるだろう。逆に、左上から下にスワイプすると、従来通り、通知が表示される。

 ただ、以前に比べて指が届きづらい分、コントロールセンターは出しづらくなったことも確かだ。一方で、コントロールセンターは、毎回呼び出す画面でもない。むしろ、利用頻度の高いホーム画面に戻るのに下から上へのスワイプが割り当てられている方がいい。

 前面が全てディスプレイになったとき、どのようなUIにしたらiPhoneらしく、かつ自然に操作できるのか――iPhone Xの新しいUIは、こうした点について、熟慮に熟慮を重ねた結果生まれたものだと感じた。論より証拠ということで、操作感は11月3日以降、ぜひ実際に店頭などで触ってみることをオススメしたい。実機を触らずに「使いづらそう」と断言するのは、早計であることが分かるはずだ。

 とはいえ、これまで培われてきたエコシステムが一気に“未来”へ進むわけではない。アプリ側がiPhone Xのディスプレイにきちんと対応していないと、その性能をフルに引き出すことはできない。例えば、筆者がよく使うアプリとしてGoogleマップをインストールしてみたが、残念ながら上下に帯ができてしまった。

 「Pokemon GO(ポケモンGO)」も同様の表示になった。下からスワイプすることでホーム画面に戻る現状の仕様に鑑みると、ポケモンGOのようにフリックを多用するゲームアプリは、むしろ帯がある方が操作しやすい。ユーザビリティを考えると、画面対応にあたって、こうした操作を再考する必要もあるだろう。なお、これらのアプリは、iPhone X発売前の10月31日にテストしている。そのため、今後アップデートがかかる可能性も十分ある。あくまで、発売前に非対応アプリを表示するとどうなるかの、いち参考例にとどめておいていただければ幸いだ。

●付けヒゲありでもOK 驚くほど精度の高い「Face ID」

 ホームボタンがなくなったことで、同時にここに埋め込まれていたTouch IDも非対応になった。その代わりに、iPhone Xでは、前面のTrue Depthカメラでユーザーの認証を行う。それが「Face ID」だ。顔認証と聞くと、暗い場所で読み取りにくく、本体をしっかり正面に構えないといけないと思われるかもしれない。結果として、指紋センサーの方が確実性が高い――筆者も当初はそう思っていた。だが、そうした先入観は、いい意味で大きく裏切られた。

 発表時にも述べられていたように、Face IDは単純にインカメラで撮影した画像でユーザーの認証を行っているのではない。True Depthカメラは、その名の通り、顔の「深度」情報まで取得している。仕組みとしては、ドットプロジェクターで顔を3万の点に分解し、それを赤外線で読み取るというものだ。これによって、正面に向いていないときでも、しっかり顔認証を行うことが可能になるほか、暗い場所でも問題なく利用できる。

 利用の仕方も簡単だ。いや、簡単というより、ロック解除を意識する必要がなくなった。iPhone Xを持ち上げると、画面が点灯する。この状態でロック画面を上にフリックすると、いつものホーム画面が現れる。ユーザーとしては、Touch IDの上に指を置くというような、特別な動作を一切する必要がないのだ。しかも精度が高く、顔を斜めに向けていても、机の上に置いた状態でも、しっかり認識された。顔を立体的に捉えているため、角度がついていても問題ない。

 さらにすごいのは、機械学習によって、顔の変化に対応できることだ。ためしに付けヒゲを付けてみたが、確かに付けたばかりだと顔を認識しない。しかしここでパスコードを入力することで、登録された顔と、ヒゲのある顔が同一人物だとiPhone X側が学習する。学習は徐々に進んでいくようで、3回目のパスコードを入れたあとは、ヒゲのありなしに関わらず、どちらも筆者だと認識してロックを解除できた。これには正直、驚かされた。

 暗い場所で、しっかり認証できたことも付け加えておきたい。ただし、残念ながら本機を借りてからこのレビューが掲載されるまで、あいにくの移動続きで屋外に出ることがほとんどなかった。人がいるところでも本機を出せないため、直射日光が強く当たるシチュエーションでFace IDがどのように動作するのかまでは検証できていない。この点は、ご容赦いただきたい。

 顔認証は、画面が点灯すると自動的に行う仕様になっている。ロックが解除されたときのみ、通知の中身が表示されるなど、小技も利いてきる。ユーザー認証の方法も、一歩未来に進めたというわけだ。

 なお、Apple Payの認証にもFace IDを利用する。そのため、手順が少々変わっており、まずサイドキーをダブルクリックしてApple IDを立ち上げ、Face IDでの認証が済むと初めて決済が始まる。iD対応自販機やタクシーでの決済を試みたが、Touch IDのときのように、あえて指を置く必要はなくなったのは便利だ。一方で、指をTouch IDに置きっぱなしにしたまま決済機に近づければよかった以前と比べると、認証のための動作が1つ増えてしまう。Face IDでの認証は一瞬のため、そこまで手間だとは感じなかったが、手順が変わることは覚えておいた方がいいだろう。

 このTrue Depthカメラを、Face IDだけに生かすのはもったいない。Appleもそれは百も承知で、APIを公開しており、アプリが対応すれば、さまざまな機能に応用できる。Appleが示した1つの“お手本”が「アニ文字」だ。アニ文字はiMessageで利用できる機能で、さまざまなキャラクターに表情をマネさせたうえで、声をしゃべらせることができる。人の表情をトレースすることで、キャラクターが生き生きと動くのが楽しい機能だ。作成できるのは、True Depthカメラを搭載したiPhone Xだけだが、受信側は既存のiPhoneでもいい。

 また、Apple純正アプリの「Clips」も、True Depthカメラを応用した「シーン」と呼ばれる機能に対応する。これは、あらかじめ用意された背景と自分の映像を合成できる機能だが、自分の姿にもエフェクトがかかり、あたかもCGの中にいるかのような感覚を味わえる。インカメラ側で深度情報まできっちり取れるため、AR(拡張現実)対応もしやすくなっているのだ。

 分かりやすいところでは、インカメラでポートレートモードが利用できるのも、iPhone Xだけだ。iPhone 8 Plusから加わったポートレートライティング(β)にも対応する。インカメラでの撮影でも、より印象深い写真を撮れるようになり、活用の幅が広がった。セルフィが好きなユーザーにもオススメできそうだ。ただし、これらの機能は先に述べた通り、あくまでAppleの“お手本”。サードパーティーが活用することで、アプリの進化も期待できる。

●望遠側カメラが光学式手ブレ補正対応で進化、パフォーマンスも最高峰

 進化したのはインカメラだけではない。アウトカメラもiPhone最高峰の仕上がりになっている。iPhone Xはデュアルカメラ仕様で、片方が広角、もう一方が望遠という構成はiPhone 8 Plusと同じだ。センサーもiPhone 8/8 Plusと同じ。センサーが大型化しており、より高速に、ゆがみが少ない写真が撮れるという特徴も共通している。

 iPhone 8 Plusと比べて進化したのは、望遠側だ。iPhone Xは望遠側も光学式手ブレ補正に対応しており、暗い場所でもシャッター速度を稼ぎやすくなった。これによって、よりノイズの少ない写真を撮ることができる。望遠側を利用するポートレートモードも、この進化の恩恵を受ける機能の1つだ。さらにレンズも8 PlusのF2.8からF2.4に明るくなっている。

 プロセッサにはiPhone 8/8 Plusと同じ「A11 Bionic」が搭載されており、パフォーマンスの高さは折り紙つきだ。詳細はiPhone 8/8 Plusのレビューを参照してほしいが、CPU性能、GPU性能ともに高く、スマートフォンとしては最高峰の性能を誇る。あらためてiPhone Xでベンチ―マークを取ってみた結果は、以下の通りだ。

 Qi方式でのワイヤレス充電に対応しているのもiPhone 8/8 Plusと同じで、本体を持ってケーブルをきっちり刺さなくても充電ができるのは、非常に気軽といえるだろう。欲をいえば、もう少し充電速度が速くなってほしいが、これについては今後のアップデートに期待したいところだ。

 約1カ月前に掲載されたiPhone 8/8 Plusのレビューで指摘した通り、全ての人が一気に未来に行きたいとは限らない。この2機種が2017年に発売された意義も、そこにある。実際、アプリが独特なディスプレイ形状に対応するには、ある程度時間がかかるだろう。

 ただ、そんな人も一度、iPhone Xは手に取って比較、検討してみてほしい。没入感の高いディスプレイや、Face IDの精度の高さ、そしてTrue Depthカメラを応用した機能の数々には、間違いなく驚かされるはずだ。人によっては、iPhoneに初めて触れた、あのときのワクワク感がよみがえってくるかもしれない。

 発売後に詰めていかなければいけない部分はあるものの、iPhone Xには、Appleが思い描く未来が詰まっている。64GB版で11万2800円、256GB版で12万9800円(いずれもSIMロックフリー版で税別)と、スマートフォンの価格としては高価にも思えるが、未来を買えるのであれば、決して高くはないはずだ。

最終更新:11/1(水) 9:05
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