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iPhone Xはどこが次世代なのか?

11/1(水) 9:09配信

ITmedia PC USER

 その名前を見ても、10年前の初代からiPhoneの象徴となっていたホームボタンがなくなったことからも、新たに追加された数々の新機能からも、iPhone XはこれまでのiPhoneの流れから一気に飛躍した大幅なアップグレードであることが分かる。意欲的過ぎるまでの新機能や大胆な操作の変更は、長年のiPhoneユーザーに混乱を招かないのか。林信行がiPhone Xを手にしてから22時間の試用に基づいたファーストインプレッションを書く。

iPhone Xのために新たにデザインされたデュアルレンズは真ん中にLEDがあるのが特徴

(フォトグラファー:Munetaka Harada)

●ディテールから漂う艶やかな未来感

 Face IDをはじめとする最新技術や新しくなった操作は思っていたよりもすんなりと手になじむ。そしてカメラがiPhone 8 Plusより、さらに大きく進化している――iPhone Xを半日間触ってみた感想はこの2つに集約される。

 まずは外観から見ていこう。本体のサイズはiPhone 8よりもほんの少しだけ大きい程度。ただし、解像度は巨大なiPhone 8 Plusを上回り、ディスプレイ面積も拮抗している。この小さいサイズながら最先端の技術を凝縮し、これまでPlusサイズのiPhoneにしか搭載されていなかったデュアルレンズ機能を筆頭に数々の新機能を満載している。

 大きい画面や最先端のカメラは欲しいけれど、一方で文字入力のしやすい小サイズのiPhoneも欲しい、といういいところ取り狙いのユーザーのハートを射抜く魅力を備えている。

 形の上でもいくつか大きな特徴がある。なんといっても大きいのは10年前の誕生以来、iPhoneの象徴となっていたホームボタンがなくなったことだ。

 なくなることで見た目の印象も変わるのかと思ったが、少なくとも画面が消えている間はiPhone 7や8といった機種とあまり見分けがつかない。これはなぜだろう。

 iPhone Xは、スペースグレイモデルもシルバーモデルも、ボディカラーにかかわらず額縁部の色は黒だ。そしてAppleは、iPhone Xへの下準備だったのか、ここ数年、黒額縁のiPhoneではホームボタンの色を周囲の色に溶け込ませ目立たない配色にしていた。画面が消えている状態では、むしろガラスと一体化したアルミ側面の光沢のほうが強く目に焼きつくが、この部分はiPhone 7/8と共通の特徴。だからだろうか、簡単にはiPhone 7/8のスペースグレイモデルと見分けがつかないことに逆に驚かされた。

 ただし、画面が点灯した瞬間、印象が一変する。iPhoneでは初採用となる有機ELのディスプレイが、まさに隅から隅まで広がっており、それまでホームボタンがあったはずの場所も画面で埋め尽くされている。

 画面の上側にも特徴がある。センサーハウジングと呼ばれる額縁の出っ張りがあるのだ。これは後述する顔認識技術、「Face ID」を可能にしている。こんな狭いスペースにマイク、スピーカー、フロントカメラに加え、5つのセンサーを凝縮している。このハウジングの左右に画面が回り込んでいるのが他の狭額縁スマートフォンと比べたiPhone Xの大きな特徴となっている。ホーム画面ではハウジングの左には現在時刻が、右側に電波状況やバッテリー残量などのピクトグラムが並ぶ。

 ハウジングの左右に画面を回り込ませたスタイルを、「ぎりぎりまで画面を広く取ろうとした攻めの姿勢」ととらえるか、「気になる出っ張り」と見るか、最初のうちは意見が分かれそうだ。しかし、いざ使い始めると、出っ張りはほとんどの利用シーンではそれほど気にならない。

 iPhone Xの画面はiPhone 6、7、8と横幅は同じで、約20%ほど縦に長い。横に構えれば超ワイドディスプレイだ。この比率の縦横を埋め尽くす写真や動画はそんなにない。このため、通常は写真を表示するときも、映画を再生するときも、ハウジング部分はスッポリとレターボックス(黒塗りの余剰領域)の中に隠れる。これが従来のPhoneのような液晶ディスプレイなら、レターボックス部分も液晶バックライトで多少明るくなり、ハウジング部を目立たせていたかもしれない。だが、有機ELディスプレイは黒表示が一切の光を放たない。なので、レターボックスの中に隠れたハウジング部分はほとんど目立たない。

 もっとも、写真や動画を拡大表示するとハウジング左右にまで拡大した写真/動画が表示され急に「出っ張り」が目立つ存在となる。背景が明るい色のアプリを起動した時も同様だ。ただし、この辺りは今後、iPhone Xを意識してデザインされたアプリが増えてくることでも感じ方が変わってくるだろう。今のところは写真や動画を拡大表示したとき以外はそれほど気にならない印象だ。

 続いて本体裏側。「iPhone」の文字以外一切書かれていないガラスコーティングの背面というのはiPhone 8シリーズにも通じるiPhone 2017年モデルの共通の特徴だ。かつてのiPhone 4シリーズに通じる高級化粧品の容器のような艶やかさ、エレガントさがある。

 そして、艶やかなガラス板に投じられた石のように、iPhone Xの背面で存在感を放っているのが、本モデルの特徴である縦方向に並ぶデュアルレンズの突起だ。iPhone 8 Plusのデュアルレンズとはまた異なり、2つのレンズの間に強烈な光を発するLED(TrueToneフラッシュ)を配置、レンズ部を見ただけで本モデルであることが分かる。このLEDを凝視すると配線のようなものが見え、黒く塗られた2つのレンズの間に、これ以外にもいくつかのセンサー類の穴があいているのが分かり、改めてこの薄いガラス板が細密な技術の凝縮であることを強く感じさせる。

 側面から見たiPhone Xは驚くほど薄いのに、この薄い板が目を見張るような映像を撮り、それを驚くほどきれいに映し出したり、数々の魔法のような機能を目の前で見せてくれると、我々は未来を生きているのだと感じずにはいられない。

●喪失感はあるが、それほどとまどわない

 ところで、iPhone Xといえば誰もが気になるのがホームボタンがなくなったことによる使い勝手の変化だろう。私も使い始めて最初の1時間ほどは、「あれ、どう操作したらいいのだろう」ととまどうことがあった。そこまで心配するほど大きな変化ではなかった。

 これまでのホームボタンの標準的な使い方として1度押し、つまり、アプリ利用中の画面からホーム画面に戻る操作があるが、これは画面の下に表示される白いバーを上方向にはじく(フリックする)操作で行う。広い画面を生かしてアプリの利用中は常に画面の下にホームボタン代わりとなる白いバーが表示されるようになったのだ。

 では、ホームボタンの2度押し、アプリの切り替え操作はというと、白いバーを上にドラッグしたまましばらく待っていればよい。すぐに起動中の全アプリの画面が一覧表示される。

 ただ、いまだにストレスを感じる変化はアプリの強制終了だ。これまではアプリ画面一覧表示の状態で、終了したいアプリの画面を上方向に弾けば終了させることができた。しかし、iPhone Xではどれか適当なアプリ画面を長押しする。すると個々のアプリ画面の左上に赤い「-」マークが現れるので、これをタッチして終了する。操作がひと手間増えたのだ。もっとも、今のiOSはよほどのことがない限り、アプリを強制終了しなくてもOSの動作が遅くなったりしない。むしろ、頻繁にアプリを強制終了することのほうがバッテリーやメモリに負荷をかけることもある、と考えるとこの操作の変更は、むやみやたらなアプリ強制終了を減らそうという狙いがあるのかもしれない。

 それではこれまでホームボタン長押しで呼び出していたSiriはどうやって呼び出すのか? これは画面右側の側面にあるサイドボタンを長押しすればよい。これ以外にもスクリーンショットの撮り方や本体の終了方法、再起動方法など、新操作は列挙してみれば意外に多い。だが、人にもよるのだろうが、人間は案外順応度が高く、よく使う機能から覚えて案外すんなりと新操作を受け入れそうだ。

 ただ、たまに「昔はこの操作をホームボタンでやっていたのに」と、親指に喪失感を覚えることはある。マニュアル車からオートマ車に切り替えた人が感じる左足の手持ち無沙汰感に少し似ているが、これこそが進化というものなのかもしれない。

 なお、iPhone Xにおけるホームボタンの代替操作に関しては動画でもまとめたのでそちらも参考にしてほしい。

●想像以上によく練られた顔認識、「Face ID」機能

 ホームボタンがなくなったことで、もう1つ大きく変わったのが指紋認証技術の「Touch ID」が使えなくなったこと。代わりに採用されたのが顔認証技術の「Face ID」だが、これが思っていたよりも操作性が練られていて使い勝手が良かった。

 まず指紋認証をやめて顔認証にすることのメリット。実はこれまでの指紋認証ではiPhoneの持ち主が寝ている間、つまり知らない間に、勝手に指紋を取られてロックを解除されたり、買い物をされたりといったことがたまに報告されていた。これに対してFace IDは目を開けていないと認証されないのでその心配がない。

 Face IDはインカメラに写った顔を認識しているわけではない。顔にドットパターンを投影し、それを赤外線カメラで読み取り、顔の微妙な起伏までとらえているのだ。だから、真っ暗な部屋でもきちんと顔認識ができるし、顔写真でiPhoneをだましてロックを解除しようとしてもダメだ。それどころか、Appleはハリウッドの特殊メイクなどによる変装すらも見抜いて反応しなくなるように、iPhoneのニューラルネットワーク(認識技術)をトレーニングしている。双子の兄弟など特殊な場合を除き、顔認証をだませる確率は100万分の1だという(もう1つ、顔の特徴が発達していない児童の顔では誤認識が生じる可能性が高まるという)。

 実際に使って見て驚かされたのは、AppleがFace IDでの認証をストレスのないものにするためにいかに多くの工夫をしているかだ。Face IDの認証はかなり速く、あっという間に完了するが、それに加えて、Face ID関連の操作がとにかく待ち時間を感じさせないように練り込まれた設計になっている。

 例えば、ロック画面の解除。瞬時に終わるFaceIDの本人確認を待たずに、とりあえずロック解除の操作だけ先に行っておくことができ、確認が取れ次第ロックが解除される。サイドボタンをちょんちょんと2度押しすると、Wallet(iPhone内のお財布)が起動するが、ここで支払うカードを選んでいる間にすでにFace IDでの顔認証が完了し、支払いができるようになっている。

 確かに、指紋認証と違ってiPhoneの画面を顔から背けた状態では本人確認ができないが、本人確認が必要な場面は大概、ユーザーの側も慎重に向き合う必要がある場面だ。Face IDの認証のスピードの速さも考えると、またしてもこれまでホームボタンに押し付けていた指が手持ち無沙汰になる感じはあるが、不満を感じる人はほとんどいないだろうと思えた。

 iPhone Xでは、同じFaceTimeカメラを使って絵文字の顔を操るアニモジという機能もiPhone X限定で提供している。顔の50以上の筋肉の動きを読み取って再現する表情は何か愛らしく、感情移入できるものがある。なお、アニモジを作るのはiPhone Xでしかできないが、Iメッセージを使って送信した際にはムービー形式になるので、再生はどのiPhoneでも可能だ。

 iPhone Xの発表会では、他にユーザーの顔を認識してお面を合成表示したり、顔だけ他のキャラクターに変えてしまったりといった技術を搭載したSnapchatの将来バージョンが紹介された。また、Appleの映像編集ソフト「Clips」もリアルタイムでセルフィー(自撮り)映像の背景を差し替えたり、絵画風にしたりと、さまざまな効果が加えられるようになるようだ。

 あなたの顔の表情やわずかな起伏まで認識するカメラやセンサー、その処理を支えるA11bionicプロセッサ、この組み合わせはこれまでのiPhoneにはなかった新しい応用、新しいタイプのアプリを今後も生み出してくれそうだ。

●自撮り/望遠カメラはiPhone 8 Plusを超える

 このようにiPhone Xでは、FaceTimeカメラ(インカメラ)が大幅に進化したのも大きな特徴だ。自撮りをよくする人には最強のスマートフォンと言ってもいいかもしれない。

 700万画素のFacetimeカメラ(インカメラ)に加えてFace IDで使用する赤外線カメラも搭載されたため、被写体との距離を認識し、背景と区別することが可能になった。そのおかげでデュアルレンズ仕様のiPhone 7 Plusや8 Plusに搭載され高い人気の被写界深度エフェクト(ポートレート撮影)が自撮りのときにも利用できるようになった。背景をぼかしてまるで高級カメラで撮った写真のように仕立てるエフェクトだ。

 ここまではiPhone 8/8 Plusのレビューでも伝えていた。

 ただ、このレビューをしたときに気付いていなかったのは、背面のデュアルレンズカメラも広角側で撮ったときの性能・画質は、iPhone 8 Plusとほぼ同等だが、望遠側のレンズはf/2.4のより明るいレンズに進化していたことだ(iPhone 8 Plusではf/2.8)、手ブレ補正も追加され、これが使ってみるとそれなりに大きな差を生み出すことが分かった。これによって差が出るのは、やや暗めな状況でデジタルズームを組み合わせた高倍率ズーム撮影時で、iPhone 8 Plusの写真とは大きく異なる。

 また、iPhoneデュアルレンズ機で人気の被写界深度エフェクト(ポートレートモード)の被写体は望遠レンズで撮影している。つまり、このレンズの違いはポートレート撮影時の仕上がりにも違いを生み出すのだ。

 夜景の撮影でもそれなりに大きな差が出たので、サンプル写真を確認してほしい。

 2017年、ほぼ同時に発表されたiPhone 8シリーズとiPhone X。iPhone 8シリーズのレビューに書いた通り、筆者の認識ではiPhone 8シリーズでも最先端のiPhoneを満喫できる。常に最先端の技術にこだわる人以外はiPhone 8シリーズで十分、という基本の見方は変わっていないつもりだ。

 ただ、特例として、それほど技術好きでない人でも「自撮り機能にこだわりたいならiPhone X」ともこれまでに書いた。ここに新たな特例として、「望遠で撮影する機会が多い人もiPhone X」と書き加えたい。また、iPhone 8シリーズのレビューでは、「iPhone Xではホームボタンがなくなり操作方法が大きく変わる点」を注意していたが、ここはそれほど心配する必要はないかもしれない。

 iPhone 10年目に登場したiPhone Xは、標準iPhoneと大型のPlusシリーズのiPhoneで分散していた魅力を1つに融合し、次の10年に向けたスタートラインを描く、まさに次世代と呼ぶにふさわしいiPhoneに仕上がっていると改めて実感した。

最終更新:11/1(水) 12:39
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