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GEのデジタル変革、カギは社内カルチャーの改革にあり

2017/11/1(水) 21:11配信

ITmedia エンタープライズ

 2017年10月31日から11月2日まで、東京都品川区でガートナー ジャパンによる「Gartner Symposium/ITxpo 2017」が開催される。ここでは、「デジタル・インダストリアル・カンパニー」をビジョンに掲げ、ここ10年で大胆な変革を続けているGEの事例を紹介する。

社内カルチャーの変革としてGEが行っている3つの施策とは

 10月31日の開かれた「Transforming to a Digital Industrial Company - 次世代製造業に向けたGEの挑戦」と題した冒頭の基調講演で、GEジャパン 代表取締役社長兼CEO GEコーポレート・オフィサー(本社役員) 熊谷昭彦氏が、同社におけるデジタルトランスフォーメーションの経緯と成果、そして未来を語った。

 「GEは、ここ10数年で事業ポートフォリオの選択と集中を果敢に行ってきた。象徴的なのは2007年のプラスチック事業、2015年のキャピタル事業の売却で、コングロマリットからの脱却を目指すことによって、インフラ事業に集約したインダストリアル・カンパニーに作り替えた」とし、「今では、エネルギーと輸送、そして医療という3つの分野を主体としたカンパニーになった」と説明する。

 GEの2016年の売上は約13.5兆円(約1237億ドル)にもおよぶが、競合との激しい競争の中で、一歩先を行くにはどうするのか、差別化するためにはどうするのだろうか。

 熊谷氏は「さらなる事業変革と差別化に向けて、GEではデジタルに投資し、アナリティクスの機能を強化することにより、新しい時代に適したデジタル・インダストリアル・カンパニーを指向した。2011年には約10億円を投資してシリコンバレーにGEグローバル・ソフトウエアセンターを開設し、そのチームが作ったのが全社共通のプラットフォームとなる“PREDIX”(プレディックス)だ。まずは社内で利用して改良し、成果を出した上で外部に提供を開始した」と述べた。

●3つのトランスフォーメーションが原動力に

 GEが掲げるデジタル・インダストリアル・カンパニーの実現に向けて、熊谷氏は3つのトランスフォーメーションが原動力になると告げた。

 「1つはサービス・トランスフォーメーションで、従来は機器の修理やメンテナンスがビジネスモデルであったが、これからは機器の有効活用、オペレーションやビジネスの最適化に変わってきている。さまざまな機器や装置からのデータをデジタルでつなぎ、見える化したり、一元管理したりすることで、新たな価値を作りだし、お客さまの要望に適したソリューションを提供できる」とし、「日本はIoTについて世界でトップ5に入るほど進んでおり、生産性向上に対する意識が高く現場力も強い。いわば“カイゼン”のプラットフォームにデジタルが加わることで、アナログではでき得なかった改善がデジタルでできるようになった」と分析する。

 「2つめはサプライチェーン・トランスフォーメーションで、GE社内ではブリリアント・ファクトリーという認証制度があり、どれだけデジタルでつながっているのか、分析できているのといった視点で認証している。全世界にあるGEの450拠点すべてのブリリアント化を目指しているが、日本においてもGEヘルスケアの日野工場が該当しており、リアルタイムで生産力や品質の見える化を行い、最適化することで改善を高速回転できる」と熊谷氏はメリットを語る。

 さらに熊谷氏は、「一番重たくて重要なのが、3つめのカルチャー・トランスフォーメーションで、社内カルチャーの変革、考え方や働き方の改革がないとデジタル化の意味がない」と断言する。

 「デジタル時代のスピード感に合わせる、デジタル世代をワクワクさせる、動機づけられるような社内環境を作るのがとても重要で、いろいろな取り組みを積み重ねて、改善していく必要があると痛感した。特にスピード感が大事で、それに対応できるようなマインドセットを作ることが欠かせない」とする。

●社内バイブルから評価制度まで変える

 設立から125年という長い歴史を持つ同社で、一言で社内カルチャーを変えるといっても、その道筋が平たんでないことは容易に想像が付く。そこで、GEでは社内カルチャーを根底から変えるべく「GE Beliefs」「FastWork」「Perfomance Development」という3つの施策に取り組んでいる。

 熊谷氏は「かつてはGE Valueという全世界共通の社内バイブルがあった。ただ、時代に沿わない表現があったり、今のデジタル世代には受けないということが分かったりしたことで、時代にあった動機づけができるような心に訴えかけるようなメッセージに変えた」と経緯に触れた。

 さらに「GE Valueを日本で導入する際、社員にまず英語で紹介して『みなさんでピンとくるような日本語訳を応募して下さい』と募集して社員のアイデアをまとめたのが今の形。納得感のある腹落ちしやすい内容になり、それがいい結果につながったと思う」と指摘した。

 一方のFastWorkは、社員研修の講師に依頼したエリック・リースに学んだもので、「小さくスタートして成功したら大きくする、失敗したらすぐやめる、行動しながら微調整というITの世界では当たり前のこと」(熊谷氏)

 とはいえ、これまで社内で完璧なものを作り上げてから世に出してきたGEのやり方とは真逆であり、当初は社内での抵抗が非常にあったとのこと(熊谷氏)。そこでトレーニングをして、意義の理解を進めると徐々に抵抗も薄れていき、効果が実感できるようになると社内に浸透するようになったという。

 加えて熊谷氏は「ここ日本で、FastWorkはチャンスだよと社内にメッセージを出した。というのも、GE内での日本のプレゼンスは昔の高度成長時代をピークとして徐々に落ちてしまい、同時に社員のモチベーションも下がっていた。そこに、とりあえず小さく速く挑戦するという流れがきて、社内で気軽に提案しやすくなり、すぐに行動することで実行力が付いていった。日本でも浸透が進み、今では全社員で共有している」と工夫を語った。

 社内改革は社員の評価制度にも当然およぶ。

 熊谷氏は「これまでは年に1回、上長とディスカッションをして評価を行っていたが、今の若い世代は1年前のことを時間がたって評価するなんてとんでもないという考え方をする人が多かった。そこで、もっと効果的な方法を考えようということでPerfomance Development制度を導入した」と説明する。

 全社員のPCやスマートフォンにチャットのようなPDツールを導入し、上司や同僚、部下から気づき(インサイト)をタイムリーに共有できるようにしたという。「すべての社員に対し、自分に対する気づきが入ってくる状態にした。それを活かすも殺すも本人次第だが、本人の気づきが一番育つという考え方だ。さらに相手にメッセージを送る際に、Continue/Considerという項目を選ぶ必要があるが、導入当初はContinueが非常に多く、最初はConsiderを送りにくい風潮があった。実際、私も最初にConsiderが来たときはムッとしたが、よくよく考えると、社員が私のことをこんなにも考えてくれているということが分かってお礼をした」と苦笑交じりに語る。

 同社では上司との面談も年1回から最低月1回に頻度を上げ、これまでの社員レーティング制度「9-block」を廃止するなど、若い人にとって働きやすい環境を整えるのに腐心しているという。

 「GEはまだまだ変革の途中だが、現会長兼CEOのジョン・フラナリーが『Our Future is Digital』と言うように、GEの未来はデジタルと共にあるということだけは決まっている。これからの新しい世界で勝ち組になるためには、今までのようなハードウェアのテクノロジーだけに頼っているのはダメで、それに付加価値を付けて、お客さまの結果につながるようなソリューションを提供するのが大事。そこで差別化を図って勝ち組になるという方針をこれからも続けるために、今後もデジタルの分野に投資をし続けて、新しい時代の新しいGEを作っていく」と熊谷氏はまとめた。