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絶滅種サーベルタイガーDNA分析に初成功 氷河期化石からクローンは可能?

2017/11/6(月) 14:00配信

THE PAGE

太古DNAからのストーリー

 この研究で鍵となりそうな重要なデータ、そして興味深い考察をここにまとめてみたい。

 まずサーベルタイガーにおいて初めてmDNAがみつかり、その分析結果が発表された。しかも2つの属「スミロドンとホモセリウム」の比較も行われている点に大注目だ。この両者は以前から部文骨格化石や標本の見つかる時代や場所などから、近縁の可能性が指摘されてきた。そして今回のmDNAデータは、この両者の「近縁仮説」をしっかりと裏付けているそうだ。(普段骨格を相手に格闘している古生物学者にとって、遺伝子データのサポートがあるのは、何ともうらやましいかぎりだ。)

 スミロドンとホモセリウムは、分子時計の手法にもとづき、進化上「約1800年前に分岐した」と推定された。こうした具体的な数字も化石骨格だけのデータからは、なかなか分かりにくい。

 化石骨格や骨の標本に基づき、ホモセリウムはこれまでに15種近くが記載されてきた。しかしmDNAのデータにもとづき、研究チームは「単一種の可能性が高い」アイデアを提案している。この事実はホモセリウムがヨーロッパから南北アメリカ大陸をまたいで、比較的短期間に長距離を移動した可能性に結びつく。

 はたして「どうして(Why)」サーベルタイガー達は、氷河期の間、これだけ長い距離を移動する道を選んだのだろか? 餌となる獲物を求めてか? それとも他の肉食動物(スミロドンやオオカミ、トラ、ライオンなど?)との競争を避けるためだったのか?それともただの偶然だったのか?

 こうした今回の研究における一連の発見は、サーベルタイガーの進化パターンを探求する上で、さらなる興味深い問いかけをもたらしてくれるので重要といえる。

 そして、サーベルタイガー達はどうして氷河期の終末 ── 約1万1千年前 ── を境に、その姿を化石記録から永遠に消失させたのだろうか? トラやライオン、チーターなど他の大型のネコ科の仲間のいくつかは、今日まで生き延びてきたにもかかわらず。

 そしてもう一つ、太古DNA研究に関して興味深い問いかけがある。はたしてサーベルタイガーの「クローン個体」を誕生させることは可能なのだろうか? 研究論文において、この件に関してはまるで触れられていない。先述のペイジュマンズ博士に、不躾も承知で直接尋ねてみた。(むくむくと好奇心の虫がいつも私の胸の中にしゃしゃり出てくる。)

 博士からは「No」というシンプルな返事がかえってきた。

 ペイジュマンズ博士がいうには、ミトコンドリア(=細胞における小細胞器官の一つ)の遺伝子情報(mDNAのデータ)だけでクローン化を実現させることは難しいということだ。細胞の「核」における全ての遺伝子情報が揃えば可能性がある。しかし今のところ、博士の手元にあるサーベルタイガーのデータだけでは、遺伝子の欠損部分があまりに大きすぎるそうだ。

 もしかして(あくまで理論上)可能性として、現生のトラやライオン(それともイエネコ?)のDNAデータをもとに、欠損部分を補充してクローンを誕生させることが将来できる可能性があるかもしれない。しかしこうして研究室で生み出されたモノを「サーベルタイガーと呼んでいいのだろうか?」こうした意味深いコメントも返ってきた。(あの立派なするどい犬歯は、人為的に創造することなど不可能な代物なのかもしれない。)

 おそらく化石記録において一度絶滅した種は、どのような技術を用いても、完全に復活させることなどできないのかもしれない。何千万年、何億年というヒストリーを経て、そして太古の様々な特定の環境において登場したものを、現在に再び甦(よみがえ)らすことなど不可能なのかもしれない。

 氷河期の動物のDNAでさえその多くが失われて保存されていない。中生代の恐竜の復元など、所詮、夢物語なのではないだろうか?

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最終更新:2018/10/1(月) 22:57
THE PAGE

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