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東芝の社員は悪くない トップが人事を間違えると、会社はもたない

2017/11/6(月) 13:00配信

ニュースソクラ

【ニュースソクラ編集長インタビュー】『東芝の悲劇』著者、朝日新聞記者の大鹿靖明氏に聞く

 東芝の先週の臨時株主総会で東芝メモリーを日米韓連合へ売却する議案が了承されたが、再建への道のりはまだまだ続く。日本を代表する大手電機メーカーがなぜ粉飾に手を染め、米原子力大手の巨額買収に突き進んでしまったのか。
 『東芝の悲劇』(幻冬舎)を9月に出版した朝日新聞記者の大鹿靖明氏に聞いてみた。折から、東芝事件の主役のひとり西室泰三元社長が10月に亡くなっている。

 ――本書を読むと、西田厚聰氏が社長になるためにパソコン部門を黒字にしたくて、粉飾のために田中久雄氏が編み出したバイセル取引を容認した経緯がはっきり書かれています。さらに、社長を西田氏から引き継いだ佐々木則夫氏は東芝全体の業績をよくするために、是正を求める部下を無視し、むしろ粉飾に拍車をかけ、損失が膨らんでいきます。
 そのありようは明確です。これほど3社長の関与がはっきりしているのに、証券取引等監視委員会が告発できないでいるのはなぜでしょう。

 要するに意気地がないのだと思います。佐渡賢一委員長(当時)はやる気満々だったのですけれども。

 テクニカルには西田氏と佐々木氏の「共謀」という構図を作り上げようとしたのに無理があったのではないかとは思います。両氏は対立していましたからね。共謀説をとらないと、粉飾を始めた西田氏が立件対象から外れてしまうから、そうしようとしたのでしょうが。

 時効や証拠が少ないなど西田氏を立件するのは難しい面があって、共謀で一連托生にしようとしたのには無理がありました。しかし、西田氏を外してしまうと、もともと、粉飾を始めたのが西田氏ですから不公平だという問題があったように思います。

 ――森信親金融庁長官が関心がないというのが伝わったのや、安倍政権も嫌がっていたのではないかと本書では書いているところがありますね。

 森金融庁長官も関心がないというのを聞いてしまうと、金融庁出身者はなかなかやる気になれないということはあったのでしょう。

 ――東芝を取材するようになったのはいつですか。

 ちょうど20年前ですね。朝日新聞経済部で電機業界を担当したのです。西室さんが東芝の社長1年目でした。

 ――当時は有能な経営者と見ていたのですか。

 それまでの電機メーカーの経営者と比べると開明的に見え、海外の要人と英語で流暢に会話できる点でかっこよく見えました。人当たりも良いし、熱心に自宅に通うと、情報をリークしてくれたりする。社長就任当初からそうだったわけではないでしょうが、だんだんに記者の手なづけ方、あしらい方を学んでいったのではないでしょうか。

 ――本書の中では西室氏はメディアを社内求心力を高めるために使っていたと指摘しています。ところで、西室氏のおかしさに気づいたのはいつごろですか。

 おかしいなと思い始めたのは当時のスタープレーヤーを外す変な人事をするようになったからです。パソコン部門では販売畑の西田さんなどより技術畑の溝口哲也さんのような人が功労者だったのに、外していきます。溝口さんがホントはダイナブックを開発した人でした。

 森健一さんという日本語ワープロを始めたすぐれた技術者出身の幹部も外してしまいます。重電部門のトップだった宮本俊樹さんにしてもそういうことが起こりました。要するに、自分より輝く人を外していく。そこが西室さんには顕著でした。嫉妬心だったのでしょうね。

 業績も社長をやっていた4年間はずっと右肩下がりでした。同じ時期に日立も三菱電機も大きな赤字を出したので相対的には東芝がよく見えましたけれど、西室さんが社長時代の新規ビジネスは全部失敗に終わっています。経営者としては成功したものがありません。

 人柄がいいし腰が低いし、記者から見るといい人なのだけれど、冷静になって検証してみると、経営者として成功したものはあまりないのです。当時担当者の間では次の社長と目されていた森本泰生さんも外されてしまい、誰も社長になるとは思わなかった岡村正さんを社長にしました。

 ここで事実上の西室院政が始まっています。西室さんは会社を利用して財界活動、立身出世をしたというところがあります。

 ――本書は西室さんのおじいさんの代、山梨県の紋付羽織をつくる会社を経営していたところから記しています。つまり西室氏のルーツから調べていますね。若い時には大病もしていますね。

 多分、東大受験の失敗と大病がきっかけになって彼特有の上昇志向が形成されたのではないでしょうか。

 彼自身、死んだときにここに西室がいたんだと周りの人に思い出してほしい、そのために仕事をしているんだと語ったことがありますが、彼が集めた綺羅星のごとき肩書はそんなモニュメント作りだったのかなと、肩書コレクターといわれるような執着心の原点はそこにあるのではないかと思います。

 ――もう1人の主役ともいえる西田さんはどうですか。

 西田さんはインタビューするとわかりますが、ケインズだ、カントがどうだと自分を飾るために学識をやたらと開陳するのです。今にして思うと、特異なキャリア、東大の大学院で哲学を学び、留学生のイラン人に恋してイランに渡り、現地採用からのし上がっていく、と言うストーリーさえも彼を目立たせる材料に使われていました。

 西田さんには、大きく分けると3つ問題があって、一つ目は、社長になるときにパソコン部門で粉飾のスキームを作ったことです。粉飾の原点を生み出したのです。

 二つ目は米国の原発メーカー、ウェスチングハウスを無謀な高値で買ってしまった。

 三つ目は、自分が後継者指名した佐々木さんとぶつかり、内ゲバのようなことになってしまったことです。東芝の最大の戦犯は西田さんだと思います。それに自分の狭い親分子分の関係から副社長を多数選んでいます。

 第三国際事業部という自身の率いた狭いところばかりから幹部を選んでしまいました。そして、究極は、田中久雄氏という言う粉飾手法を編み出した人間を社長にしてしまいました。

 秘かに行われていた粉飾を大胆に拡大していったのが、佐々木さんです。

 西田氏のときの粉飾などはかわいいもので、ちょっとごまかすために使っているのですが、佐々木氏の時代になるともはやもう明らかに異常なわけです。売り上げよりも利益が大きいと言うような破壊的な状態になりました。

 諫言されても全く聞く耳を持たない。むしろそれに対して、バインダーを投げつけたりボールペンをダーツのように飛ばしたり。取材で会う佐々木さんは明るい朗らかな人だったが、社内で見せる顔は全然違いました。

 原発事故の後も自らが原発出身であるだけに意固地になってしまって、軌道修正をするタイミングを失いました。西室、西田、佐々木という3人にはそれぞれに問題があり、東芝の悲劇への責任があるのです。

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最終更新:2017/11/6(月) 13:00
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