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宮原知子 世界を見据え四大陸の頂に立った“マイルストーン”『ため息』~フィギュアスケート、あのとき~ Scene#4

11/6(月) 18:00配信

VICTORY

思い出のシーンを伝える連載第4回目は【宮原知子2016年四大陸選手権FS(フリー)】。全日本選手権3連覇中の宮原知子は、ジュニア時代から頭角を現し、熾烈な戦いが繰り広げられている日本女子を牽引している。宮原が初めて国際スケート連盟のチャンピオンシップス(各国代表戦)で優勝したとき、それが2016年四大陸選手権だ。(文=Pigeon Post ピジョンポスト 尾崎茉莉子)

それまでも完璧な演技を幾度となく揃えてきたが、世界の大舞台では頂点にあと一歩届かないことが続いていた。2016年四大陸は、自身の強みが存分に発揮され、かつ優勝という記録に残る結果が伴った、スケート人生の“マイルストーン”になる試合と言えるだろう。優勝への期待を背負い、それに応えてみせた宮原の名演技を振り返る。

日本が誇る「ミス・パーフェクト」がチャンピオンになった日

ソチ五輪前後から女子シングルがますますレベルアップしていく中、宮原はミスが限りなく少なく、完璧な演技を何度も揃えられることで評価を上げていった。

2012年全日本でジュニアながら鈴木明子をしのぎ3位に入り、2014・15年全日本連覇、2015年世界選手権に初出場で2位と、着実に好成績を収めていった宮原。一昨季頃には、同じくパーフェクトな演技を誇ったかつての世界女王ミシェル・クワン(アメリカ)になぞらえ、「ミス・パーフェクト」とも呼ばれ始めていた。四大陸では2014・15年と2年連続で2位。「今年こそ優勝を」。周囲からの期待は自然と高まっていた。

豊かな表現とスタミナの強さ、日頃の練習成果が発揮されたFS『ため息』

SP(ショート)は、シーズンをかけて磨きあげた『Firedance』。情熱的な調べに乗って、自身にとって新境地の演技をノーミスで魅せた。当時の自己ベストを出して首位に立ち、初優勝をかけたFSの演技に大きな注目が集まった。

FS『ため息』には、宮原自ら「初恋」のテーマを掲げていた。当時は17歳で、少女から大人の女性になる変わり目。「初恋」の感情は、幼少期から練習に励んできたスケートそのものに向けられたものだ。大好きなスケートへの想いを表情にも込め、可憐かつ情感豊かな、この時期にしか見られない感性をリンクいっぱいに描き出す。

冒頭は3ルッツ+2トゥループ+2ループの3連続ジャンプ。宮原は、演技開始から闘志を感じさせた。前の試合では回転不足になることもあった2ループで、回転十分に降りてくるどころか、両手を上げてみせたのだ。通常両脇を強くしめて跳ぶジャンプの、しかも3つめで両手を上げることは決して容易ではない。それは、ジャンプの回転不足に苦しんできた宮原にとって、弱点と向き合い克服すること以上にチャレンジングだっただろう。

流れの中で次々と正確にエレメンツをこなしていく宮原。しかし強さは正確さだけではない。一つひとつの技に工夫が凝らされ、始まりから終わり、技と技の繋ぎ目まで神経が行き届いている。さらに、曲調に合わせてスピンをほどく動き、しなやかな腕から指先にかけての表現、ステップシークエンスやジャンプ後の多彩なターンは、宮原の確かな演技をより鮮やかに見せている。

宮原の四肢は自由自在に操られ、やわらかくもダイナミックなラインを見せる。身長151cmの宮原だが、氷上ではまったく小柄には感じられない。日頃の練習から、自身を氷上で大きく見せることを意識しているという。身体が柔軟に伸長しているかのようだ。

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最終更新:11/6(月) 20:43
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