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福島第一原発事故から6年超 復興は進んでいるのか?

11/9(木) 14:00配信

ニュースソクラ

「戻らない」を決める被災者達

 東京電力福島第一原発事故から6年8か月。原発周辺の市町村の復興は進んでいるのか。

 原発事故により、沿岸部など福島県内12市町村は、年間被ばく量20ミリシーベルトを超える恐れがあるとして避難区域に指定された。遠隔地への避難が一気に進み、原発周辺からは人が消えた。

 福島第一原発の1号機から4号機の所在地である大熊町は、福島原発事故により町の9割以上が帰還困難区域に指定され、ほぼ全人口にあたる約1万人の町民が、会津若松市、いわき市などに避難中だ。

 これに対し、国は帰還を急ごうとしている。

 国の事業で除染作業が進められ、2015年6月、政府は帰還促進政策を打ち出し、帰還困難区域を除いた区域の避難指示を平成29年3月までに解除する方針を示した。

 復興を急ピッチに進める理由のひとつは、3年後に控えた東京オリンピック・パラリンピックにある。招致のときに掲げた「復興五輪」を成功させ、国内外にアピールしたい意図がみてとれる。

 こうした復興は、被災者の意向を反映しているのだろうか。

 大熊町の町民の間では、「税金が無駄遣いされている」との声が上がっている。
 いまだ帰還時期のめどがたたないにもかかわらず、復興の名目でインフラ整備、いわゆるハコモノ建設が次々とはじまっているからだ。

 今年3月には、大熊町の役場新庁舎を総事業費約31億円で建設する計画が発表されている。

 2015年3月、大熊町は、震災前には町民の3.3%しか住んでいなかった大川原地区を復興拠点に据えた。
 もともと病院や役場など町の主要機能や多くの住宅が存在する地区はJR常磐線大野駅に近い東部だったが、その一帯の除染作業ははかどっていない。
 そのさらに海側に広がる土地には、福島県内の除染廃棄物を30年保管するための中間貯蔵施設が建設される予定だ。
 南部の大川原地区は町内でも放射線量が低く、除染はすでに完了していることなどから、ここを復興拠点の足がかりにする計画が策定された。

 この復興拠点計画に基づき、2015年春、大川原地区に東京電力福島第一原発の従業員用の給食センターが開設された。
 2016年1月には太陽光発電施設が竣工、同年8月には東京電力社員の独身寮が完成。
 廃炉作業に携わる東電グループの関連会社も進出し、2016年9月には東京エネシスの支社、2017年4月には東京パワーテクノロジー新事業所が開設した。

 そして、この春に発表されたのが、新庁舎の建設だ。
 大川原地区に建設する町役場新庁舎は、2018年度に着工し、2019年3月の完成を目指す。

 大熊町は震災後、町民の多くが避難した会津若松市、いわき市、郡山市に役場の出張所が設置された。

 2016年4月からは大熊町に大川原連絡事務所が開設し、4か所に役場機能が分散している。
 復興のシンボルとなる新庁舎は、大川原連絡事務所がある場所に建設される。

 今年3月に発表された「大熊町新庁舎整備基本計画」によると、延べ床面積は約4800平方メートルで鉄筋コンクリートの2階建て。再生可能エネルギーを導入し、自然環境と調和した木調デザインで、交流スペースも確保する。自然災害や原子力災害に備えて、放射線検査室や食料の備蓄倉庫などの防災機能の充実もはかるという。

 総事業費の31億円は、経済産業省の電源立地地域対策交付金を充てる。

 大熊町のホームページによると、新庁舎建設と町道東67号線整備の2事業を実施するための財源確保に電源立地地域対策交付金資金整備基金が造成され、25億8千620万円が交付金相当額となっている。

 福島民報の記事によると、6月22日に大熊町の渡辺利綱町長は、「2018年中に大川原地区(居住制限区域)、中屋敷地区(避難指示解除準備区域)の避難指示解除と、両地区の町民の帰還開始を目指す考えを明らかにした」という。

 渡辺町長は「大川原地区などに家を新築している町民もいるため、できるだけ早い帰還に向けて課題に取り組みたい」と語り、大川原地区の役場新庁舎完成予定の来年3月に合わせ、町民の帰還に向けてインフラや医療福祉、災害時などの連絡通報体制の構築に取り組むという。

 大熊町が帰還へ道筋をつけようとしているのに対して、大熊町民の復興に対する意識は現実的だ。2015年8月に行った最新の第7回町民アンケ―ト(5331世帯対象、回収率50%)の「帰還の意向」では、「町へ戻りたい」が11.4%で、「戻らない」が63.5%、「判断がつかない」が17.3%だった。

 「わずか1割の帰還希望者の町に31億円の新役場が必要なのか」との疑問が、避難というより移住に近くなっている町民たちからも漏れている。避難生活が長期化し、若い世代のなかには、町外に家を建てて新たな生活をはじめた人も少なくないという。

 アンケートに戻ろう。第4回(2013年)分から比較すると、「戻りたい」は増えることがない。代わりに、「判断がつかない」から、「戻らない」へのシフトだけは確実に増えている。

 避難指示解除は、避難している人を帰還が可能になるのと裏腹に、国の住宅無償提供支援や、東京電力の精神的苦痛への賠償(月10万円)などの打ち切りや縮小を意味する。

 収入減であるだけに、ある程度分かっていたこととはいえ、切実な問題。それだけに、復興資金が箱物になることに、感情的な反発も出やすいということだろう。

■木村嘉代子(ジャーナリスト)
1990年から、女性誌、情報誌等のフリーライターとして活動。約7年間ロンドン、パリで現地ライター。2000年以降、札幌、東京を拠点に、戦争責任、原発、アイヌ民族など社会問題を取材し、雑誌、機関誌、英字新聞等に執筆。

最終更新:11/9(木) 14:00
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