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全国でUターン者のトラブル多く 「村八分」で弁護士会が是正勧告も 感覚のギャップに起因

11/9(木) 10:54配信

西日本新聞

 大分県弁護士会は、同県北部の山間部の集落で母親の介護のためUターンした男性(68)が自治区への加入を認められず、行政広報誌の配布や行事の連絡も拒絶されるなど「村八分」のような扱いをされているとして、集落自治区に是正を勧告した。同会は「農村に残る明らかな村八分。男性に法的落ち度はなく人権侵害に当たる」としている。

 勧告書などによると、男性は2009年6月に兵庫県から出身地の集落(男性を含め14世帯)に戻った。介護していた母親は11年12月に死去。男性は営農を始めたが、農地や水路整備のために国から交付される補助金の分配に疑問を抱いて市役所に問い合わせるなどし、集落内で13年3月ごろからトラブルになった。

 自治区は同年4月に会合を開き、当時男性の住民票が兵庫県のままだったため「住民票がない」との理由で加入を認めず、広報誌の配布と行事連絡をしないことを決めた。男性は14年12月に住民票を兵庫県から移したが、自治区側は「全員の賛同が得られない」として加入を拒み続けている。

「名誉を傷つけられ、孤独だった」

 男性は13年9月に弁護士会に人権救済を申し立て。弁護士会が文書で照会するなどしたが、自治区側が姿勢を変えなかったため1日付で是正勧告したという。

 男性の加入を認めなかった自治区の当時の区長(65)は「弁護士会には現地調査をお願いしたが来てくれなかった。集落内で男性が住民とさまざまなトラブルを起こしていたという事情も知ってもらいたかった。彼にも集落の和というものを分かってほしい」と説明。勧告には「法律に抵触するのなら男性の加入を認めないといけないが、他の住民が自治区を離れる可能性もある」と心配する。

 弁護士会は勧告を公表した理由について「近年、農村部への移住が増えており、同様のケースが起きないよう啓発の意味も込めた」としている。

 男性は「名誉を傷つけられ、孤独だった。陰湿ないじめが人権侵害と公に認められうれしい」と話し、自治区側は異議申し立てはしない方針で、今月中旬にも対応を協議するという。

行政のアフターケアこそ重要

 稲垣浩・国学院大准教授(地方自治論)の話 出身地とはいえ都市生活に慣れた移住者と、昔ながらのおきてが残る農山村住民との感覚のギャップに起因している。自治体は移住するまでは面倒見が良いが、それからは知らぬ顔というパターンも多い。Uターン者のトラブルも全国で多くなっている。行政は両者の溝を埋めるようなアフターケアこそ重要だ。

=2017/11/09付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞社

最終更新:11/9(木) 15:04
西日本新聞