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“訳あり”販売 「もったいない」―気象災害の農産物 産地応援へ 消費者も「共感」

11/10(金) 7:01配信

日本農業新聞

 台風や降ひょうなど気象災害の影響で規格外となった“訳あり”農産物を「消費者に届けたい」と、ネーミングを工夫したり、スーパーと連携して台風被害の状況を店頭で伝えて販売したりと、JAなどが販路拡大に取り組んでいる。今年は台風や豪雨被害が各地であったが、表面に傷があっても中身は一緒。農家の手取り向上に向け理解を求めている。

被害伝え 購買呼び掛け スーパー、行政、業者

 傷ついた果実を行政、スーパー、JAが連携して売り切った例や、原料として無駄なく使った例は今年も相次いでいる。
 鳥取県では10月、特産の梨が台風21号の暴風で被害を受けた。平井伸治知事は、被害果の購買を県民に訴えた。販売したのは、県と災害対策で包括提携協定を締結しているイオンリテール。JA鳥取いなばの贈答用大玉梨「王秋」を鳥取、島根両県の7店舗で販売した。

 店頭やホームページで客に台風被害を伝え、大玉を1個300円前後と通常の半額程度にし、計3・8トンを売り切った。イオンは「農家を後押ししていく」と話す。

 神奈川県厚木市のビールメーカー、サンクトガーレンは、9月の台風18号で傷が付いた長野県JA上伊那産のリンゴを使ってビール「アップルシナモンエール」を製造した。来年3月まで首都圏の大手百貨店、スーパーなどで販売する。

 同社は2007年から同JAの規格外リンゴを毎年約3000個使い、同ビールを4万~5万本製造してきた。今年はJAから仕入れる原料の7、8割が台風で傷ついたリンゴだった。同社は「傷があっても品質は問題ない。少しでも支援になればうれしい」と言う。

 JAでは台風でリンゴの全収穫量約2500トンの1割が落果し、廃棄せざるを得なかった。「シナノスイート」約20トン、「ふじ」100トンが傷ついた。120トンを複数の飲料メーカーが救った。JA営農部は「加工メーカーのおかげで無駄にせずに済んだ」と感謝する。

命名「合戦りんご」ひょうで傷、長野・JA信州うえだ

 長野県のJA信州うえだは、ひょう害に遭ったリンゴを「合戦りんご」の名前で販売し、生産者の手取り確保に全力を上げる。地元ゆかりの戦国武将、真田幸村のイメージに重ねて、ひょう害という「合戦」を生き残った“勇敢な”リンゴとして名付けた。ステッカーや災害の経緯などを伝えるちらしを作成し、消費者に理解を呼び掛けている。

 県内では今年5月31日の夜に広い範囲で降ひょう被害が発生。JA管内では、大きいもので直径2センチのひょうが15分降り続いたという。県のまとめでは上田市や東御市で144ヘクタール、約4800万円の被害があった。

 幼果期にひょうが当たったリンゴは、生産者がその後も管理を続け収穫を迎えた。くぼみなどの傷はあるが、JAは「味に問題はない」と消費者に理解を求めながら、販売に力を入れる。

 「合戦りんご」は、パッケージに、真田氏の「六文銭」や「赤備え」をデザインしたオリジナルのロゴマークを描いたステッカーを貼ってPR。ひょう害を説明するちらしを入れて包装する。JAは商標登録の手続きをしている。

 主に、JA直売所や各地の物産展などのイベントで販売。例年10カ所だったイベント出店を50カ所に増やし、販売に心血を注ぐ。加工用に仕向けると10キロ数百円だが、1箱(10キロ)2600円で販売している。これまでに東京や埼玉、静岡などに出向き、350万円の販売につなげた。また、行政と連携し、ふるさと納税の返礼品や、学校給食の食材としても供給する。

 JAの坂下隆行組合長は「(災害後も)諦めずに栽培を続けた生産者のために、汗をかいて販売していきたい」と力を込める。(齋藤花、染谷臨太郎)

日本農業新聞

最終更新:11/10(金) 7:01
日本農業新聞