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畑で育つエコ燃料 エリアンサス 「JES1」育成 放棄地活用→ペレット化→CO2抑制

11/11(土) 7:00配信

日本農業新聞

 畑でエネルギーが作れる――。栃木県で、熱帯植物の一種、エリアンサスをペレット化し燃料として使う試みが進んでいる。二酸化炭素(CO2)排出量が減らせる上、手をかけずに耕作放棄地を活用できるのも大きなメリットだ。農地保全とエネルギー自給、地球温暖化対策を一度に結び付けられるとして、地元は期待している。

成長早く栽培容易 栃木県さくら市 実証試験が着々

 植物由来の燃料は、木材を圧縮・加工した木質ペレットが代表的だが、近隣で原料が手に入らないと製造は難しい。一方、エリアンサスは畑ならどこでも育つ。一度植えれば永年で茎や葉を収穫し、燃料にできる。

 農研機構などは2013年、世界的にほとんど注目されていなかったエリアンサスの国内栽培に向く品種「JES1」を育成。燃料としての品種では世界初だ。民間企業や栃木県さくら市が着目し、8ヘクタールの栽培と、市の施設でペレット燃料を使う実証を開始。地下に眠っているCO2を地上に排出することになる化石燃料と異なり、地上のCO2を増やさない。

 「木質ペレットの発電所が次々とでき、木材調達は難しくなりそうだが、エリアンサスを育てれば確実」と強調するのは、栽培やペレット製造を実証するタカノ。造園や一般廃棄物処理を手掛ける同社は、今年から製造に本格参入した。

 13年に耕作放棄地5ヘクタールに定植したエリアンサスは、3年目には1ヘクタール当たり20トン近い収量を上げられるまでに成長。未成園の3ヘクタールを含め、現在8ヘクタールを栽培する。うっそうと茂るが、人家や市街から遠い農道沿いに植えてあり、市民生活への影響はないとみる。

 飼料作物の収穫に使う刈り取り機で春先に収穫。春に雑草防除と追肥をすれば、手をかけずに栽培できることも分かった。ペレットは、一般的な杉の木質ペレットと同等の発熱能力がある。

温泉施設に供給

 今年4月、さくら市の温泉施設で利用を開始。シャワー設備に使う年間102キロリットルの灯油を210トンのペレット燃料で置き換える計画だ。現在は生産量が足りず半分だけだが、将来的に全量を切り替える。

 市が期待するのは、畑の耕作放棄地対策だ。市内の耕作放棄地は、17年現在16ヘクタール。作業体系が効率化している水田と異なり、対策に頭を悩ませていた。市産業経済部は「高齢農家にも取り組みやすい。集落営農組織などに栽培を呼び掛けたい」と期待する。

 CO2排出量の削減効果も大きなメリット。地方自治体には国が策定を義務付けるCO2削減目標がある。同施設ではエリアンサスの燃料で102キロリットルの灯油をペレット燃料で置き換えれば、施設の5年間の目標の8割に当たる255トンのCO2を削減できる。「CO2削減と耕作放棄地という両方の課題を解決につなげたい」(市産業経済部)と期待する。(石川大輔)

<ことば> エリアンサス

 東南アジア原産のイネ科の大型の多年草で、サトウキビの仲間。生育が旺盛で、春から秋までに草丈3、4メートルまで育つ。農研機構の「JES1」は1ヘクタール当たり22~25トンと大量の茎葉が収穫でき、立毛で乾燥するなど燃料に向く。

日本農業新聞

最終更新:11/11(土) 7:00
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