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ISDN終了「24年問題」 EDI対応費は5000億円

11/13(月) 16:06配信

日刊工業新聞電子版

■伝送遅延問題が発覚

 NTT東日本・西日本が2024年1月に固定電話をIP網に移行する。これに伴う総合デジタル通信網(ISDN)サービス終了でデータ通信が利用できなくなったり、加入電話を使った通信に遅延が発生したりして、企業間取引に影響を与えることが懸念されている。産業界では企業への周知や代替策の検討など「24年問題」への対応が急務となっている。

 「産業界にとっては大ごとだ」―。ITベンダーで構成する情報サービス産業協会(JISA)EDIタスクフォースの藤野裕司座長はこう訴える。

 IP網移行により現行の一般加入電話網(PSTN)で提供するNTT東西のISDNサービス「INSネットディジタル通信モード」が終了する。加入電話の通信は移行後も利用できるが、IP化に伴うデータの変換処理が必要で「伝送遅延が生じる」(同)ことが分かった。

 いずれも企業間の取引データをやりとりする電子データ交換(EDI)などのインフラネットワークで、商品の受発注や部品の調達など用途は幅広い。JISAによると、自動車や家電、流通、化学業界などEDIの利用企業数は30万―50万社(ISDNと加入電話)。対応するには新しいシステムを構築せざるを得ず「代替システムの導入費は全体で3000億―5000億円かかる」(仲矢靖之副座長)という。

■固定電話苦戦続く NTT東西が決断

 NTT東西はIP化に向けデータ通信の代替策を示している。IP変換装置を使わずアクセス回線を光回線などでIP網につなぐ方法だ。「IP―VPN」(閉域網)や「ひかり電話データコネクト」(帯域確保型)を活用し、ISDNサービスと同等の環境を実現する。対応が間に合わないユーザーには既存機器に変換装置を用いた補完策で、27年まで提供する。

 これらの方法はセキュリティー性や通信速度の帯域保証が必要だったり、当面の対策として利用するユーザーには有効。だが、用途によってISDNサービスに比べ費用対効果が低かったり、通信の遅延がネックになりかねない。

 複数の企業間で取引するEDI用途にはハードルが高く、多くの企業でインターネットを活用した方法を採用する見込み。NTT東西はこれを理解しており「ユーザーに合った代替サービス移行に向け引き続き協力していく」(NTT東の一ノ瀬勝美ネットワークサービス担当部長)。

 だが、ISDNサービスの利用が多い中小企業への周知は簡単ではない。そのため企業へのダイレクトメール(DM)発送や訪問、窓口の設置、新聞・テレビ広告などの施策を講じて訴求する。

 IP網に移行するのはPSTNを構成する中継・信号交換機が25年に寿命を迎えるため。莫大な投資で維持してもユーザーにコスト上昇分を転嫁できない。ユーザーに負担をかけず固定電話を利用できる環境を提供するため移行を決めた。

 NTT東西の固定電話契約数は約2000万契約と10年前の半減以下で収支は赤字。NTT東西にとってはIP網移行で投資を抑え、将来の維持コストを軽減する狙いもある。例えば中継・信号交換機に代わるルーターは汎用性が高く調達費削減につながる見通しだ。さらにNTT東の飯塚智営業企画部門長は「PSTNの知識を持つ人が減ってきており、ネットワークを保守する人的なコストを含めIP網の方が安上がり」とみている。

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