ここから本文です

“銭湯女子”増加の背景~20代の番台兼銭湯イラストレーターも誕生

11/14(火) 11:00配信

デイリースポーツ

 「銭湯は裏切らない」-。落語家の立川談志師匠が遺(のこ)した名言は今も生きている。東京都内にある銭湯の総数は1968年の2687軒(東京都生活安全課公衆浴場担当調べ)をピークに、今年10月末時点で565軒(東京都浴場組合)と、家風呂の普及などによって半世紀でかなり減ってしまったが、環境がどんなに変わろうとも、日本の文化として残り、新世代の経営者による新たな試みも目を引く。その中で“銭湯女子”が増えている理由を探った。

【写真】ミルク湯、果実湯に癒され…銭湯女子が求める決め手は美容と健康

 訪れた銭湯は創業1933(昭和8)年の高円寺「小杉湯」。日本たばこ産業とのコラボで「銭湯(1010)の日」の10月10日に1日限りの無料入浴イベントを行ったのだが、夜10時頃、足を運ぶと、屋外で待つ10人ほどの若い女性に遭遇した。男性はいない。なぜ、女性は銭湯に並ぶのか。戦後の経営者三代目・平松佑介さん(37)にうかがった。

 「滞在時間が女性の方が長いことによる回転率だと思います。この日の来場数は男性642人、女性406人。400人以上の女性客が来られたことは銭湯としては異例なので、銭湯女子が増えているのは間違いないと思います」と平松さん。平日の女性客は概算で約120人となり、火曜だった「銭湯の日」は3倍以上の盛況だった。なるほど場外で待つ人がいたわけだ。

 銭湯女子の特徴は「美容と健康につながる滞在時間の長さ」にあるようだ。常駐スタッフの塩谷歩波(えんや・ほなみ)さんは「自宅ではできない広い場所でスキンケアにじっくり時間をかけられるのが魅力だと思いますね。値段も(スパなどより安価な)460円(東京都の大人入浴料金)。若い女性にとってはコスパがいいんですよ」と指摘した。

 塩谷さんは90年生まれの27歳。早大建築学科を卒業して設計事務所に勤務していたが、過労で休職中、医師の勧めで通った銭湯で心身ともに回復した体験から人生が変わった。

 「銭湯に恩返ししたい」。その思いで昨年11月から銭湯の内観やひと模様を描いた「銭湯図解シリーズ」をSNSに投稿したことが縁で、今年から小杉湯に転職した。番台に座って接客し、店内のデザインも担当。WEBメディア「ねとらぼ」でのコラムに加え、10月からはエンヤホナミの筆名で月刊誌「旅の手帖」(毎月10日発売)で約100年続く全国の老舗銭湯をイラストと文章で紹介する見開き2ページの連載「百年銭湯」を始めた。

 銭湯業界で“新風”を起こし始めた塩谷さん。「日本人の9割は『銭湯って家庭風呂の延長でしょ』と思われているかもしれませんが、実は違っていて、レジャーであり、健康を守るものでもあるので、ただのお風呂ではないんですね。私自身も体を壊して銭湯で治した経験から、銭湯って体にいいんだよということを発信したい」。銭湯のあるライフスタイルを提唱した。

 (デイリースポーツ・北村泰介)

最終更新:11/14(火) 17:52
デイリースポーツ