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日産・スバルの無資格検査、販売店にも余波 問われる「現場の強さ」

11/14(火) 7:30配信

SankeiBiz

 ■「現場の強さ」立て直し急務

 経営破綻に至ったタカタの欠陥エアバッグ問題に続き、神戸製鋼所、日産自動車でも発覚したモノづくりの不正。高い品質を武器に国際競争を勝ち抜いてきた日本の大手製造企業がなぜ自らのブランドを傷つける不正に手を染めることになったのか。その波紋と背景に迫る。

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 ◆顧客基盤失う懸念

 10月20日朝、東日本にある日産の販売店で、10人の営業担当者が慌ただしく顧客への電話対応に追われていた。

 「この度は、大変ご迷惑をかけております…」

 国内販売向け全車両の生産と出荷の停止という衝撃的な知らせがもたらされたのは前夜。9月に発覚した無資格検査問題の余波が販売現場にまで及んだ形だ。

 この販売店は問い合わせを受けてからの対応では不十分と判断し、先に購入者に連絡を入れ、説明し、謝ることを決めた。担当者1人の受け持ちは400~500人にのぼった。

 店で新車を買う人の約8割は日産に乗り続ける“リピーター”。出荷停止が日産の信頼に傷をつけることになれば、販売店として長期的な顧客基盤を失いかねない。「大変なことになった」。だれもが事態の深刻さを理解していた。

 この販売店は交通量の多い道路に面した好立地。小型車「ノート」やミニバン「セレナ」など人気車を展示し、9月まで好調なセールスが続いていた。日産全体でみても状況は同じ。エンジンで発電し、モーターを動かして走る「e-パワー」や、車庫入れ・縦列駐車を補助する機能などへの評判も上々だ。

 それだけに出荷停止のショックは大きい。10月の登録車の販売台数は前年同月比で52.8%減という壊滅的な状態。納車遅れによるキャンセルも「数百台の単位」(星野朝子専務執行役員)で発生したという。

 一方、この販売店では問題に関連したキャンセルは1件もなく、出荷が停止している間の受注減も、1割程度に抑えることができた。電話だけでなく、成約後に出荷停止となり、納車が遅れる顧客の自宅を訪れて頭を下げるなど、懸命の努力の結果だ。

 この販売店の40代の男性マネジャーは日産のモノづくりや商品力を信頼してきた。それだけに生産現場でのルール違反には複雑な心境だ。「もったいないし、残念。早くウミを出して、立ち直ってほしい」

 ◆法令守る態勢づくり

 「現場のコントロールが課題だ」。日産の西川(さいかわ)広人社長は今回の問題の要因についてこう話した。

 日産は現時点では、問題の原因が現場にあるとみている。販売拡大を進める中、現場が生産性を上げようとした結果、資格者だけが担当すべき新車製造の最終工程「完成検査」に無資格の検査員が携わることになった可能性が高いとの分析だ。

 ある日産幹部は「現場は速く、効率よく、安く、というモノづくりをしていた。でもルールを守れていなかった」と肩を落とす。

 日本の製造業を代表する自動車産業の原動力は「現場の強さ」だった。徹底して無駄を省き、緻密な部品管理を行うトヨタ自動車の「トヨタ生産方式」や、創業者の本田宗一郎氏が現場・現物・現実を重視したことに由来するホンダの「三現主義」などが好例だ。

 しかしそれはトップダウンではなく、ある程度、現場に裁量を与えることを意味する。製造ラインに携わる担当者の判断で創意工夫を進めたことが無資格検査につながったとすれば、“現場力”があだになったといえるのかもしれない。

 日産の次に無資格検査が発覚したのは「スバリスト」と言われる熱烈なファンを抱えるSUBARU(スバル)だ。同社では無資格者が検査に携わることを促すような内容の社内規定があった。

 大崎篤・品質保証本部長は「30年ずっとこの仕組みでやってきたので、現場は違和感を覚えなかっただろう」と説明する。日産と異なり、原因は社内制度にあったとの見方だ。

 だが、経営と現場の両方があるいは声を上げず、あるいは気づかずに長期間、ルールに違反していたのは同じだ。ブランドイメージに傷を負った両社は2018年3月期の通期予想を引き下げるなど、業績にも影響が出た。

 両社は弁護士ら第三者を含む社内調査を実施しており、日産は今月中旬、スバルは今月末に調査結果と再発防止策を国土交通省に報告する。この問題の背景として、完成検査員の指名基準が会社ごとに違うなど、国の制度の曖昧さも指摘されているが、「ルールを守れなかったのは事実」(アナリスト)だ。

 両社は、創意工夫できる現場力を維持したまま、適切な経営による管理も及ばせ、法令を順守する態勢づくりを進める必要がある。それが、自動運転や電気自動車など、これまでとは次元の異なる競争に勝ち抜くための前提となりそうだ。

最終更新:11/14(火) 11:28
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