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献身的な姿勢を貫く“仕事人”ボイキン、自身の役割は「声を出して雰囲気を高めること」

11/14(火) 10:57配信

バスケットボールキング

 83-83の同点で迎えた試合終了残り1分6秒、勝利を大きく引き寄せる値千金の3ポイントシュートを炸裂させたのはルーベン・ボイキンだった。

 アースフレンズ東京Zがホームの大田区総合体育館で金沢武士団と顔を合わせた11月11日のB2リーグ第8節第1戦は、最大15点あったリードを相手にひっくり返される手痛い敗戦。第2戦も敗れれば連敗が「5」に伸びるという厳しい状況で、東京Zはインサイドプレーヤー2人がファウルアウトする窮地に陥りながらも、第4クォーターに31得点とたたみ掛けて白星をつかみ取った。勝利を決定づけたのは秋葉真司の3ポイントだが、その前のボイキンの3ポイントで精神的にも優位に立てたことは疑いようもない。13得点11リバウンドという数字以上に、その貢献度は高かった。

 プロ生活11シーズン目。日本でのキャリアは2012-13シーズンの当時bjリーグ所属の秋田ノーザンハピネッツから始まり、そのシーズンにはリバウンド王のタイトルも獲得しているが、スコアメークを求められることの多い外国籍選手の中では、決して高い得点力を誇るわけではない。今季15試合を消化した時点で、1試合平均得点9.6得点。2ケタ得点も6試合にとどまっている。それでもその存在が重宝される理由は、最後の3ポイントについて尋ねた際のコメントからもうかがい知ることができる。

「今日(12日)のゲームについてまず言いたいのは、ガードがしっかりトーンをセットしてくれたということだ。西山(達哉)がアグレッシブにゲームをスタートしてくれた。みんな自分を信じてシュートを打ってくれたし、ベンチから出た選手も自分の仕事をしてくれた。最後の3ポイントは、自分にもそういうチャンスが回ってきたから決めなきゃいけなかったんだ」

 自らの手柄よりもチームメートの働きを強調するところに、チームワークを最優先する献身性の高さが表れている。特に東京Zの場合、国籍に関係なくボールをシェアし、コート上の5人でシュートチャンスを作るスタイルを押しだしており、日本人選手の得点比率が非常に高い。その中でボイキンの役割は限定されたものではなく、状況に応じたプレーをそのつど選択しているという。

「自分が得点を狙いにいかなきゃいけない時もあるし、あるゲームではパサーにならなきゃいけないし、スクリーナーにならなきゃいけないゲームもある。いつも考えているのは、ゲームに必要な細かいことをやりきるということ。自分は『ボールをくれ』というタイプではないので、他の選手はやりやすいと感じてくれていると思うよ」

 組織的なプレーを好む日本では、ボイキンのような選手の存在価値は高い。日本のバスケットスタイルと自身のスタイルがマッチしているのかと思えるが、返ってきた言葉は少し想像とは違っていた。

「日本というより、このチームにすごくフィットしているんだ。誰か1人が何でもかんでもやってしまうチームより、個人ではなく『チーム』にフォーカスにしているチームのほうが僕は好きなんだよ。僕自身、日々の練習で向上していると思っているし、チームとしても細かいところを詰めていけばシーズンの終わりの頃にはすごくいいチームになる。今は5勝10敗だけど、『僕らはこんな成績のチームではない』と思える、そういうチームなんだ」

 斎藤卓ヘッドコーチも「リッチ(リッチモンド・ヴィルデ)とルーベンは、コーチ陣の意図をしっかりと理解してくれている。このチームのスタイルにすごく合った選手」と高く評価している。そして、ボイキンが自身の役割として真っ先に挙げたのがプレー面ではなく「声を出して雰囲気を高めること」。その献身的な姿勢とハードワーク、チームを鼓舞するリーダーシップを兼ね備えたボイキンが、東京Zの浮上のカギを握っている。

文=吉川哲彦

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