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巨匠でも若手に学ぶ姿勢 日米のティーチングの違い

11/14(火) 13:14配信

日刊スポーツ

 先日、あるきっかけでゴルフチャンネルの解説をしているレックス倉本氏と話をする機会を得た。現在はツアーの解説を精力的に行っているが、キャリアのスタートはプロゴルファーで、ゴルフチャンネルの解説の合間を縫って日本のシニアツアーの試合に出ることもあるという。そんなレックス氏と話をしていて日本にいながらあることを感じた。

●アメリカ人と話していて感じる垣根の低さ

 私自身、ライフワークとして暇を見つけてはアメリカに行き、多くの指導者からティーチングの技術や、スイング理論の最新トレンドなどを学んでいる。良いものをたくさん学び、それをたくさんの人に伝えてゴルフ上達に役立ててもらいたいと思っている。ゴルフスイングコンサルタントと名乗っているのも幅広い知識を有している自負があるためだ。だからティーチングの事で、何かわからないことがあればなんでも聞いてほしいと思っている。

 そんなことをする中で感じるのは、欧米のコーチは情報の共有に関してとても垣根が低い、という事だ。私が知りたいと思っていることや、考え方について聞きたい事があると丁寧に教えてくれる。「自分の知識や技術をかこって外には出さないぞ」という考え方はあまりないように感じる。なので、私も同じ知識レベルのコーチから何か質問を受けたりすれば、知っている限りのことを話すようにしている。

 レックス氏と話すきっかけも、私がバイオメカニクス(生体力学)で”地面反力”の研究を行うヤン・フー・クォン教授と一緒に活動している事を知って、「ちょっと詳しく教えてよ」という感じで電話で連絡をもらった事がきっかけだ。

●情報交換が新しい考え方を生む

 欧米のティーチング界ではピート・コーウェン、デビッド・レッドベター、ジム・マクリーンなど実績のあるベテランコーチがいまだに人気を博している。でもそれは「年配者が牛耳っている古い世界」という事ではない。

 彼らはこれまでに得てきた圧倒的な経験に加えて、常に新しいものを取り入れようと模索をし続けている。最新の計測機器や、バイオメカニクス(生体力学)などの分野の知識をいち早く取り入れる情報感度やスピード感は、若手コーチたちに負けていない。

 そんな彼らが非常に重要視しているのが、コーチ同士の情報交換だ。お互いに商売敵ではあるが、知識や経験値の高いレベル同士が意見交換や情報交換をすることで、常に新しい形を模索している。プロゴルファーのコーチというとても狭い世界で、ともすれば権力争いや派閥などという話にもなりそうなものだが、そういったつまらない話は聞いたことがない。

●アジア各国のレベルが上がる理由

 日本ではティーチングの歴史が浅いことから、コーチ同士のコミュニケーションはまだまだ多くない。しかしゴルフの発展途上国であるアジアの国々を見ると、若いコーチたちを中心に常に新しいものを取り入れようという空気があり、それが着実にその国のゴルフのレベルの底上げにつながっているという印象を受ける。欧米の最新のティーチングカリキュラムを受け、それをもとに仲間と議論したり、自らアレンジをして技術を普及させている。

 私自身も中国や東南アジアで行われるティーチングのカリキュラムを受講することがあるが、同じ受講生からは積極的に話しかけられるし、質問攻めにあうことも多い。

 今回わざわざ私のスタジオまで足を運んで話を聞きに来てくれたレックス氏は私より10歳以上年上だ。多くの経験を積んできているし、スイングやティーチングに対する知識も豊富に持っている。そんな彼でも興味のあることがあればたとえ年下であろうと積極的に学びに行く姿勢は、改めて見習うべきだと思った。こうした文化を背景にしたコーチたちが多くいるからこそ、PGAツアーは常に高いレベルにあるということを再確認した出来事だった。

 ◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。シングルプレーヤー養成に特化したゴルフスイングコンサルタント。メジャータイトル21勝に貢献した世界NO・1コーチ、デビッド・レッドベター氏を日本へ2度招請し、レッスンメソッドを直接学ぶ。欧米のゴルフ先進国にて米PGAツアー選手を指導する80人以上のゴルフインストラクターから心技体における最新理論を直接学び研究活動を行っている。書籍「ロジカル・パッティング」(実業之日本社)では欧米パッティングコーチの最新メソッドを紹介している。オフィシャルブログ http://hiroichiro.com/blog/

(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)

最終更新:11/14(火) 13:17
日刊スポーツ