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居酒屋が定置網漁業に参入 自前の魚供給

11/16(木) 18:30配信

みなと新聞

三重・尾鷲で漁業権取得

 東京都内で居酒屋などを営むゲイト(五月女圭一社長)が三重県外湾漁協の小型定置網の漁業権を取得し、早ければ12月にも操業を始める。五月女社長が準組合員として尾鷲市の空き漁場で権利を得た。「当社は飲食店、加工、物流など全てを行いトータルで事業をつくれるのが強み。食材を安定的に得るだけでなく、漁業者の減少防止にも貢献したい」(五月女社長)という。

 同社は近年の食材費高騰を問題視。「簡単に年間10~15%くらい値上がる。値上がり分を投資し自社で賄う方が効率的」(同)との考えから自社での農産品の生産や物流に取り組んできた。昨年、山梨県出身・三重県在住の定置網漁業者が五月女社長の知人に「山梨に新鮮な魚を届けたい、知恵を貸してほしい」と打診。五月女社長も漁村を視察し「薄利多売による漁業の疲弊や漁業者の減少、漁村の衰退を肌で感じた。何とかしたい」と漁業への参入を決めた。

加工・物流も自前で

 漁業の衰退を止めるため収益性アップを狙う。同社の強みは加工・物流・居酒屋とトータルで事業を設計できること。昨年、参入を決めた後は現地に水産加工場を購入し刺身やフライなどを生産している。「将来的には自社獲りの魚も加工し冷凍で自社の居酒屋に送りたい。冷凍なら安定した品質と出荷量を保ちやすいからだ。冷凍に向かない魚種は現地の市場に卸す」。加工による付加価値化に加え、「自社の漁業、というストーリー性も含めブランド化したい」と語る。

 同社は三重県内の市場で買参権を持ち、都内への自社物流もある。「これらで中間流通を削り、最近は自社居酒屋で提供する水産物を100%三重産にシフト。以前は居酒屋事業の水産物の仕入れに年間1000万円ほどかかったが、今はそれ以下の水準となった」(同)

 操業開始後、漁業のノウハウを十分に得られるまでは、自社獲りの魚を全て現地の市場に回す予定。「生産が安定し居酒屋に直送できるまで時間はかかるかもしれないが、その間に加工技術を高めたい。居酒屋は肉も扱える。居酒屋への自社獲りの魚の直送を始めた後も、操業の成否を見ながら市場の魚や肉の仕入れ量を変え、柔軟に対応したい」と五月女社長。

 同社は三重への密着を掲げる。2020年までに同社の居酒屋で扱う全食材のうち8割を三重県産にするのが目標。将来的な本社移転もにらむ。漁業への参入にあたり現地の漁協から了承が必要だったが、「地域に根差す当社の姿勢を『覚悟が違う』と評価していただいた」(同社広報)。

 漁場は漁業者不足で3年間操業できていなかった場所。当初の乗組員は4人で網や船は県内他地域の中古品を使う。五月女社長は「生産規模は年間3000万~7000万円の漁場と聞くので、まずは3000万円を想定している。展開次第では、漁網の増設も考えたい」と意気込む。

最終更新:11/16(木) 19:21
みなと新聞