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しょい込んだ介護 真面目さゆえ最悪の選択 佐賀・鹿島介護疲れ殺人

11/16(木) 10:48配信

佐賀新聞

真面目さゆえ最悪の選択

 「申し訳ございません」。長年介護してきた妻=当時(71)=を手に掛けたとして殺人罪に問われた江口末秋被告(71)は15日、最後の意見陳述で泣き崩れた。「妻はまだ元気で、これからも楽しいことがたくさんあった。将来を一方的に絶ってしまった」。後悔を口にし、目頭を押さえた。

 江口被告は20代の頃、妻ヤス子さんとお見合い結婚をした。「私の一目ぼれだった」。大阪でうどん屋を営み「経営はうまくいき、ヤス子も手伝ってくれた。一番充実した時間だった」。転機は、江口被告の出身地の鹿島市に移った2年後の1993年。ヤス子さんが自転車事故で脊椎(せきつい)を損傷し、胸から下が動かなくなった。

 在宅で介護を続けたが、体力の衰えから8年前、大阪の介護施設に移った。ヤス子さんは施設になじめず4カ所を転々とした。鹿島に戻れば穏やかな心と日常を取り戻すのでは-。期待を胸に昨年8月末、鹿島市に転居したが、ヤス子さんがショートステイの施設になじめない。被告自身も水路に落ちてけがをして、心身の負担が重なった。

 「もっといい加減な人であれば、こういう状況にはならなかった」。江口被告の精神鑑定をした医師は、こう証言した。他人の気持ちを理解し、面倒見が良く、きちょうめんな性格…。被告は「自分でなければ妻は介護できない。周囲に迷惑を掛けられない」と追い詰められ、転居から10日ほどで最悪の選択に至った。

 近くに住み、介護も手伝った江口被告のめいは40回近く被告と面会し、証言台にも立った。「末秋さんは真面目で本当にいい人。絶対に立ち直ってくれる」。弁護側は最終弁論で裁判員に語り掛けた。「事件は介護負担の偏在によるもの。皆さんにも関係し、直面する問題だ」

最終更新:11/16(木) 18:42
佐賀新聞