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悲しみは「乗り越える」もの?68日間生きた娘を亡くした夫婦の思い 識者「聞こえいいがリスキーな言葉」

2017/11/21(火) 7:01配信

withnews

 「悲しみを乗り越える」と聞いて、皆さんはどう思いますか。悲しみへの考えかたは様々ですが、「違和感」を覚える人もいます。生後68日で娘を亡くした、ある夫婦の経験から考えます。(朝日新聞文化くらし報道部記者・滝沢卓)

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68日間生きた長女

 埼玉県内に住む40代の夫婦は約6年前、妊娠8カ月のころに健診を受けたとき、胎児の心臓に異常が見つかりました。詳しい検査の結果、先天性の染色体異常の一つである「18トリソミー」であることがわかりました。生まれてくる可能性が低いこと、生まれたとしてもたくさんの障害があったり、短命になったりする可能性が高いことなど、初めて聞く情報を医師からシャワーのように告げられました。

 夫婦は本やインターネットで、娘が生きる可能性を必死で探しました。同じ障害を持ちながら、1歳を迎えている子の存在などを知り、わずかな希望も持てました。

 一方で一週間ごとに病院へ通いながら、多くの選択をしなければなりませんでした。医師からは「人工呼吸器をつけなければ子どもは死んでしまうが、一度つけたら外すことはできない」と言われました。夫婦は子どもが苦しまない方法を選ぼうと話し合い、最初の産声を聞いてから、人工呼吸器をつけると決断しました。混乱のなかで不安や悲しみでいっぱいになり、「涙が足りないくらいに泣いてばかりいました」。

 長女は帝王切開で産まれました。直後は仮死状態でした。心肺蘇生によって、息を吹き返し、立ち会っていた夫だけが産声を聞きました。長女は人工呼吸器をつけ、すぐにNICUに入院しました。医師からは「72時間が峠」と言われましたが、何とか乗り越えました。


 夫婦は日々病院へ通いました。人工呼吸器をつけていたため、自由に抱っこはできませんでしたが、医師や看護師と協力して何度か長女を抱くことができました。「親としてできることは限られていました」が、おむつ替えや沐浴もできました。

 しかし、長女は日が経つにつれて、少しずつ弱っていきました。

 生まれてから68日、最後は夫婦の腕の中で眠るように息を引き取りました。

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最終更新:2017/11/21(火) 7:01
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