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日本ハムはどうする? 中田と清宮が同じポジション問題

2017/11/24(金) 14:21配信

ITmedia ビジネスオンライン

 諸々の「事情」があったようだ。プロ野球・北海道日本ハムファイターズの中田翔内野手が国内FA権を取得していたものの権利行使せず、チームに残留することを決めた。

中田がいる限り、清宮が一塁の定位置を奪うことは難しい!?

 昨季は打点王に輝くなどチーム日本一に大きく貢献。しかし今季は4月に右足内転筋を痛めた影響もあって打率2割1分6厘、16本塁打、67打点に沈み、主砲としての役割を果たせなかった。それでも阪神タイガースやオリックス・バファローズが中田の獲得に一時関心を示し、中田本人も「外の評価を聞いてみたい」と語っていたことから他球団への移籍に心を傾けているとみられていた。

 確かにネット上では中田の去就について「こんな成績ではどこも獲得する球団などない」「ロクに仕事もしていないまま世話になった球団から出て行けるはずがない」などといった「残留」を予想する声が大半だった。そうは言っても実際のところは本人も、そして球団も「退団」の方向へ間違いなく動いていた。

 この動きに大きく絡んでいたのは早実のスーパー高校生、清宮幸太郎内野手だ。日本ハムは7球団競合の末にドラフト1位での入団交渉権を獲得することに成功。高校通算111本塁打を記録した未来のスター候補を迎え入れ、24日には札幌市内で入団会見も行われた。背番号「21」のユニホームを身にまとった清宮に周囲の期待も高まる一方だ。ただし、このスーパー高校生の入団によって日本ハムは1つの方向性を今まで以上にハッキリと決めなければいけなくなっていた。それが中田の処遇だ。

 清宮と中田のポジションは同じ一塁。中田はケガの影響で調子を落とした今季の低迷から復活を果たそうと来季以降、それこそ死に物狂いで挽回しようとするはず。まだ28歳の主砲が順当に復調すれば、今後数年間は一塁を不動の定位置としてキープし続ける流れは十分に考えられる。

 そうなると清宮の育成を考える上で日本ハムとしては、どうしても「都合がいい」とは言いづらい。入団当初は清宮をファームでじっくり育成していく形が基本方針であるにせよ、一軍での実戦経験をまったく踏ませないわけにもいかないだろう。下馬評通りにファームで結果を出し始めれば当然、一軍での起用が前倒しになるはずだ。ましてや来年の春季キャンプから一軍帯同となり、オープン戦で打ちまくれば「飛び級」での開幕一軍も見えてくる。そうなると、中田の定位置である「一塁」とバッティングしてしまう難題が浮上してくるわけだ。

●日本ハム、「出て行きたければ、どうぞ」というスタンス

 もちろん一時的な回避策はある。DHでの起用だ。「二刀流」で起用していた大谷翔平投手が今オフ、メジャー移籍することで大谷が登板しない日に打者として出場していたDHの出場枠が来季から空く。だから中田か、もしくは清宮をDHで起用すれば両者の一軍スタメン併用は事実上可能になる。だが、これを持続させることは長期的なビジョンで見ればプラスにはならない。

 いくら清宮がオープン戦で脅威の活躍を果たそうが、実績十分で功労者の中田を差し置いて来季開幕一塁の座を奪うことは考えにくい。もし清宮の開幕一軍先発に首脳陣からゴーサインが出されるとすれば、DH起用で収まりがつくことになるだろう。来季開幕前の調整段階で中田が余ほどの絶不調に陥るかアクシデントにでもさいなまれない限り、清宮の開幕一塁は厳しいと考えるのが妥当だ。

 中田を休養させる意味でDH起用し、その試合では代わって清宮を一塁として先発するケースはあるかもしれない。ただし、いずれにしても中田がいる限り、清宮が一塁の定位置を奪うことには“足かせ”になる。

 実際、日本ハムの内部でも一部から次のような声が出ていた。 

 「DHでの起用が続けば、どうしても守備がおろそかになってしまう。ファームのデーゲームで守備をこなし、その後一軍のナイターに出場する“親子ゲーム”をこなさせながら清宮を攻守で育成していくこともできなくはないが、限界はある。そうなると中田が長くこのチームに居続けると、清宮育成を考える上では障害になってしまう。それは否定できない」

 そういう背景もあって今オフの日本ハムは中田を無理に引き留めようとはせず「出て行きたければ、どうぞ」というスタンスになっていた。だからこそ契約更改の席上で日本ハム側は中田に推定ながら大幅ダウンとなる8000万円減の年俸2億円を提示したのだ。是が非でも残留させたかったのであれば、いくら今季成績がひどかろうとももう少し温情を見せていたはずである。

●清宮が一人前になるまで

 それでも中田は屈辱の大幅ダウン額を受け入れてサイン。一時移籍へ傾きかけていた気持ちを封印して悩みに悩んだ挙句、チーム残留の道を選んだ。というよりも、自分に関心を示していた他球団がことごとく撤退して「八方ふさがりになってしまったから」という理由のほうが正解かもしれない。球界関係者は次のように言う。

 「中田の本命とささやかれていた阪神は『現時点では割に合わない』として撤退したようだ。中田の今季年俸は推定で2億8000万円。チームで上位3位以内に入るAランク扱いだから、FAで獲得する球団はルール上で年俸の80%か人的保障(28人のプロテクト枠から外れた選手を1人獲得できる)に加えて年俸の50%を日本ハムに支払わなければいけない。今季体たらくだった中田を多大な出費をしてまで獲得するに値しないと踏んだ。阪神だけでなくオリックスも、そういう結論に至ったと聞く」

 しかしながら、どうも阪神は中田獲得を完全にあきらめたわけではなさそうだ。金本知憲監督は中田と同郷で広島出身。昔から球団の垣根を越えて「深い関係」にある。「中田が誰にも文句を言われない成績を来季残せば、金本監督の進言によって再び阪神が獲得に向けて動き出す」と見る向きは少なくない。 

 日本ハムとしても中田には「清宮が一人前になるまで」の残留であれば、考え方によってはむしろ好都合であろう。

 中田は風貌こそコワモテで破天荒なイメージがどうしても強いが、こと野球に取り組む姿勢はストイックといわれている。何しろ侍ジャパンでもクリーンアップを張って、主砲の筒香(嘉智外野手=横浜DeNAベイスターズ)からも尊敬されていた。

●清宮育成を見据えた日本ハムのビジョン

 前出の球界関係者はこのように語る。

 「日本ハムとしても中田に対し、チーム残留によって『清宮の教育係』という役割も担わせるつもり。来季は中田が正一塁手として清宮の手本となり、先輩野手として育成にも尽力する。清宮を弟分として一軍で共闘しながら育成した上で自身も納得のいく結果を残せば、それこそ中田も大手を振ってFA宣言できるというものだ。

 いや、それこそドラスティックな考えを持つ日本ハムならば、来季中に再び復活を果たして中田の商品価値が高騰したら、そのタイミングで希望球団と商談をまとめて電撃トレードを成立させることもあるかもしれない」

 例外はあるが、日本ハムでは「年俸3億円を超える選手は“卒業”させる」という不文律があるともっぱら。来季の年俸は大幅ダウンとはいえ、この先、再び中田の成績が上昇気流に乗って3億円のラインを超える可能性は十分にあり得る。そういう観点から見ても中田の他球団移籍は来季もくすぶり続ける。

 清宮育成を見据えた日本ハムのビジョンは極めてドライでありながらも理にかなっていると言えそうだ。

(臼北信行)