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ビットコイン狂騒曲、高齢者も投資参入

11/30(木) 17:14配信

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

 ラスベガス在住のリタ・スコットさん(70)は11月半ば、盛り上がりを見せる仮想通貨ビットコインに投資するよう孫に説得された。「『ビッグコイン』と言っているのかと思った」と振り返るスコットさんは、「それが何かも分からなかった、ちょっとしたコインのかけら? なぜコインのかけらに投資するんだろう?」と思ったという。

 投資額は数百ドル(数万円)だったが瞬く間に魅了され、地元のカジノでポーカーをしながら1日何度もコインの価格を確認するようになった。27日にビットコインが1万ドルの大台に近づいた際、孫のアンソニー・サンタさんは、自身とスコットさんが保有していたビットコインを売却。わずか数週間で45%ほどのもうけを手にしたという。

 売却したのは先見の明だった。ビットコインはその数時間後には1万1000ドルを突破して9年前の誕生以来で最高値に到達したが、その後、29日には複数の取引所が取引高を処理できず、2000ドル以上も下げた。その後はビットコインは再び反発し、1万0214ドルで取引を終えている。

 元タクシー運転手のスコットさんは所有する投資信託に触れつつ「(米投資信託大手の)Tロウ・プライスではこんなに楽しませてもらったことはない、本当だ」と話す。

 無国籍の仮想通貨ビットコインは金への投資と似た性質もあり、投資家たちの想像力をかき立てている。その価値は10月半ばから倍、年初来では10倍以上に高騰。これまではテクノロジーに詳しい人の間で話題になる程度だったが、今は一般的な投資家にとっても関心の高いテーマになった。

 一方でそのすさまじい成長の勢いから、悲惨な終わりを迎えることになると警告する人もいる。29日の価格変動を見ても分かるように、ビットコインはボラティリティー(変動率)が極めて高い。50%以上価格を下げたことも、2011年以降だけで8回ある。

1万ドル突破がきっかけに

 そこでさらに懸念の元となっているのが、ビットコイン高騰に引き寄せられて多くの個人投資家が参入してきていることだ。

 シカゴの高頻度取引(HFT)トレーダーの仮想通貨部門カンバーランドで店頭取引(OTC)のトップを務めるボビー・チョウ氏は、「彼ら個人投資家は1万ドルを突破したことをニュースで知り、アプリを起動してビットコインの購入に踏み切っている」と話す。

 ニューヨーク在住の大学院生、ポール・ジョゼフ・スペルスさん(22)も、ビットコインの世界に足を踏み入れたばかりだ。先週の感謝祭で友人らとディナーをした際はビットコインの話題で持ちきりだったという。「自宅にパソコンがない女性ですら、ビットコインが間もなく1万ドルを突破することについて話し続けていた」とスペルスさんは振り返る。

 スペルスさんは週末にいろいろ考えた後、徹夜でビットコイン上昇に関連した記事を読み込んだ。グーグルを使って何度もビットコインの価格を検索した。そして29日の午前6時、仮想通貨の管理・決済サービスを提供するコインベースを通し、50ドル分のビットコインを購入した。

 数時間後、ビットコインの価格は11%上昇。さらにその数時間後、価格は9%下落した。「クリックした時は、よくあるような感覚だった。情報にはもう十分目を通したと感じ、購入するだけの自信をやっと得られた」とスペルスさんは話す。「友人たちは僕がクレイジーだと考えているよ」

 一方アトランタ在住のトニー・ホースリーさん(78)の友人らは、ビットコインに投資していることについて理解してくれている。ホースリーさんはポートフォリオに「スパイス」を加えるため、夏からビットコインに投資。その後、ポートフォリオの5%をビットコインやビットコインの上場投資信託(ETF)で構成するようにした。今はビットコインの価格変動や購入に向けた流れについて、30人ほどの友人に定期的な便りを書いている。

 「参加するのは遅れた」ものの、「とても楽しんでいる」とホースリーさんは話す。友人の中には疑念を持つ人もいるが、6人ほどはビットコイン投資を開始。ホースリーさん自身も投資額を増やす考えで、24日と29日朝にもさらにビットコインを購入した。

利益確定売りをする投資家も

 ビットコインの人気は世界規模で広がっている。トム・リーニーさんがオーナーを務めるロンドンのレストラン、バーガーベアでは、顧客からの要望を受け5年ほど前からビットコインで支払いを受け付けるようになった。今では支払いにビットコインを利用する人と同じくらい、ビットコインへの投資について質問してくる人がいる。

 7ビットコインを所有するリーニーさんは「かなりもうかる」とし、いずれ価格が下がることは避けられないとしつつも、「今は上昇を続けているので手放したくない」と述べる。

 しかし保守的な投資家たちはボラティリティを根拠にビットコインへの投資をためらっており、その中には金融業界関係者も含まれる。香港で29日に開催されたアジア証券業金融市場協会(ASIFMA)の年次総会では、約150人のプロの投資家のうち仮想通貨に投資したことがあるとして手を上げたのはわずか2名だった。

 パネリストとして参加した大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)チャイナのヘンリ・アルスラニアン氏は、「金融関連イベントで(このような光景を見る)のは信じられないが、実際はよくあることだ」と述べた。

 香港大学でフィンテック(ITを使った新たな金融サービス)を教えるアルスラニアン氏は、授業で学生に同じ質問をすると、約30%は仮想通貨を所有していると答えるという。ここ数週間は仮想通貨の売買について質問を多く受けたため、「決まった答え」を準備したと話す。

 ビットコインに駆け込む個人投資家が増える一方で、中にはビットコインを売却する人もいる。これがボラティリティをさらに高めている可能性もある。

 ロンドン在住の海軍パイロット訓練生、ネイサン・ホイルさん(27)は、9月に「興味本位」で1000ポンド(約15万円)分のビットコインを購入。価格上昇が続く中、購入時に3500ドルだった1ビットコインの価格が1万ドルに近づいたら売却しようと決めていた。

 29日に9800ドルに達した際にはその時がきたと判断し、1780ポンドの利益を確定させた。「今はまた暴落するタイミングを待って、そこでまた買う予定だ」とホイルさんは話す。

By Peter Rudegeair and Akane Otani