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ジンバブエ「殺人暴君」が愛された理由 93歳まで大統領、国内は「それなり」に安定、発言はムチャクチャ

2017/12/6(水) 7:00配信

withnews

 アフリカのジンバブエで93歳と世界最高齢だった大統領が辞任し、話題になっています。この人、ロバート・ムガベ氏はイギリスから独立した1980年から、37年も国を支配。失政、暴言、汚職、拷問、地位を利用した蓄財、選挙不正、病気の流行、食糧不足とあらゆる問題や疑惑が持ち上がり、「殺人暴君」とも呼ばれました。が、慕われる一面も持っていました。(朝日新聞国際報道部・神田大介)

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世界の独裁者ランキング2位 100兆ジンバブエドルは0.3円

 アメリカの外交専門誌「フォーリン・ポリシー」は2010年、世界の独裁者23人をひどい順にランク付け。ムガベ氏を北朝鮮の金正日総書記(当時)に次ぐ2位に選び、「殺人暴君」と表現しました。

 汚職が相次ぎ、反乱を恐れてカネをばらまいたために財政がはたん。失業者があふれ、コレラやエイズがまんえん、農地は荒れ果て、通貨は紙切れに。ムガベ氏を批判した野党の政治家や支持者は、鉄棒で頭を殴られるといった暴行を受け、死者も出ました。数百万人が国外へ逃げ出したとされています。

 特に有名なのがインフレのひどさ。2008年には100兆ジンバブエドル紙幣が登場しました。最も値が下がったとき、このお札には日本円で0.3円ほどの価値しかなかったそうです。

 同性愛者を「ブタやイヌにも劣る」とののしり、「ジンバブエは私のものだ」と国を個人の所有物のように言い放ち、アメリカの黒人政治家(ライス元国務長官)を「白人のご主人様の言葉を繰り返す奴隷」呼ばわり。発言もめちゃくちゃでした。

「引退するなら100年後」と高笑い

 私は2013年、横浜を訪れたムガベ氏のインタビューをしたことがあります。当時、既に89歳。第一印象は「小さなおじいさん」でした。

 スーツにネクタイ姿でしたが、背筋を丸めてソファの中でちぢこまり、視線を床に落とし、こちらの問いかけにボソボソと小さな声で返答。何を言っているのか聞き取れません。威勢良くスピーチする独裁者のイメージがあったので、とても意外でした。

 場所はホテルの一室。取り囲む十数人の側近たちは息を殺していました。

 さしもの暴君も寄る年波には勝てないのかと思いきや、話しているうちに調子が上がり、だんだんと声が大きくなっていきました。特にヨーロッパ諸国の批判を始めると、目がらんらんと輝き出し、

 「モンスター・ムガベ、いつ死ぬんだとヨーロッパの人々は言うが、私は生きている。ここにいるのはゴーストじゃないぞ」

 そう言うと、ガハハハハと笑い出したのをよく覚えています。「引退するとしたら100年後かな」とも言っていました。インタビューを終える頃には背筋もしゃきっとし、体も一回り大きくなったかのように見えました。

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最終更新:2017/12/6(水) 7:00
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