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NetAppはストレージ専業から“データ管理ソリューション”のベンダーへ

12/5(火) 6:00配信

Impress Watch

 ネットアップ株式会社は11月30日、「NetApp Innovation 2018」を開催した。年次イベントという位置づけではあるが、今年はすでに、「NetApp Innovation 2017 Tokyo」が2月2日に開催されている。年内に2回という速いペースでの開催について、日本法人の代表取締役社長 岩上純一氏は、基調講演冒頭で「すでに時代は1年ごとに製品を発表していく時代ではない。われわれは常に先へ先へと進化を続けている」とコメントした。

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 「今回のイベントのテーマは大きく2つある」とする岩上氏。そのうちの1つは今年6月に発表し、11月には国内提供を開始したハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品である「NetApp HCI」だ。そしてもう1つは、NetAppが「ハイパースケーラー」と呼ぶクラウドベンダーとの協業である。これらのテーマを踏まえ、米国本社から来日したエグゼクティブ2名が、今後のNetAppの事業戦略を語った。

■企業が直面するITの新たな必須課題に対応する

 米NetApp エグゼクティブバイスプレジデントのジョエル・ライヒ氏は、「世界はデータ中心として急速に変化している。かつてデータはビジネスを加速させるイネーブラーだったが、現在はデータがビジネスそのものとなっている。現在ビジネスの主体はデータ中心のモデルへと変化しており、今後はデータ指向の企業が発展していく」と述べた。

 しかしながら、データを管理する難しさについてもライヒ氏は指摘する。ITインフラはオンプレミスだけにとどまらず、クラウドへとシフトしている。そのため、データは複数のオンプレミスやクラウドのロケーションに分散しており、ビジネスの現場では複数のデータソースから目的のデータを取得する必要がある。

 また、多様化するデータは常に動的に変化している。「分散化したデータはサイロ化のリスクを抱えており、デジタルトランスフォーメーションを阻害する要因となる。また、さらにSaaSなどの利用が進むことで、データサイロ化が発生してしまうこともある」(ライヒ氏)。

 このようなデータ管理の課題を解決するため、NetAppではデータ管理ビジョン「データファブリック」を推進している。データファブリックでは、クラウドやオンプレミスを問わずIT全体でデータ管理を統合して簡素化し、データの可視化、アクセスと管理、保護とセキュリティを実現する。また岩上氏も「すでにデータファブリックはビジョンではなく、実際に実現できるソリューションだ」とアピールしている。

 さらにライヒ氏は、多くの企業で「ハイブリッドクラウドの活用」「次世代データセンターの構築」「データ管理とストレージのモダナイズ」という新たなITの課題に直面していると指摘している。

 ハイブリッドクラウドの活用については、まさにデータファブリックが実現する統合されたデータ管理がその答えと言えるだろう。

 また、新たなクラウドへの対応として、パブリッククラウドからも利用可能なNFSのサービスの提供も開始する。すでに発表されているサービスとしては、Microsoft Azureから利用可能な「Azure Enterprise NFS」が挙げられる。2018年前半にプレビューが開始される予定となっているAzure Enterprise NFSについて、米NetApp クラウドビジネスユニット シニアバイスプレジデントのアンソニー・ライ氏は、「NetAppがONTAPの技術を提供し、Microsoftのサービスとして販売される。Azureのコンソールから直接ONTAPの機能を利用することができる」と説明した。

 また、Amazon Web Services(AWS)においても「NFS Hybrid Service for AWS」の提供を予定していることが発表されており、「VMware Cloud on AWS」にも対応するという。

 そのほか、NetAppがハイパースケーラーとして名前を挙げたクラウドベンダーには、Google Cloud Platform(GCP)、IBM Cloud、Alibaba Cloudがあり、これらのベンダーとも協業していくという。

 ライ氏は「2018年中にクラウドオーケストレーションサービス『NetApp Cloud Orchestrator』の提供を開始する」と述べ、これらのハイパースケーラーにおけるマルチクラウド環境において、アプリケーションをVM、コンテナ、マイクロサービスなどの形態で自由に展開できるようになると説明した。

■次世代データセンターの実現とストレージのモダナイズ

 次世代データセンターのソリューションとしては、オブジェクトストレージの「StorageGRID」、オールフラッシュアレイの「SolidFire AFA」、コンバージドインフラストラクチャの「FlexPod SF」、そしてNetAppの新たな施策となるHCI製品「NetApp HCI」が紹介された。HCIとして後発であることはNetApp自身も承知しており、他社との差別化のポイントはやはり「ストレージ」だ。NetApp HCIはオールフラッシュストレージ「SolidFire」がベースとなっている。

 NetApp HCIのコンピューティングノードのハイパーバイザーにはVMware ESXi、ストレージノードはSolidFire Element OSを採用しているため、可用性・信頼性を確保することはもちろん、オープンなアーキテクチャ採用によってベンダーロックインは発生しないという。

 さらにライヒ氏は「次世代のITにはオープン性やアジリティが求められる。HCIによってベンダーロックインが起きれば、新たなサイロが発生することになる。NetApp HCIはパフォーマンスを保証してアプリケーションの導入に伴う不安を解消し、柔軟にスケールし、IT運用を変革するためにインフラを自動化する」と述べ、NetApp HCIが拡張性に優れている点や、データファブリックとの親和性をアピールした。

 ストレージのモダナイズには、フラッシュストレージや新たなデータ管理で対応するという。フラッッシュストレージ製品は「EFシリーズ」、「All Flash FAS」、SolidFire AFA、FlexPod、FlexPod SF、NetApp HCIを紹介した。NetAppのフラッシュストレージは、低レイテンシアクセス、高速転送、ワールドクラスのデータ管理に、データファブリックを掛け合わせることで、エンタープライズクラスのソリューションを実現するという。

 これまで「AutoSupport」という名称で提供されてきたデータの予測分析機能は、強力な機械学習機能と人工知能を備えた新たなサービス「NetApp Active IQ」としてリブランディングされた。

 これまで同様にストレージ使用容量の監視・予測、ソフトウェアアップグレードに関する自動アラート、システムのボトルネックに関するリアルタイムの分析などの機能を提供することはもちろん、リアルタイムで新たなビジネスチャンスを創出する洞察を提供することができる。

 また、チャットボットによるサポート機能「Elio」も紹介された。Active IQとElioは、Watsonコグニティブ・コンピューティングを活用し、日々蓄積される膨大なデータを学習することでサービス品質を向上するという。

 クラウドサービスの拡充やHCIの提供など、すでにNetAppは単なるストレージベンダーとは言えない存在となっている。基調講演後に行われたメディア向けラウンドテーブルにおいてライヒ氏は、「このままいくとストレージ専任のベンダーは絶滅危惧(きぐ)種になってしまう」と危機感を明確に表明しており、確実にオンプレミス環境が減少していくことが予想される中、今後も同社は新たなビジネスを展開していくことになるだろう。

クラウド Watch,北原 静香

最終更新:12/5(火) 6:00
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