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量子トンネルFETを酸化物半導体とSi系材料で実現

12/5(火) 11:14配信

EE Times Japan

 東京大学大学院工学研究科教授の高木信一氏らは2017年12月4日、極めて小さな電圧制御で動作可能な量子トンネル電界効果トランジスタを開発したと発表した。開発したトランジスタは従来の半分以下の低い電圧で動作する他、極めて小さな待機時消費電力を実現するという。「さまざまなモバイル端末の省電力化や環境発電と融合したバッテリー不要の集積回路の実現など、新たな応用展開が期待できる」(東大など)

作製したトンネルFETの製造工程の概略図 (クリックで拡大) 出典:東京大学/科学技術振興機構

 高木氏らが開発したトランジスタは、半導体中のエネルギー障壁をトンネリングする電流を、別の電極(ゲート電極)の電圧によって制御する、電流のスイッチング動作を行う量子トンネル電界効果トランジスタ(トンネルFET)。低消費電力化につながる動作電圧の低減を、従来のMOSFETよりも図りやすいトランジスタとして期待されている。

 ただ、これまで、トンネルFETは、オン状態とオフ状態とで十分な電流比を取ることが難しいといった課題を抱えた。また材料としても、これまではInGaAs(インジウム・ガリウム・ヒ素)やGaSb(アンチモン化ガリウム)などのIII-V化合物半導体や、分子吸着を利用したMoS2(二硫化モリブデン)やWSe(セレン化タングステン)などが用いられ、既存の半導体技術への組み込みや大規模集積化が難しく実用化の面で大きな課題があった。

 開発したトンネルFETは、酸化物半導体材料とIV族半導体材料を積層した構造を採用した。酸化物半導体はディスプレイなどの薄膜トランジスタ(TFT)材料として使用され、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)などのIV族半導体材料は、大規模集積回路の基盤材料であり、それぞれ実用化実績のある材料。東大などによると「(酸化物半導体材料とIV族半導体材料という)これらの異なる材料系を組み合わせた研究はこれまでなく、世界で初めての試み」としている。

■接合面全域にわたり量子トンネル効果

 「ゲート電極-極薄ゲート絶縁膜-酸化物半導体-IV族半導体」という積層構造により、IV族半導体と酸化物半導体の接合面全域にわたり量子トンネル効果が生じるため、オン状態での電流値を効果的に増大させることに成功。さらに適切な材料の組み合わせにより、実効エネルギー障壁高さを小さくすることで、量子トンネル確率を指数関数的に増大させることも可能になったという。量子トンネル確率を左右する量子トンネル距離も、n型チャンネルを構成する酸化物半導体膜厚で決定できるというメリットも持つ。また、この構造では、酸化物半導体のバンドギャップ(禁制帯幅)が大きくなり、オフ状態の漏れ電流を小さくすることもできる。

 このトンネルFETの特性をTCAD(Technology Computer Aided Design)シミュレーションで予測したところ、電流値の変化の急峻性を示すS係数(=電流を1桁変化させるために必要なゲート電圧の変化量)において、最小値1mV/桁、0.3Vの動作領域全体での平均は40mv/桁を実現しうる、高いポテンシャルを持つことが明らかになったとする。

■実際にSiおよび、Ge上にZnOを堆積させ、トンネルFETを作製

 さらに、高木氏らは、高濃度に不純物を添加したSiもしくはGe上に、レーザーアブレーションにより酸化物半導体であるZnO(酸化亜鉛)を堆積することで、トンネルFETを実際に作製した。

【作製したトンネルFETの製造工程】(a)高濃度の不純物を添加したp型Siもしくはp型Ge基板上に絶縁膜を堆積し、トンネル接合を形成するためのウィンドウを形成。(b)酸化物半導体(今回は酸化亜鉛)を全面に堆積し、所望の構造にエッチング。(c)ゲート絶縁膜としてAl2O3を堆積。(d)TiNゲート電極を形成。(e)p型Siもしくはp型Ge上にNiソースコンタクトを、ZnO上にAlドレインコンタクトを形成し、最後に各電極上にAlの引き出し電極を形成。

 その結果、「既存の半導体作製プロセスにZnO堆積のみを追加することで、所望の構造を実現可能であることを実証した。オン状態とオフ状態の電流比は8桁を上回り、これまでのトンネルFETと比べて約4倍となった」(東大など)とする。

 研究チームでは「今後は、より詳細な材料選択とプロセスの最適化により、さらなるオン電流の増大とS係数の低減を目指す」としている。

 なお、本研究は科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業の1つとして実施されたもの。2017年12月3日に国際会議「IEDM 2017」で発行された「Technical Digest」に本研究成果が掲載された。

最終更新:12/5(火) 11:14
EE Times Japan