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厚労行政のキーマン伊吹文明、野田毅両氏が「インナー」を率い対立…役所と族議員は右往左往

12/5(火) 8:22配信

産経新聞

 厚生労働行政のキーマンとして君臨する自民党の伊吹文明元衆院議長と野田毅前党税制調査会長が意気軒高だ。伊吹氏は「薬剤師問題議員懇談会」会長、野田氏は「社会保障制度改革に関する特命委員会」委員長として、それぞれの「インナー」と呼ばれる幹部会を率いる。しかも2人は激しく対立しており、役所も厚労族議員も2人に気兼ねして右往左往している。(坂井広志)

 「薬剤師から当面の諸問題を聞いていただき、厚労部会などでしかるべき発言をお願いしたい。医者に長期間かからないように努力している薬剤師の技術料は必ずプラスにする」

 11月21日、伊吹氏は国会内で開かれた同懇談会でこう呼びかけた。2年に1度行う診療報酬の改定で医師や薬剤師などの技術料にあたる「本体部分」のプラス改定に向け、厚労部会で声を上げるよう促したのだ。

 ある厚労部会長経験者は「伊吹氏が了承しないと、いまの部会では何も通らない。業界団体も役所も伊吹氏を無視できない」と漏らす。「イブキング」の異名を持つ伊吹氏が率いるインナーは「厚労幹部会」と呼ばれるようになった。

 伊吹インナーで話された中身が表に出ることはめったにない。同月8日に行われた伊吹インナー会合後、記者団に囲まれている橋本岳厚労部会長に、伊吹氏は「ベラベラしゃべる政治家は偉くならないぞ。このことは君の父親(橋本龍太郎元首相)から教わったんだ」とクギを刺し、橋本氏は小さくなっていた。

 一方の野田氏はといえば、「部会の運営に口を挟むことはなく、社会保障制度の話に絡んでくる程度」(厚労族議員)という。だが、伊吹氏に対するライバル意識はかなり鮮明で、関係者によると、野田インナーに伊吹氏を名誉会長に据える案が浮上した際、野田氏が反対したため立ち消えてしまったという。

 党関係者によると、実はかつて伊吹インナーに野田氏が呼ばれたことがあるが、野田氏は話を終えると退席を余儀なくされた。この後、野田氏が伊吹インナーに呼ばれることはない。

 2人の関係は微妙だ。議員歴では野田氏が16期で、伊吹氏は12期。逆に、旧大蔵省入省は伊吹氏が昭和35年、野田氏は39年だ。

 差があるとすれば、安倍晋三首相との距離だ。伊吹氏は、第1次安倍政権で文部科学相を務め、今年8月の内閣改造で首相から文科相を打診された。第2次安倍政権下で衆院議長にも就いた。野田氏は、税調会長のとき、軽減税率導入に慎重な姿勢を示して首相と対立し、事実上更迭された。

 両方のインナーを掛け持ちする議員は尾辻秀久元厚労相、医師の古川俊治参院議員など少なくない。ただ、かつて伊吹インナーに所属したある厚労族議員は、特命委事務局長に就任した途端に伊吹インナーから声がかからなくなった。歴代の厚労部会長全員が伊吹インナーへの参加を認められているわけでもない。

 とはいっても、懇談会は議員有志の組織、特命委は党政調の正式な一機関であるため野田氏のインナーも無視はできない。

 伊吹、野田両氏の間を奔走するのが、政調会長代理の田村憲久元厚労相だ。他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙対策では、伊吹氏と、党たばこ議員連盟会長を務める野田氏との間に立って調整にあたった。

 田村氏は2人の間に入ることで、徐々に厚労行政の新たなキーマンとして存在感を現しつつある。診療報酬改定をめぐっても数字をはじき出す作業に汗をかく。だが、2人の前ではかすんでしまうのが実情だ。

最終更新:12/5(火) 8:22
産経新聞