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(朝鮮日報日本語版) 【コラム】釣り船転覆13人死亡、韓国海洋警察のおかしなブリーフィング

12/5(火) 9:22配信

朝鮮日報日本語版

 今月3日午前11時30分、仁川市霊興島沖合で起こった釣り船転覆事故について説明するブリーフィングが行われた時のことだ。仁川海洋警察署のファン・ジュンヒョン署長が「大統領は海洋警察の指揮官を中心に、捜索と救助に全ての力を動員し、救助に万全を期すよう指示した」と述べた。これに先立ち午前9時ごろ、大統領府は書面でのブリーフィングで「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は午前7時1分、危機管理秘書官から最初の報告を受け、救助作戦に最善を尽くすよう指示した」と明らかにした。文大統領は大統領府国家危機管理センターでスタッフたちと今後の対策について協議した。

 今回の事故は大統領府への報告、そして海洋警察の事故現場への到着はいずれもセウォル号の時よりも早かった。しかし結果的に13人死亡、2人行方不明という大きな犠牲を招いた。事故や災害が発生すれば、迅速な救助作業はもちろん必要だが、それだけで全てが解決できるわけではない。そのため事故原因を明確にし、再発を防ぐことが重要だ。今回の事故を被害の規模や社会的影響だけでセウォル号と比較するのはどうかと思う。ただし事故の根本原因が共通している点は間違いない。職業倫理が失われ、制度面での仕組みも不十分だったことだ。

 今回釣り船と衝突した給油船ミョンジン15号とセウォル号はいずれも費用と時間を節約するため、安全で確実なルートではなく危険な最短ルートを選択した。船長は「釣り船がこちらを避けると思った」と説明しているが、これはセウォル号の船長が乗客に対し、船室にじっと待機するよう指示した事実を連想させる。中大型の船舶が浅い水深の狭いルートを通れないようにする制度面での仕組みは今回なかった。一方のセウォル号沈没は形だけの安全点検と船舶検査が原因だった。

 セウォル号沈没から3年、これまで原因究明のための調査は4回行われ、今後も第2次特別調査委員会が近く発足する。しかしそれでも現状はさほど変わっていないし、政府職員らの対応も改善されていない。海洋警察は最初のブリーフィングの際、事故発生時刻を午前6時9分と説明したが、実際はこれよりも4分早い午前6時5分だった。海洋警察が最初に通報を受けた時刻を勝手に事故発生時刻としたのだ。事故が起こった位置も混乱している。海洋警察は港から1カイリ沖合と説明したが、正確に測定すると0.6カイリだった。海洋警察の関係者は「四捨五入による推定値」と説明した。大統領が関心を持っているので、1分でも早く対応したことを伝えたかったのだろう。

 セウォル号の時よりも改善された点があるとすれば「社会の過剰な対応と反応」だが、実はそれは救助に何のプラスにもならない。今回の事故後、社会の関心は果たして文大統領がいつ報告を受け、いつ対策本部に姿を現すかに集中した。大統領府が直ちに大統領の動きとメッセージを公表したのもそのためだ。いわば「セウォル号トラウマ」がその原因だった。

 大統領にとって国民の生命を守るのは重要な義務だ。しかし一方で「事故のたびに大統領が姿を現すのはいかがなものか」と疑問を呈する声もある。社会の視線が大統領に集中することなく、もう少し落ち着いて原因を究明し、対策を準備するためにも、大統領に対する過度な期待や関心は自制すべきとの声にも耳を傾けるべきだ。