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子連れ熊本市議が映し出した日本の働く母親の厳しい現実と規則社会

2017/12/5(火) 7:50配信

The Telegraph

【記者:Danielle Demetriou】
 熊本市議会で11月22日、生後7か月の長男を抱いて議場に入った緒方夕佳(Yuka Ogata)市議(42)は、そうすることで家庭と仕事の両立を図る女性が直面している困難に対する問題提起をしたかったとしている。

 働く女性にとって家庭と仕事の両立がいかに困難かを証明するという当初の目標は達成できたようだ。市議会は議事進行を妨害したとして文書で厳重注意する判断を下し、緒方氏は謝罪したと報じられている。

 4歳の娘もいる緒方氏は、息子を連れて議場に入った際、すぐに他の男性市議らに注意され、いったん退席して息子を友人に預けた上で再度議場に戻ったため、開会が約40分遅れた。緒方氏が後で語ったところによると、前年に妊娠した当初から、職場に赤ちゃんを連れて来てもよいかと議会側に何度も相談していたが、前向きな回答が得られなかったという。

 緒方氏によれば、息子を同伴することで、とりわけ日本の多くの働く女性たちが直面している困難への関心が高まることを期待していたという。しかし今回のケースによって浮き彫りにされたのはむしろ、日本の多くの働く母親たちが直面している、規則でがんじがらめにされた社会の柔軟性のなさだ。

 共同通信(Kyodo News)によると、この出来事から1週間が経過する中、市議会議員らは、緒方市議が規則違反を行ったことに対して文書で厳重注意し、その行為に対して正式に異議を表明。一方で、子連れで出勤しなければならない必要性が生まれないよう、働く母親たちにとってより優しい環境づくりをするにはどうすればよいかを議論しようとする動きは同市議会からは出てこなかったように見受けられる。

 職場に赤ちゃんを連れて行くという緒方市議の決断に対する反応は、オーストラリアのラリッサ・ウオーターズ(Larissa Waters)元議員の体験とは正反対だ。オーストラリア連邦議会では、規定の改正により、女性議員が議場で授乳することが認められるようになり、同氏は新たな規制を利用した初の議員となった。

 それに対して緒方氏の状況が反映したのは、母親であることと、出産後のキャリアをなんとかして両立させるために奔走している多くの日本人女性が直面する厳しい現実だ。

 また、安倍晋三(Shinzo Abe)首相が少子高齢化社会に対応するためにより多くの女性の社会進出を目指すとしている目玉政策「ウーマノミクス」を実現させるには、首相自身も直視しなければならない日本固有の障壁をも浮き彫りにした。

 全国的な認可保育所不足から、男性優位の職場環境で女性が受ける前時代的な扱いに至るまで、日本の働く母親たちの前に立ちはだかる課題のリストはまだまだ長い。妻の出産後に育児休暇を取る男性は、わずか2%にとどまっている。

 日本は、先進国の中で男女格差が最も大きい国の一つで、世界経済フォーラム(World Economic Forum)が先月発表した男女平等指数を示した報告書によると、144か国中114位だった。【翻訳編集】AFPBB News

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最終更新:2017/12/5(火) 7:50
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