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COP23と日本の課題(上) 日本は「温暖化対策後進国」

12/5(火) 15:00配信

ニュースソクラ

原発の新増設困難で、石炭火力発電を推進

 ドイツのボンで開かれていた第23回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)は先月18日、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」を運用するルールづくりについて18年の合意を目指して交渉を加速することを盛り込んだ宣言を採択して閉会した。

 世界の温室効果ガス(GHG)の2割弱を排出するアメリカがパリ協定離脱を表明した後、初めての締約国会議だった。「米離脱で温暖化対策支援金が減少する」と途上国の一部に悲観論が漂う一方、米抜きでも目標達成を目指そうとする積極的なEU(欧州連合)加盟国との谷間で、温暖化対策に消極的な日本の姿が際立ってしまったのは残念だった。

 パリ協定では温暖化に伴う異常な気候変動を抑制するために、今世紀末までに世界の気温上昇を産業革命以前に比べ2度未満に抑えることが望ましいとしており、この目標達成のためには、今世紀後半までに、大量のCO2(二酸化炭素)を排出する石炭などの使用を事実上ゼロにすることが必要だと指摘している。

 脱石炭火力の動きはこの数年顕著で、英国は25年までに国内12の石炭火力をすべて閉鎖する方針を発表、カナダも30年までに石炭火力を原則すべて閉鎖する方針だ。オランダ、フィンランドも石炭火力の全廃を目指して準備中だ。火力発電王国の中国、さらに石炭依存が大きいインドなどアジアの主要GHG排出国も石炭火力の縮小に取り組み始めた。石炭火力の推進を打ち出したトランプ大統領の米国でさえ、石炭火力の縮小が進んでいる。

 IEA(国際エネルギー機関)の報告書でも、世界の発電に占める石炭のシェアは14年の41%から21年には36%に落ち込むと予想している。

 COP23でも、「脱石炭」が大きな課題として取り上げられた。脱石炭火力に熱心な英国とカナダが各国に呼びかけた「脱石炭火力発電連合」には両国の他にフランス、オランダ、ベルギーなど20カ国と米オレゴン州やカナダ・ケベック州など7地方政府が加わって「石炭火力を止める」と宣言した。1年後には各国・地方政府を含め参加国・地域グループを50に増やしたいと連合事務局は自信たっぷりで語っている。

 世界的に進む脱石炭火力の潮流の中で、日本だけが石炭火力の推進に力を入れている姿はCOP23でも異常に受け止められた。現行のエネルギー基本計画では2030年度の電源構成に占める石炭火力の割合は26%、同様に原発比率は20~22%となっている。だが国民の反原発感情が高まっている現在、原発の新増設は難しい。建設後40年を経過した老朽原発の延命措置がせいぜいだが、それだけでは20~22%はとても賄えない。その穴を埋めるのは発電コストの安い石炭火力しかないというのが経済産業省や電力会社の表に出さない本音である。特に大型の新石炭火力は高効率の省エネ技術が採用されており、CO2の大幅削減に貢献するとしている。このような事情もあり脱石炭の世界潮流に背を向けるようにわが国では空前ともいえる石炭火力ブームが起こっている。

 自然エネルギー財団が電力各社、環境省資料などから調査したところによると、国内の石炭火力の新増設計画は現在42基、発電出力は1860万kwに及ぶという。42基が計画取り稼働すれば、日本がパリ協定で約束した30年にGHGの排出量を26%削減(13年度比)する目標の達成はとうてい不可能だ。それどころか、人口減少を背景に、長期的に見て、わが国の電力需要は減少するため、石炭火力は過剰設備を抱え産業構造上の深刻な問題を引き起こす可能性が強い。

 COP23の席上でも「石炭の時代は終わった」、「クリーンな石炭発電といっても、CO2を大量に排出する構図は変わらない」などの批判が投げかけられ、「日本は温暖化対策に本気で取り組む意志があるのか」などの批判が噴出したという。

 さらに、「日本が高効率の石炭火力技術を途上国に輸出すれば、温暖化防止に役立つ」という日本政府の主張に対しても、途上国側から「石炭火力は健康を害する」などの反論が出された。

 環境NGOでつくる「気候行動ネットワーク」(CAN)は温暖化防止に後ろ向きだとして、米ホワイトハウスに「特別化石賞」、日本には「化石賞」を贈った。日本とアメリカが「温暖化対策後進国」という不名誉なレッテルを張られCop23は閉幕した。何とも後味の悪い会議になった。

 97年に京都で開かれたCOP3(第3回締約国会議)では、主催国日本が頑張って京都議定書が採択され、その後の世界の温暖化防止活動のリーダーシップをとった。あの頃の日本の熱気がCOP23では完全に失われてしまった。

 日本のエネルギー政策は、今袋小路に迷い込んでしまった、と言えるだろう。毎年秋から年末にかけてCOPが開かれるが、現状のエネルギー政策を続ける限り、「温暖化に消極的な日本」への批判は高まるばかりで、国際社会から孤立しかねない。

なぜ、このような窮地に陥ってしまったのだろうか。

■三橋 規宏:緑の最前線(経済・環境ジャーナリスト、千葉商科大学名誉教授)
1940年生まれ。64年慶応義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、科学技術部長、論説副主幹、千葉商科大学政策情報学部教授、中央環境審議会委員、環境を考える経済人の会21(B-LIFE21)事務局長等を歴任。現在千葉商大学名誉教授、環境・経済ジャーナリスト。主著は「新・日本経済入門」(日本経済新聞出版社)、「ゼミナール日本経済入門」(同)、「環境経済入門4版」(日経文庫)、「環境再生と日本経済」(岩波新書)、「日本経済復活、最後のチャンス」(朝日新書)、「サステナビリティ経営」(講談社)など多数。

最終更新:12/5(火) 15:00
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