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作品の世界観を重ねると新たな発見!宇多田ヒカルが手がけた映画主題歌たち

2017/12/5(火) 19:11配信

dmenu映画

これまで数々の映画主題歌を手がけてきた宇多田ヒカル。最小限の言葉とシンプルな表現で壮大な思想や哲学を語る彼女の楽曲は、しばしば「難解」と形容されますが、旋律や詞に込められたメッセージを映画の世界観と照らし合わせながら読み取ると、楽曲に特別の親しみが湧いてきます。そしてまた、楽曲を丁寧に解釈することで、これまで見えてこなかった映画の面白さに気づくこともあります。

宇多田ヒカルの音楽は映画の魅力をどのように引き立て、映画全体にどのような効果をもたらしているのでしょうか。これまでに映画の主題歌となった宇多田の楽曲から紐解いてみましょう。

ヒーローを苦悩させる“世界のジレンマ”について唄う-「誰かの願いが叶うころ」

宇多田ヒカルが初めて映画の主題歌を手がけたのは、2004年のこと。「誰かの願いが叶うころ」が、人気ヒーローアニメの実写化作品『CASSHERN』の主題歌に起用されました。

同楽曲は、“皆が同時には幸せになれない”という世界のジレンマを、ピアノを基調とした穏やかなアレンジに乗せて唄い上げる切ないバラードです。「誰かの願いが叶うころ、あの子が泣いてるよ」という重みのあるフレーズが、“一方が正義を貫き通すことにより、もう一方が犠牲となる”という物語の主張を代弁しているようにも聞こえてきて、胸をえぐられます。

映画の監督をつとめたのは、当時宇多田の夫だった紀里谷和明。本作は彼にとって、商業映画監督デビューを飾る特別な作品となりました。作品そのものに対する世間の評価は賛否両論大きく分かれましたが、巷の音楽ファンには「宇多田の楽曲の素晴らしさを再認識するための映画」と言われるほど、主題歌を称賛する声が聞かれました。

三島由紀夫の転生思想を一言で象徴した神フレーズ-「Be My Last」

巨匠・行定勲監督が三島由紀夫文学の映像化に挑戦した『春の雪』(2005年)。華族の若者たちの壮絶な恋模様を幻想的な映像美と共に映し出した本作は、宇多田の情熱的なバラード「Be My Last」によっておごそかに幕を下ろします。

宮家からの縁談を持ちかけられながら、伯爵家の清顕との大恋愛に燃えて破滅を経験した聡子。そして聡子が出家してようやく彼女への恋心に素直になり、雪の中で彼女を待ち続けながら衰弱して死んだ清顕。それぞれの魂の叫びが、「間違った恋をしたけど、間違いではなかった」「どうか君がBe my last」などの歌詞に見事に集約されています。

本作は、「輪廻転生」を主題とした4部構成の長編小説『豊饒の海』の第1巻にあたる作品ですが、歌の中の「いつか結ばれるより、今夜一時間会いたい」という言葉などには、「たとえ来世で結ばれることがあろうとも、僕たちは“今この現世で”熱烈に愛し合いたい」という主人公たちの強い想いを読むことができると言えるかもしれません。

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最終更新:2017/12/5(火) 19:11
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